特別企画

「Microsoft Azure+パートナーシップソリューション」の活用で企業はデジタルトランスフォーメーションの道を最短で走れる

今やあらゆる企業にとって不可避のテーマとなったデジタルトランスフォーメーション(DX)。2018年7月10日、この重要テーマの推進にまつわる諸課題を考察し有効解を探るイベント「Cisco & NetApp DX Day 2018」が開催された。同イベントのセッションに、日本マイクロソフトのパートナー事業本部 パートナー技術統括本部ソリューション開発技術本部パートナーソリューションプロフェッショナルの山本美穂氏が登壇。Microsoft Azureを核としたシスコシステムズやネットアップなどのパートナーシップが顧客のDX推進にもたらす価値を説明した。(撮影:小沢朋範)

写真1:日本マイクロソフト パートナー事業本部 ソリューション開発技術本部パートナーソリューションプロフェッショナル山本美穂氏

 2017年6月、マイクロソフトはネットアップとの戦略的提携の拡大を発表した。このとき「Microsoft Azure」(以下 Azure と略します)で提供される新たなクラウドデータサービスの共同開発や、Azureと、Azureのオンプレミスサービス「Azure Stack」へのアプリケーション移行を高速化するソリューションの提供、ネットアップのONTAPストレージが持つ「FabricPool®」機能における「Azure Blob Storage」のサポート、ネットアップのSaaSデータバックアップツール「SaaS Backup for Microsoft Office 365(旧Cloud Control for Office365)」でのAzureサポートなどが一挙にアナウンスされた。

 そして、2018年1月にはシスコシステムズとのパートナーシップを強化。シスコがAzureの閉域網接続サービス「ExpressRoute」をCisco Solution Supportでサポートすることと、マルチクラウド環境対応の統合運用管理ツール「Cisco CloudCenter」がAzure/Azure Stackをサポートすることが発表された。

 3社の緊密なパートナーシップについて、Cisco & NetApp DX Day 2018のマイクロソフトセッションを担った山本氏は次のように説明した。

写真2:ネットアップとシスコが共同開発・提供するコンバージドインフラ「FlexPod」(出典:ネットアップ/シスコシステムズ)

 「3社のパートナーシップにより、FlexPodで稼働するオンプレミス環境がAzureの各種サービスと接続され、その上のさまざまなアプリケーション/サービスを柔軟かつ安全に管理できるようになります。このようにクラウドのイノベーションをオンプレミスにもたらすハイブリッド環境のプラットフォームで、お客様がさまざまな方面から取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるインフラを実現できます」。

 図1は、ネットアップ製品ポートフォリオのAzure対応を示すものだ。FlexPodのONTAPストレージで管理されるオンプレミス環境は、Azure上のCloud Volumes ONTAPと同一のストレージ管理OS(ONTAP)が動作しているのでそのままAzureとデータ転送・連携が可能だ。さらにこのネットワークはSoftware Defined StorageであるNetApp ONTAP Selectなどを使うことでIoTなどのエッジデバイスまで広げることができる。また、データ同期サービスの「NetApp Cloud Sync」もオンプレミス/プライベートクラウドのONTAPストレージとパブリッククラウドのAzure BLOB Storage間でのデータ転送・同期に対応する。これは、エッジからコア(オンプレミス/プライベートクラウド)、パブリッククラウドにわたって一貫して効率的なデータ管理を可能にするネットアップのデータファブリックをベースとした「データパイプライン」アーキテクチャに対し、マイクロソフトのAzureのデータ管理関連技術が緊密に対応していることを示す。

図1:ネットアップの製品ポートフォリオのAzure対応(出典:ネットアップ、日本マイクロソフト)

DXの本質とマイクロソフトのミッション

 企業のDX推進に言及する中で山本氏は、マイクロソフトのコーポレートミッションが偶然にも「デジタルトランスフォーメーション」の原義と一致していたことを紹介した。

 DXはスウェーデンのエリック・ストルターマン(Erik Stolterman)氏が2004年に発表した論文が初出で、そのメッセージは「ITで人々の生活をあらゆる面でよい方向に変化させていこう」というもの。そして、マイクロソフトが掲げるメッセージは“Empower every person and every organization on the planet to achieve more”(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)。つまり、同社のあらゆる活動とDXが軌を一にしているというわけだ。

 「DXは難しくとらえられがちなのですが、本質はとてもシンプルで、要は、ITを活用して今までのモノやコトをよりよくしましょうということ。お客様や私たちにとってこれまでもやってきた取り組みに呼称が付いたことで、より加速させていこうというのが今の流れなのではないでしょうか」(山本氏)

 実際、2021年までにDXは日本経済に11兆円もの経済効果をもたらすとの予測もあり(図2)、社会的な期待は非常に大きい。今後、より多くの企業がDXを推し進めていく中で、取り組みを上手く進められない企業は、想定される大きなビジネスチャンスを失うことを意味する。

図2:2021年までにDXは日本経済に11兆円もの経済効果をもたらす見通し(出典:日本マイクロソフト・IDC Japan デジタルトランスフォーメーション調査「Unlocking the Economic Impact of Digital Transformation in Asia」2018年2月)

 DX推進のカギを握るのはやはり、AIやIoT、ビッグデータ解析といった先端的アプローチを含めた、アプリケーションやデータの効果的な活用である。マイクロソフトは、「Productive」「Hybrid」「Intelligent」「Trusted」という4つの特徴を備えたAzureの提供で、顧客にDX対応のクラウドインフラを提供していく。加えて、上述したネットアップやシスコシステムズをはじめとする各社とのパートナーシップによって、それぞれの分野でのパートナーの強みや価値が付加されるかたちだ。

ハイブリッド環境で一貫したストレージを実現するAzure NetApp Files

 マイクロソフトとネットアップのパートナーシップから生まれたサービスの1つに、その名も「Azure NetApp Files」がある。Azure NetApp Filesは2017年9月に発表されたNFS/CIFSベースのファイルストレージサービスで、現在はパブリックプレビュー版として利用が可能になっている。山本氏はデモを交えて紹介した。

 Azure NetApp Filesは、Azureのネイティブなサービスとして提供される。他のAzure サービスと同様、Azure PortalやCLIを介してシームレスなストレージのプロビジョニング・管理が可能だ。ユーザーは、信頼性の高いクラウドベースのファイル共有基盤にコンプライアンスサービスといったAzureならではのメリットが得られる。

 ストレージサービスを司るのはもちろんNetApp ONTAPだ。ストレージOSとして数百TBのスケーリング、数千人のユーザーからの接続の管理が可能で、ファイルストレージに対するエンタープライズレベルのニーズを満たす。

 Azure NetApp FilesによりONTAPの提供するSnapshotやCloneといったデータ管理技術が、プライベート/パブリッククラウドの双方で利用可能になりデータ管理および管理操作のエクスペリエンスの一貫性が確保される。

ユーザーが最短距離でDXを推進できるように

 パートナーシップにより実現した、DXのためのアプリケーション/データ活用事例として、山本氏は、ここ最近ニーズが大きく高まっているクラウド上でAIを活用する方法と事例を挙げた。

 事例として取り上げたのは、低遅延かつセキュアなシステム環境の下でオンプレミスのネットアップストレージにデータを置いたまま、Azure上のGUI(Azure Machine Learning Studio)で組んだマシンラーニングの分析モデルをシミュレーションし、サービス化して手軽に利用できるようにするものだ。Azure Machine Learning Studio ではWeb上のGUIでサンプル実験で組まれたモデルをコピーし、感覚的な操作でオリジナルの機械学習のモデルをつくることができる画期的なサービスだ。また、Azureポータルから利用できるCognitive Services で提供されているAPIでは、あらかじめ学習済みのさまざまな分析モデルが用意されており、ディープラーニングやマシンラーニングの知識やノウハウを持たずとも実践できる(図3)。

図3:Azure Machine Learning Studioの特徴(出典:日本マイクロソフト)
写真3:山本氏は、「DXに必要な“車輪”はマイクロソフトとパートナーが用意するので、お客様には、車輪を転がすための技術や手法にだけフォーカスしていただきたい」と語る

 「強い専門性が必要であったAIを活用したDXのプラットフォームを、より広範囲のお客様にお届けする取り組みです。その際、処理の基点になるのがオンプレミス基盤、Azure NetApp Files、Cloud Volumes ONTAPにお客様が格納しているデータであり、お客様はAIのプラットフォームのすべてを手組する必要はなく、あらかじめ準備されているモデルをわかりやすいUIのAzure Machine Learning Studio上で目的に応じた分析モデルを選んだり編集したりすればよいわけです」(山本氏)

 Azureというクラウドインフラの下に、パートナーがそれぞれの強みを持ち寄ることで、DX対応インフラとしての価値がより高まり、それをユーザーは容易かつ迅速に活用できる――本稿で紹介した3社のパートナーシップが実現する世界は、ユーザーにDX推進の最短距離を進んでもらうためのものと言える。

 「DXという新しい取り組みにあたって、ともすれば“車輪の再発明”をしようとしてしまいがちですが、そこは私たちマイクロソフトやパートナーがこれまでのR&Dやビジネスで培ったノウハウや経験から手軽に再利用可能な部品をあらかじめ用意しています。お客様は、車輪を転がすための技術や手法にフォーカスしていただければと考えています。そうすることで、もっとIT活用の戦略面などの必要な箇所にリソースを割けるようになり、DXを加速できるはずです」(山本氏)

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 山本氏のセッションで紹介された、マイクロソフト、シスコシステムズ、ネットアップのパートナーシップと、それぞれの成果として具現化された製品やサービス、ソリューション群。FlexPodやAzure Stackが担うクラウド対応のオンプレミス環境を起点に、Azure NetApp FilesやAzureの各種サービスを活用することで、ビジネスの要件に応じてシームレスに移動・展開が可能な“真のハイブリッドインフラ環境”が実現されるかたちだ。ユーザーにとっては、3社の協働がさらに進むことで、インフラをまたいだ革新の選択肢が広がるわけで、今後の進展を期待したいところだ。