大河原克行のキーマンウォッチ

まずは信頼されなければ挑戦もできない――、山口明夫社長が目指す“日本IBM”の姿

デジタル変革の「第2章」における日本IBMの強み

――IBMは、デジタル変革の「第2章」という表現を用い、コグニティブ・エンタープライズのメッセージを打ち出しています。クラウドをエンタープライズで活用する時代となる「第2章」において、日本IBMはどんな強みを発揮できるのでしょうか。

 日本IBMは、これまでに83年間に渡り、日本でビジネスを行い、その間、業種ごとのエンタープライズアプリケーションをお客さまと一緒に作ってきた経験があります。業種や業務を理解した社員が多く、システムをどうインテグレーションするか、新たなテクノロジーをどう実装するのかといったことを理解している社員が多い。

 また、先のテクノロジーだと思っていたことが、すぐ目の前にやってくる時代であり、日本IBMの社員であれば、それをとらえて、1年後、3年後、5年後を提案することができます。

 そして日本IBMは、クラウドプラットフォームだけを提供するパートナーではなく、特定のテクノロジーだけを提供しているパートナーではなく、データベースだけを提供しているパートナーではありません。全体的なアーキテクチャを考えて、最適な提案を行うことができるパートナーです。

 多くの企業が基幹システムも含めた本格的なデジタル変革へと拡大する「第2章」において、お客さまを取り巻く環境と課題を深く理解し、真摯(しんし)に向き合い、解決策や新たな技術の活用を共創していきます。そこに日本IBMとしての強みを発揮できると考えています。

デジタル変革の第1章、第2章、その先へ

――日本IBMは、クラウドにおいて、どんな存在を担おうと考えていますか。

 流れはクラウドに向かっています。ただ、すべてがクラウドになるというわけではありません。データはエンタープライズ企業の生命線になるでしょう、人の命を左右するような大切なデータもあります。多様性を重視しながら、エンタープライズクラウドの世界にステップを踏んでマイグレーションをしていくことを支援するのが日本IBMの役割です。

 つまり日本IBMは、エンタープライズクラウドの世界におけるリーダーとしての役割を担うことになります。ただ、この言葉が一人歩きして、エンタープライズクラウドにビジネスを絞り込むというとらえ方はされたくはありません。

 ハイブリッドクラウドやマルチクラウド、オープン、DX、データ、AIといったものを組み合わせて、ステップを踏みながら、コグニティブ・エンタープライズの実現を支援していくことになります。

――クラウド市場におけるシェアにはこだわりますか。

 それは高い方がいいですが(笑)。ただ、単にシェア拡大を目指すのではなく、ステップを踏んでクラウド化を支援し、その結果としてシェアが高まればいいと思っています。「信頼に基づく挑戦」の結果がシェアになると思っています。お客さまと一緒に「挑戦」を楽しみたいと思っています。

――ちなみに、2019年中に大阪のデータセンターを稼働するという予定でしたが。

 現在、準備を進めており、2020年の早いタイミングでは稼働できる予定です。