大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
IoT、人工知能を活用したソリューションで社会を変革 日立の最先端研究開発への取り組みを見る
2016年7月29日 06:00
顧客協創型研究を加速させる「協創棟」を新設
一方、日立では、顧客協創型研究を加速させるため、中央研究所国分寺サイト内に、新たな研究棟である「協創棟」を新設することを発表した。
中央研究所が武蔵野の森に囲まれている環境にあることを生かし、「協創の森」をコンセプトに、中央研究所全体の顧客協創型の研究開発拠点へと整備。そのなかに新設する協創棟は、技術開発を中心に、顧客ニーズにあわせて迅速なプロトタイプ開発が可能な最先端の研究開発設備や、協創した研究開発を行うための専用スペース、300人規模を収容できる国際会議場を設置するという。
協創棟は地上4階建てで、高さは26.5メートル。建築面積は約7000平方メートル、延床面積は約1万7000平方メートルとなる。2017年9月から着工し、2019年3月に竣工する予定だ。
同じ敷地内にあるもてなしの玄関となる小平記念館、アイデアを素早く形にするラピッドプロトタイピングを実現する迅創棟と連携して、「顧客協創を加速する」としている。
SIを効率化する「システムモダナイジング」
今回の研究開発インフォメーションミーティングでは、システムインテグレーション領域における新たな技術についてもいくつか発表した。
ひとつめは、SIを効率化するシステムモダナイジングである。
ログやデータベースの分析結果と、プログラム分析とを統合した仕様復元技術であり、プログラムやログといったシステムの実資産から仕様を自動で復元し、それを活用することで、新たなシステムの開発工数の削減につなげことができるという。
「システム開発の8割以上は、既存システムからの移行が前提となっている。だが、長年の運用で仕様が変化。絶えず要求が変化しているなかで、システムの実態仕様を正確に判断することは難しかった。また、課題を持った現行システムの仕様書をもとに新規時想定の仕様書を作り上げても、そのなかに、必要な機能がない、不要な機能が残っているといったように、仕様と実態の不整合が生まれやすく、仕様書の手戻りが起きやすい」とこれまでの問題点を指摘。
その上で、「このシステムモダナイジング技術を活用することで、長年運用していたシステムの運用ログを大量に収集して、構造化分析を行う一方、稼働しているプログラムの分析、データベースにおける稼働データの分析やクラスタ分析を行って、システムの実態に合致した形で、実資産をもとにした仕様の自動復元を達成できる。業務の流れ、処理ロジック、データ仕様を復元し、実態に合致した仕様を作ることが可能だ」とした。
実験においては、仕様調査工数において60%減という成果が出ているほか、運用ログなどを通じて、使っていないシステムを削減。これにより、開発工数の削減やコスト削減、あるいは不採算プロジェクトの撲滅にもつなげることができるという。
この技術を担当しているのは、同社のテクノロジーイノベーションセンタとICT事業統括本部。さらに早稲田大学とのオープンイノベーションで開発を進めているという。
2016年度以降、順次実用化していく予定であり、将来的には、独立系システムインテグレータなどにも提供していくことも可能になるとのことだ。