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富士通研究所、光ネットワークの構築・運用管理に必要な光伝送信号パラメーターの深層学習を用いた推定技術を開発

 株式会社富士通研究所、Fujitsu Laboratories of America、富士通研究開発中心有限公司は12日、光ネットワークの構築・運用管理に必要な光伝送信号パラメーターの深層学習を用いた推定技術を開発したと発表した。

 インターネットのトラフィック増大に対応するため、光ネットワークには新しい光伝送技術が次々と適用されており、今後、さらなる多様化・複雑化が考えられる。そのため、光ネットワークの構築・運用管理を容易にする技術が求められている。

 これまで、光ネットワークを構築する際や、運用で問題が発生した際には、本分野の専門家が専用の測定器を現地に持ち込み、原因究明のための測定・調査を行う必要があった。大容量化・長距離化を目指す光ネットワーク内の光伝送信号の種類や機器の設定パラメーターはますます複雑化するため、構築や問題の解決に数日の時間を要する可能性もあり、迅速な光ファイバーネットワーク構築・管理の大きな課題となる。

 これを解決するため、光ネットワークの状況を遠隔から監視・モニタリングできる技術の開発が求められているが、専用測定器を使うことなく運用管理者が必要な情報を測定するには、光信号特有の性質により実現に課題があった。

開発した技術の概要

 こうした課題に対し、富士通研究所などでは、遠隔の光受信器における光伝送信号からネットワークの構築・運用に必要となる光伝送信号パラメーター(SN比、変調方式、シンボルレート)を測定する技術を開発した。

 開発した技術では、光受信器の受信信号を深層ニューラルネットワークへの入力データ、専用測定器で測定した結果を教師ラベルとし、深層ニューラルネットワークが専用測定器の測定結果を再現するように学習することで、光伝送信号パラメーターを推定する。

 受信した光伝送信号はレーザー周波数などの信号特性に偏りが生じるため、そのまま学習データとして利用すると偏った状況に特化した学習となってしまい、推定誤差が大きくなってしまう。そこで、光伝送信号を元に状態を変えた信号を仮想的に生成した。たとえば、レーザー周波数を変えたデータを仮想的に多数生成し、それらを合わせて学習データとすることで、様々な状況を学習結果に反映することが可能となり、推定誤差を小さくすることが可能となった。

開発した技術の概要

 実際の光ネットワークに適用される光受信器を模擬した伝送実験系を構築し、約1万個のデータによって、光SN比は1%の誤差で、変調方式とシンボルレートは5%の誤差で推定可能なことを検証。今回開発した技術を用いることで、これまで専門家が専用の測定器を用いて数日かけて行っていた作業を、遠隔かつ分単位の時間で推定できるようになると期待されるとしている。

 富士通研究所などでは、今後、実際のネットワーク環境での実証を進め、2019年度以降の製品化を目指すとともに、光ネットワークの自動運用に向けて検討を進めていくとしている。また、技術の詳細は、3月11日~15日に米サンディエゴで開催される光ファイバー通信に関する世界最大の国際会議「OFC 2018(The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition 2018)」で発表する。