ニュース

富士通研究所、少量のデータでも学習可能な深層学習による物体検出技術を開発

 株式会社富士通研究所は16日、少量のデータでも学習可能な、深層学習(ディープラーニング)による物体検出技術を開発したと発表した。

 診療画像から特定の被写体を切り出す物体検出においては、ディープラーニングを用いることが一般的だが、精度を出すためには、画像と、画像に写っている物体の種類と位置の情報(正解データ)が数万枚規模で必要になるという。しかし、この正解データは専門知識を持つ医師しか作成できないため、大量に準備することが困難という課題があった。

 そこで富士通研究所では今回、少量の正解データ付き画像と、大量の正解データのない画像から、ディープニューラルネットワークの学習を行うことで画像の位置特定を可能とする、“半教師あり学習”による物体検出技術を開発した。

 この技術では、物体検出用ニューラルネットワークの推定結果を手掛かりに、元の画像を復元させる復元用ニューラルネットワークを利用し、出力された推定位置がどの程度正しいかを検証する。

 間違った推定位置から復元された画像は元画像と一致しないため、2つの画像を比較することで、推定位置の正しさを検証。こうした推定と復元を大量の画像に対して繰り返し行い、正解データを増やしながら、徐々に正確な推定位置が出力される状態に近づけることによって、精度の向上を可能にしたという。

画像復元により推定位置を検証する新しいネットワーク構造

 また同社は、開発した技術を、京都大学大学院 医学研究科との共同研究で取り組んでいる、腎生検画像からの糸球体の検出に適用し、正解データ付き画像50枚のみを用いて学習した従来の物体検出ニューラルネットワークと、正解データのない画像450枚を追加し、今回の新技術を活用した場合を比較した。

 その結果、新技術では、人間と同等である見逃し率10%以下という条件下で、従来の2倍以上である27%の精度を達成したとのこと。

 富士通研究所では今後、京都大学大学院 医学研究科との共同研究を通じ、今回行った糸球体検出を応用した、腎臓の定量的な評価手法の実現に向け、研究に取り組む予定としている。

 また新技術は、医療などの特定用途向けだけでなく、正解データ付き画像の少ない分野での物体検出に広く応用が見込まれており、例えば、製造ラインの画像を使った異物の検出、インフラ設備の各種センサーによる診断画像からの異常個所発見、建築図面からの使用部材のリストアップなど、さまざまな用途への適用拡大が想定されるとのことだ。

 富士通では、AI技術をAPIとして提供する「Zinraiプラットフォームサービス」を支える学習モデル構築技術として、2018年度中の導入を目指すとしている。