大河原克行のキーマンウォッチ

まずは信頼されなければ挑戦もできない――、山口明夫社長が目指す“日本IBM”の姿

「3+1」の進捗は?

――山口社長は、「3+1」という言い方をしています。最初の3つは、「デジタル変革の推進」「先進テクノロジーによる新規ビジネスの共創」「IT、AI人財の育成」。そして、「信頼性と透明性の確保」を+1に位置づけ、それらを、日本IBMの今後の「約束」としています。これらの進捗についてはどうですか。

 「デジタル変革の推進」という点では、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する上で、すでに、Red HatのOpenShiftやIBM Cloud Paksなどの製品群を活用した提案が本格的に始まっています。特に、これらの製品がそろってから、社内のモメンタムが一気に変わり、お客さまのすべてのシステムを対象に、オンプレミスとして残すべきものは何か、クラウドを活用した方がいいものは何かといったことの検証もはじまっています。

 また、お客さまの意識も変わり、コンテナ化への取り組みを開始したり、オープンソースを積極的に取り組んだり、従来システムとデータを共有しながら、より攻めることができるシステムを構築したりといったように、IBMが提唱する「第2章」といった動きが出始めています。

 新たなテクノロジーを活用することによる「先進テクノロジーによる新規ビジネスの共創」においても、すでに事例が出ています。パナソニックの樋口さん(パナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口社長)と一緒に発表した、半導体装置の高度化もその一例です。また、量子コンピュータをどう活用していくのかといったことについても、いくつかの企業と話し合いを進めています。これらの取り組みは思ったよりも進んでいますね。

 そして、3つめの「IT、AI人財の育成」については、関西学院大学と「AI活用人材育成プログラム」を実施したり、東京都教育委員会と片柳学園とともに、グローバルで展開しているP-TECHのノウハウを活用して、IT人材の育成に向けた包括連携に関する協定契約を結んだりといったことをしています。IT、AI人財の育成に関しては、いろいろな方々から多くの問い合わせをいただいているところです。これからもっと加速しそうな領域です。

 そして、「+1」となる「信頼性と透明性の確保」については、「個人の尊重」「最善の顧客サービス」「完全性の追求」という3つの経営理念に基づき、日本IBMが信頼される企業になることを目指します。

 例えば、AIを構築、実行、管理する際には、AIによる意思決定支援が信頼できるものでなくてはなりません。バイアスがかかり、不公平な結論を導き出すことがないように努力をしています。

 また、DFFT(Data Free Flow with Trust)への取り組みを通じて、信頼性のあるデータ流通もサポートしていきます。日本IBMが社会から認められるためには、信頼性と透明性は極めて重要な要素だととらえています。

IBMのお約束「3+1」