特別企画

VMware Cloud on AWS、Kubernetes、ブロックチェーン――、CEOとCTOが語ったVMwareの最新技術

vForum Tokyo 2018を振り返る

VMware Blockchain:エンタープライズグレードな分散型プラットフォームをめざす

 冒頭でも触れたとおり、vForumには米国本社から数多くのエグゼクティブが来日するが、キーノートではゲルシンガーCEOに続いて、おそらくvForumでは初となるレイ・オファレル(Ray O'Farrell)CTOが登壇し、VMwareが提供するいくつかの最新技術を紹介している。

VMwareのレイ・オファレルCTO

 ここではそのひとつとして、VMwareによるブロックチェーンへの取り組みである「VMware Blockchain」(ベータ版)を簡単に紹介する。

 VMware Blockchainはパブリックなブロックチェーンではなく、複数雨のエンタープライズ企業によるユースケースを想定した、パーミッション型のブロックチェーンサービスだ。

 オファレルCTOは「ブロックチェーンの世界には現在、数多くのプレイヤーやパイオニアがいる。だがエンタープライズが満足に利用できる、信頼できる基盤はまだない。われわれの仕事は、エンタープライズグレードなブロックチェーン基盤を構築することであり、それは1社だけではできない。ほかのプレイヤーともコラボレーションしながら信頼される分散基盤とは何かを探っていきたい」と、キーノート後のインタビューで語っている。

 具体的にVMware Blockchainが目指しているゴールは、以下の3つに集約される。

・オンプレミスからマルチクラウドまで、あらゆる環境でノードを展開できる分散型信用基盤
・単一画面の管理インターフェイスや企業向け調査ツールなど、マネージド型SaaSプラットフォームとしての利用のしやすさ
・スマートコントラクト用のCI/CDツール、APIガイド、サンプル集、「Project Concord」(VMwareが開発するオープンソースのブロックチェーン技術)の基盤など、豊富な開発者向けサービス

 これらのゴールを追求しながら、現在はまだコンセプトレベルにあるエンタープライズ向けの分散型基盤を、実稼働可能なレベルにまで押し上げるのがVMware Blockchainの役割となる。

 ここでオファレルCTOは、VMwareがいう“分散型”という用語について「われわれが描いているブロックチェーンは“distributed”というよりは“decentralized”なネットワーク」とコメントしており、どこか1カ所にサービスやワークロードが集約されることを避けるモデルである点を強調している。

 VMwareは仮想化システムという、ある意味、分散型ネットワークの先駆けともいえる技術に長年投資してきた経緯から、「VMwareがブロックチェーンを手がけるのは技術的にも歴史的にも理にかなっている」(オファレルCTO)という自負をもつ。

 現在、エンタープライズグレードなブロックチェーンプラットフォームへのニーズはあるが、ひとつのプラットフォームに縛られることを嫌がるユーザーが多いという状況の中で「われわれのようなニュートラルな技術をもつ企業がエンタープライズブロックチェーンの世界をリードする意義は大きい」(オファレルCTO)という点が、まさにVMwareがブロックチェーンに注力する理由だといえる。

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 ゲルシンガーCEOがキーノートで引き合いに出した5年前のクラウドの世界と現在を比べると、その変化の大きさ、激しさをあらためて実感する。そしてその変化のスピードは年々加速しており、オファレルCTOは「インフラがAPIネイティブなプラットフォームへとシフトしていることがそのスピードに拍車をかけている」と指摘する。

 その一方で、どんなにITの世界が変わろうとも「VMwareのコアはこの20年変わっていない」とロバートソン氏は強調する。そのコアとは同社のポリシーである“Any Device, Any Application, Any Cloud”だ。どんな環境であってもアプリケーションが、デバイスが、サービスが“動く”ことを約束する――、そのポリシーを忠実に実行する技術として、VMwareは現在、Kubernetesやエッジコンピューティング、ブロックチェーンなどに投資している。

 おそらくいまから5年後も、注力する技術は変わっても、その姿勢は変わっていないだろう。

「20年変わらない」(ロバートソン社長)というVMwareのコアビジョンであるAny Device, Any Application, Any Cloud