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2020年もクラウドで日本企業を支援していく――、AWSジャパンが2020年事業戦略を発表
大阪リージョンも開設へ
2020年1月21日 13:38
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(以下、AWSジャパン)は20日、2020年のクラウドインフラストラクチャに関する記者発表会を開催。同社代表取締役社長の長崎忠雄氏から、2019年の振り返りおよび2020年に向けての国内事業戦略が説明された。
もっとも大きなできごとは、2021年初頭には、大阪ローカルリージョンを3つのアベイラビリティゾーン(AZ)をもつフルリージョンとして開設することが明らかになったことだろう。
長崎社長は「2018年に開設した大阪ローカルリージョンは、われわれが考えていた以上に多くのお客さまから使いたいという要望をいただいてきた。より多くのお客さまに、より多くのサービスを大阪から利用できるようにしていきたい」と語り、国内で2番目、アジア太平洋地域で9番目のリージョンとなる大阪リージョンの開設に向けて、本格的な準備をスタートするとした。
2019年の総括と、2020年の3つの柱
会見の冒頭、長崎社長は2019年の振り返りとして「2011年3月にグローバルでは5番目となる東京リージョンを開設してから10年近くが経過したが、その間、あらゆるお客さまにクラウドのバリューを伝えてきた。10年もたてば社会もお客さまのニーズも大きく変化してくるが、2019年は特に、次世代の変化に対応する基盤を構築するマイグレーション、その基盤の上で新しいビジネスの成功の種を見つけ、育てていくトランスフォーメーション、この2つの側面でお客さまを支援できたと思っている」と総括。企業規模を問わず、多くの国内ユーザーが直面する“変化”をサポートしてきた点を強調する。
クラウドがより多くのユーザー企業に普及/浸透している例として、長崎社長はAWS認定取得数が2017年から2019年の2年にかけて3.9倍になっていることを挙げている。単に数が増えているだけでなく、認定取得数の54%がユーザー企業によるものであり、このことは「クラウドの学習が企業変革のドライバーであることを、多くのお客さまが理解している」(長崎社長)からだとしている。
こうした2019年の変化を受け、2020年では大きく以下の3つを柱にして事業を展開していくことを明らかにしている。
スタートアップ/デベロッパーの支援を強化
グローバルビジネス支援プログラム、AWS Loft Tokyoの利便性を高める専用モバイルアプリ、デベロッパー向けWebマガジンの創刊、マガジンメンバーに対する特典、学生対抗ロボコンの初開催など
日本全国のお客さま支援を強化する継続的投資
東京/大阪/名古屋のオフィスを拠点に、各業界の専門スキルをもつ人材が顧客のより近くでサポート、さらに全国各地のパートナー育成を強化、ISV支援部隊を発足
大阪リージョンが開設される理由とその価値
変化に向き合う日本企業を、クラウドを通して支えていくというのであれば、AWSが提供するクラウドのタッチポイントもまた強固にしていく必要がある。日本企業を支えていくという姿勢をさらに明確に示す姿勢として、長崎社長は2021年初頭に大阪ローカルリージョンを3つのAZで構成される大阪ローカルリージョンとして新たに開設することを発表している。
ローカルリージョンと、東京リージョンのようなマルチAZ構成のフルリージョンのもっとも大きな違いは、耐障害性の高さ、そして利用できるサービスの多様さだ。
リージョン内のAZはそれぞれ個別の電力源、冷却システム、物理セキュリティが備わっているほか、互いに可用性に影響を与えず、かつ、アプリケーションの低遅延も実現できる距離に配置され、高速な専用線ネットワークでもってAZ間が接続される。1つのAZが災害や停電など何らかの理由で利用できなくなっても、その他のAZが稼働していれば迅速なフェイルオーバーが実現するわけだ。
またローカルリージョンでは、利用できるサービスがディザスタリカバリ(DR)やバックアップに限定されていたが、フルリージョンであればクラウドネイティブなサービスを含む多様なサービスを利用できるようになる。関西圏の顧客であれば、東京リージョンを利用するよりも低遅延で各サービスへのアクセスが可能だ。
さらに、2つのフルリージョンが国内に置かれることで、東京と大阪をまたがった地理的な多様性を確保できるため、複雑なワークロードや基幹系システムを異なる場所でアクティブに稼働させたいというニーズにも応えやすくなる。
大阪ローカルリージョンが開設されたのは2018年2月で、すでに東京リージョンと契約のある、限られた大企業ユーザーがDRを主目的としてこれまで利用してきた。つまり、大阪ローカルリージョンはあくまで東京リージョンの補完的存在であり、AZも1つのみで単独での利用はできず、利用できるサービスも極めて限られていた。
もともと、ローカルリージョンという形態自体がAWSにとってもグローバルで初めての試みであり、ユーザーとともに模索しながら運営してきたといえる。だが冒頭の長崎社長の言葉にあるように、当初の予定以上に大阪ローカルリージョンの利用を希望するユーザーが多く、さらに、DR以外のワークロードにも利用したいという声が強くなったことから、米国本社とも協議の上、今回のフルリージョン開設の運びとなっている。
ソニー銀行「AWSの利用可能範囲を全業務とする方針を決定」
会見には、大阪ローカルリージョンの開設を強く求めていたユーザー企業の代表としてソニー銀行 執行役員(システム企画部、システム開発部、システム管理部 担当)の福嶋達也氏が登壇。
「勘定系を含む銀行業務のクラウドへの全面移行を進めるためにも、国内に第2のリージョンが必要と判断し、2014年ごろからAWSに大阪リージョンの開設を強く申し入れてきた。米国本社も含め、真摯(しんし)に検討してもらった結果、2018年のローカルリージョンにつづき、2021年のフルリージョン開設の運びとなった。これによりAWSの利用可能範囲を全業務とする方針を決定した」と語っている。
ソニー銀行ではすでに、勘定系(総勘定元帳)のバックアップシステムを大阪ローカルリージョンに構築済みだが、フルリージョン化にともない、今後は次期勘定系システムをクラウドネイティブなマルチリージョンシステムで構築する検討にも入っているという。
「いままでは“どこまでクラウド化するか”というクラウドファーストな考えのもとでシステムを構築してきたが、これからはクラウド前提で"いかにクラウドを活用するか"というクラウドオンリーへとシフトしていくと思っている。大阪リージョンの開設はそれを加速していく」と福嶋氏。
国内ユーザー待望の大阪フルリージョン化決定をきっかけに、2020年はさらに進化したAWSクラウドのユースケースが誕生することが期待される。