大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

IoT、人工知能を活用したソリューションで社会を変革 日立の最先端研究開発への取り組みを見る

人工知能が人間を超えるソリューションを実現

 2つめは、同社の人工知能である「Hitachi AI Technology/H」を活用したソリューション提案だ。

 Hitachi AI Technology/Hは、2015年10月から提供を開始したもので、既存業務システムに接続することで、インテリジェントな制御を実現する人工知能。さまざまな現場データを有効に活用することで、収益向上につながる施策を継続的に発見し、実行するという。

 具体的には、既存の業務システムの過去データから、生産量や設定値、温度や人間行動などの現場データをもとに、データを自動解釈して複雑な特徴量を算出。業績向上モデルの実現において、探索・判断を制御し、業務知識に依存せず、データから収益向上策を発見して、その実行を提案する。

 センサーデータや業務データを通じて集められた、粒度が異なる各種現場データの自動解釈機能により、幅広い業務での適用が可能で、さらに多種類のデータを組み合わせて、複雑な事象を表現することができる特徴量を継続的に自動抽出する機能により、データから収益向上策を学習できるという。

 例えば鉄道車両運行システムでは、ノッチ運転時間のばらつき制御により電力消費を14%削減。海淡プラント制御システムでは、下水系処理流量の変動抑制により動力費を6%減、物流倉庫管理システムでは混雑抑制のためのピッキング順序変更により作業効率を8%向上させた。

最新テクノロジーにより、倉庫業務の効率化を実現した

 特筆される事例として紹介されたのが、小売店舗を対象としたAI化店舗管理システムの実験だ。ここでは、長年の経験を持った専門家とHitachi AI Technology/Hのどちらが顧客単価を上げることができるか、という取り組みを行い、その結果、AIの方が、成果があがったという結果が出た。

 この実験では、10日間の事前計測結果をベースに、1カ月後の顧客単価を上げることを目標に設定。2人の専門家で構成された人間側は、幹部や担当者へのインタビューを通じた情報収集や流通業界の知識などを活用し、その結果、注力製品におけるPOPの設置や棚配置の変更などを行った

 これに対して、Hitachi AI Technology/Hは、業界知識を持たない人が操作し、店舗や業界の知識は用いずに、データだけを活用して施策を立案したが、顧客単価の高いスポットに対して、店員を重点配備することを指示したという。

 この結果、人間側は顧客単価の向上は確認できず横ばいのままとなったが、人工知能では顧客単価において15%の向上が確認できた。

 「経験を持った『人』よりも、未知の状況でありながらも、情報を持った人工知能の方が勝ったという点に意味がある。大量のデータが入手可能な問題において、コンピュータは経営の強い味方になることを示した」(日立 研究開発グループ技師長の矢野和男氏)。

 2015年7月には、7分野24案件だった汎用AIの適用分野は、Hitachi AI Technology/Hの活用により、2016年6月には14分野57案件にまで急拡大している。

 日立でも、日立グループの国内営業部門の約600人を対象に、各個人の行動データをもとに、働く人の幸福感向上に有効なアドバイスを自動作成する新技術による実証実験を開始したところだ。

 対面情報を収集する赤外線センサーと、身体の動きを検知する加速度センサーを搭載した名刺型ウェアラブルセンサーを首から下げておけば、時間帯や会話相手などを細分化した大量の行動データを自動的に収集。これを「Hitachi AI Technology/H」で分析して、各個人にカスタマイズした形で、職場でのコミュニケーションや時間の使い方など、ひとりひとりの幸福感の向上に繋がる行動についてのアドバイスを自動的に作成し、配信する。それによって、社内を活性化することになるという。

日立が社内で実証実験を行うコミュニケーション強化のデータ収集のための名刺型ウェアラブルセンサー

 なお、Hitachi AI Technology/Hのソリューション化については、同社のテクノロジーイノベーションセンタ、東京社会イノベーション協創センタ、産業・流通ビジネスユニット、サービス&プラットフォームビジネスユニットが参加。さらに、2016年4月1日に日立人工知能ラボラトリを設立しており、人工知能技術の実用化に取り組んでいるところだ。

 日立人工知能ラボラトリでは、Hitachi AI Technology/Hを活用し、ロボットに立ちながらブランコを漕がせる実験を行った結果、最初はガタガタするだけで動かなかったものが、どうしたら動き出すのかといったことを自ら学習。約2分後には、ヒザを曲げてブランコを漕ぐようになったほか、さらに、人間には恐怖心があってできない前方にブランコが行った時点でもヒザを曲げる「二重振幅」という手法まで編み出し、さらに強く漕ぎだしたという。

 学習によって、漕げなかったロボットが、わずか数分で人間を超える漕ぎ方を発見する様子には、多くのミーティング参加者が驚きをみせていた。

 矢野氏は、「日立のAIの定義は、多様で変化する状況にビジネスを自動適用させること。AIは日立の社会イノベーション事業の中核になっていく」と述べた。