特別企画

デジタル時代も“信頼と創造”で――、創立から50周年の富士通研究所が最新技術を公開

データ流通の信頼性を向上する新技術「ChainedLineage」なども発表

2つの新技術を発表

 説明会では、新たに2つの技術を発表した。

 ひとつは、業種および業界を超えたデータ流通の信頼性を向上する技術となる「ChainedLineage(チェーンドリネージュ)」だ。

ChainedLineage

 さまざまな企業や個人から入手したデータの出どころや、加工履歴といったデータの成り立ちを示す来歴情報を確認でき、安心してデータ利活用が行えるブロックチェーン技術。複数の企業を経由したデータ加工の履歴を容易に追跡できるほか、同意済みの個人データの効率的な入手も可能になる。

 具体的には、企業ごとに保有していたデータ加工履歴情報と、ブロックチェーン上で共有されている企業間データ取引履歴情報を、ほかの企業からも確認できるように、加工履歴情報およびデータ取引履歴情報のハッシュ値を介して統合する。

 さらに、データ流通基盤である富士通VPXテクノロジー上に個人データ利用許可の同意ポータルを配置。アクセス管理プロトコル標準であるUMA2.0を用いて、データ要求元に対する本人の提供同意を確認し、データへのアクセス権を与えることができる。

 なお、企業をまたがったデータ来歴統合技術は2019年度の実用化が目標。企業をまたがった個人データの同意管理技術は、2018年度後半に実用化するという。

企業をまたがったデータ来歴統合
企業をまたがった個人データの同意管理

 富士通研究所では、運転履歴データをもとにした、パーソナライズされたテレマティクス保険の開発への応用、患者の診療データを創薬に活用する医療分野での活用などを想定しているほか、さまざまなデータ活用分野に適用することで、信頼性の高いデータ社会の実現を目指す考えだ。

 富士通研究所の佐川千世己常務取締役は、「従来は機能に対するトラストが求められていたが、データドリブン時代においては、入力データは安全であるか、出力データに不要なものが混じっていないかといったように、データの入出力に対するトラストが求められる。ChainedLineageによって、データドリブン時代に求められるトラストな環境を実現することができる」とした。

富士通研究所 常務取締役の佐川千世己氏

 もうひとつは、分散ストレージでの高速処理を実現する大量データ処理基盤「Dataffinic Computing」である。

 大量データの処理を高速に行うため、分散ストレージシステム上で大容量蓄積と高速データ処理を両立する技術で、非構造化データを含む大量データの高速処理を可能とし、監視カメラ映像の利活用やICTシステムのログ分析、クルマのセンサーデータの利活用、ゲノムデータ分析といった、増加するデータの効率的な利活用を実現するという。

 非構造データを、データの関連性の切れ目で分割することで、断片データだけでも処理可能なデータとして蓄積。それぞれの分散ストレージ上で蓄積された断片データごとに処理し、アクセス性能の拡張性を維持しながら、システム全体のパフォーマンスを向上させる。

 また、ストレージシステム内部で発生しているシステム負荷をモデルにして、近い将来に必要とするリソースを予測し、それをもとに、ストレージ機能の性能を低下させないように、データ処理の使用リソースと配備先を制御する。

 これにより、ストレージ機能の安定稼働を実現した上で、高速データ処理を可能にするとした。

コンテンツアウェアデータ配置
アダプティブリソース制御

 富士通研究所の佐川常務取締役は、「データは、21世紀のオイルといわれるが、オイルと比べて違うのは、それが無限であり、瞬時に共有できること。2025年のデータ量は、163ZB(ゼタバイト)もの規模になると予測されている。これは、全世界70億人の半分の人の細胞を全部足した数と同じになる。163ZBのうち、95%が実世界を写像した形でサイバー空間に入ってくる。これを活用するためには、信頼性が重要であり、トラストなデータ社会を創出する必要がある。増え続けるデータを生かし、データ時代に貢献したい。今後、富士通はすべての研究開発にトラストの視点を盛り込む」とし、「今回発表した2つの技術は、それを実現する一歩になる」と位置づけた。

データは21世紀のオイル
データドリブンなCo-Creationの世界