特別企画

富士通、AIや5Gなど最新の研究開発成果を公開 DXを支えるテクノロジーに経営リソースを集中

数多くの研究開発成果を公開

 一方、研究開発戦略説明会では、「高信頼・低コストを実現するAI運用の新技術」と「AI処理を最大10倍高速化する技術」の2つの新たな技術以外にも数多くの研究開発成果を公開した。

Wide Learningの新技術

 Wide Learningの仮説列挙技術を拡張して、最適な基準値を自律的に発見しながら、アクションプランを高速に抽出する技術。さまざまな分野での業務改善に寄与できるという。

 マーケティングへの応用では、従来は性別や年齢別に購入率を予測していたにとどまっていたが、新技術では、売り上げを高めるために、どの属性にダイレクトメールを送信すればいいのかまで提案する。

 2020年度には、同社のAIであるZinraiソリューションのひとつとしての提供を目指している。

細やかな表情変化を高精度に検出するAI技術

 米カーネギーメロン大学との共同研究により開発した技術で、検出対象となる表情筋ごとに最適化された表情認識を行うことができる。従来研究を上回る最高精度を達成。顧客や従業員の細やかな表情変化をとらえて、サービス品質を向上できる。2019年度に遠隔特定保健指導での実証を経て、2020年度に働き方改革やモビリティ分野の利用シーンでの実用化を目指す。

ブロックチェーンによる電力需要家間取引技術

 ブロックチェーンを活用することで、削減電力の融通を自動化。電力使用ピーク時の電力の安定供給に貢献することで、デマンドレスポンスの成功率を向上させることができる。2020年度以降の実用化を目指している。

プログラム自動修正技術

 数万件のJavaのソースコードを分析して、潜在バグ修正事例から、品質向上に寄与するコード修正パターンを学習し、汎用的な形式として蓄積し、修正点と修正内容候補を提示。開発中のコードに対する推奨改善方法を自動合成する。

 これにより、開発およびメンテナンスの効率化を図ることができる。SMBCでの試行を進めており、2020年度中に開発支援ツールとしての提供を目指す。

マイクロサービスをトラストに実行する高信頼MSA基盤技術

 マイクロサービスのメンテナンスを支援する技術。応答時間や可用性、コストといったサービス要件にあわせて、マイクロサービスの実行基盤の設定パラメータを適切に自動調整する。一部コンポーネントを修正しても、全体性能を安定化できる。社内プロジェクトで実践し、2020年度にマイクロサービス適用商談での実用化を目指す。

生体情報の暗号化技術

 登録した生体情報を暗号化したまま照合する技術。これによりクラウド環境においても、安全に生体認証サービスを提供することができる。クラウドを活用した実店舗での安心、安全なキャッシュレス決済などを実現できる。2020年度に製品化する予定だ。

IDYX(IdentitY eXchange)プラットフォーム

 ブロックチェーンを活用して、企業間であってもセキュアにデータ利活用を可能にするプラットフォーム技術。企業間の個人データの交換を個人の意思で制御できるようになる。時間経過に伴う情報の劣化を防ぎ、個人データの鮮度と信用性を高めることができる。JCBとアイデンティティ領域における戦略的パートナーシップを締結して、共同研究を実施しているところだという。2019年度中にVirtuoraDXとして実装する。

疾病による多様な歩き方を定量化する歩行特徴のデジタル化

 ジャイロセンサーを足首に付けて、歩き方を定量化。疾病の経過などを測ることができる。筋骨格、脳神経、循環器などの疾病の影響で現れるさまざまな歩き方に適応できる。

スーパーコンピュータ 富岳

 富士通と理研が、スーパーコンピュータ「京」の技術をさらに向上させ、幅広いアプリケーションソフトを利用できる世界最高水準のスーパーコンピュータ「富岳」。京のマイクロアーキテクチャーを継承するとともに、HBM2メモリを採用し、高いメモリバンド幅と演算性能を実現している。プロセッサーなどを展示していた。なお、富岳は2021年に稼働予定だ。

組合せ最適化問題を高速に解くデジタルアニーラ

 2017年度に技術発表して以降、研究段階からPoCを経て、2018年5月には商用サービスを開始。2018年12月には、性能を強化し、ビジネス適用に向けた取り組みを加速している。化学、創薬分野などの事例を紹介していた。2019年度内に、8Kbitから100万bitに規模を拡大する予定だ。

モビリティデジタルツインが実現する未来

 自動車から収集したビッグデータに対して、リアルタイムにデータを仮想空間にマッピングし、再現、分析、予測することで、収集データを価値に転換。さまざまなサービスに適用することができる。この技術を活用した自動事故解析サービスを、2020年上期から、あいおいニッセイ同和損保に提供する。

5Gネットワークの展開・拡大を実現する基地局装置

 NTTドコモに納入を開始した5G対応基地局無線装置と制御装置を展示。制御装置は独自のソフトウェアの拡張によって5Gを実現しており、既存の基地局制御装置を利用しながら、迅速に、低コストで5Gネットワークを展開することができる。無線装置はNTTドコモが獲得した3周波にあわせて3機種を開発したという。