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セールスフォース、ワンプラットフォームで収益ライフサイクルを管理する「Revenue Cloud」を提供開始

 株式会社セールスフォース・ジャパン(セールスフォース)は7月1日、収益ライフサイクル管理全体をシングルプラットフォームで実現する「Revenue Cloud」の、日本市場における提供開始を発表した。

 Revenue Cloudは、Salesforce CRMプラットフォーム上に構築された収益ライフサイクル管理(RLM:Revenue Lifecycle Management)ソリューションで、見積もりから現金化までのプロセスを顧客データと連携させながら一元的に管理する。

 SalesforceでRevenue Cloud担当のエグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャを務めるメレディス・シュミット(Meredith Schmidt)氏は、「Revenue Cloudの最大の差別化要因は、Salesforceプラットフォームと統合されていること。ビジネスの中心は常に顧客であり、ビジネスにおいてもっとも重要な顧客データを現在の複雑な収益管理にひもづけられるのはRevenue Cloudだけ。もうひとつ重要なのはAPIファーストであること。見積もりから現金化まで(Quote-to-Cash)のすべてのプロセスがAPIで統合されており、自動化とエージェント化によるシームレスな収益管理が実現している」と語る。

“完全な収益管理プラットフォーム”をうたうRevenue Cloudが日本市場でも提供開始に。Salesforceプラットフォーム上で提供され、見積もりから現金化までのプロセスを、顧客データをもとに自動化/一元化して管理する。AgentforceによるAIエージェント機能(営業/見積もり支援、カスタムエージェント構築など)も実装

 Revenue Cloudは、Salesforceが2016年2月に買収した旧SteelBlackのCPQ(Configure, Price, Quote:構成/価格設定/見積もり作成)ソリューションをコア機能としたRLMプラットフォームで、CPQだけでなく契約、注文、請求※といった収益ライフサイクルにおける、あらゆるプロセスがSalesforceプラットフォーム上でサポートされる(※請求機能の統合は2025年夏を予定)。

Revenue Cloudの構成。商品カタログ→CPQ→契約→注文→アセット→請求/会計という収益管理にかかるプロセスをワンプラットフォームで実行。商品価格の変更などはAPI経由でリアルタイムにすべての販売チャネルへ反映できる。ERPやほかのポイントソリューションを必要としないので、サイロ化を回避できる点もメリットのひとつ

 また、Revenue Cloudでは商品カタログをAPIで公開できるので、社外の販売パートナーやアプリを含むあらゆる販売チャネル(オムニチャネル)にリアルタイムな製品/価格情報を提供でき、エンゲージメントを高めながら販売スピードを高めることが可能になる。

Revenue Cloudでは、営業や財務などさまざまな役職にあわせた設定画面が用意されており、これは営業販売部門が商品カタログのデータから見積もりを作成している画面。役職者からの承認ステータスや正規価格/割引価格など多段階の価格設定もすべて可視化されている

 さらにSalesforceプラットフォームに統合されているため、Slackや「Sales Cloud」といった他のSalesforceポートフォリオとのシームレスな連携が容易で、Salesforceが注力するAIエージェント機能(Agentforce/Einstein AI)を活用した見積もりや契約の作成、収益ライフサイクル管理プロセス全体の自動化も実現できることから、シュミット氏は、「収益ライフサイクルを管理するためにERPやその他のポイントソリューションを併用する必要がない」と、ワンプラットフォームによるRLMのメリットを強調する。

 「製品やサービスが現金化されるまでのライフサイクルには、営業、財務、法務などさまざまな部署の担当者がかかわってくる。また、サブスクリプションモデルやコンサンプションモデル、成果報酬型モデル、パートナー外販、顧客への直販など販売チャネルが多様化する現在では、一度構築したらあらゆる部門、あらゆる販売チャネルで適用できるRLMが必要。Revenue CloudはSalesforceプラットフォーム上で顧客接点をベースに構築されており、これまでQuote-to-Cashにかかるプロセスを分断してきたサイロ化を回避する。実際、私はもう何年もERPを触っていない」(シュミット氏)。

米Salesforce、Revenue Cloud担当のエグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのメレディス・シュミット氏

 また、今回のRevenue Cloudの国内提供開始に伴い、特に日本企業にとって注目すべき特徴として紹介されている機能は、以下の通りだ。

商品カタログ&コンフィギュレーター(CPQ)

属性ベースのカタログと新しい制約ベースのロジックでカタログと構成ルールを簡素化、SKU(Stock Keeping Unit)をシンプル化し、ルールの乱立とメンテナンスのオーバーヘッドを削減してGo-To-Marketを加速、また最大1000行におよぶ大規模な見積もりを高いパフォーマンスで処理

ダイナミック収益オーケストレータ(Dynamic Revenue Orchestrator)

複雑な注文プロセスを大規模に管理し、注文内容を商品と注文履行に分解、各商品にカスタマイズされた履行プランの作成/実行を自動化、構成に変更があればリアルタイムに適応し、下流システムを調整

ダイナミック収益オーケストレータは、複雑な注文を「商品」と「注文履行」に分解し、注文処理の流れを可視化してマッピングし、注文エラーの削減を図っている(赤い部分がエラー部分なので、そのプロセスに対して改善のアクションを取る)

Revenue Management Intelligence(Tableauダッシュボードで提供)

価格戦略を最適化する「価格設定分析」、ARR/MRR/更新/解約などを分析し、サブスクリプションの健全性と収益パフォーマンスを総合的に評価する「サブスクリプション収益分析」、ボトルネックに対処し、注文フォールアウトを削減する「注文分析」、インボイスの健全性を追跡し、請求効率を最適化する「請求分析」といった収益分析機能を提供

Agentforce

エージェントによる営業支援や見積もりの正確性向上、個別のユースケースに対応したカスタムエージェント構築など、Agentforceの技術を営業見積もりに適用

AgentforceのAIエージェント機能を活用し、Slack上でAIエージェントから見積もり作成のアドバイスを受けることも可能

 Revenue Cloudのデモを紹介した、セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマネジメント シニアマネージャー 平川武雄氏は「従来のRLMシステムでは、新製品を市場に投入するたびにシステムをメンテナンスする必要があり、Salesforce社内でも新製品の市場投入に4カ月かかるといったことも起こっていた。Revenue Cloudはそういった事態を回避するソリューション。顧客視点で収益ライフサイクルを管理し、営業や財務、あるいは外部の販売パートナーなどそれぞれのロールに適したペルソナを設定して、ペルソナに適した管理画面を提供する」とシュミット氏と同様に顧客中心のワンプラットフォームソリューションである点をメリットとして挙げている。

 「これまでは”Salesforceプラットフォーム上で見積もりまではやっていたが、注文処理は別のシステムでやっていた”というケースが多かったが、Revenue Cloudによりそういった分断を防ぐことができる。また、見積もりにおいても多段階の価格設定をブラックボックス化することなくすべて可視化しており、顧客とすぐに価格について議論でき、外販パートナーによる勝手な割引販売なども防ぐことができる」(平川氏)

セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマネジメント シニアマネージャー 平川武雄氏

 なお、Revenue Cloudの国内提供は7月1日付けで開始しており、価格は月額2万4000円/ユーザーとなっている。