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「HANAと全面統合」の意味するところは? SAPの新生ビジネススイート「S/4HANA」
(2015/2/6 19:19)
SAPジャパン株式会社は6日、新ビジネススイート「SAP Business Suite 4 SAP HANA(以下、S/4HANA)」を発表した。「SAP HANA」を基盤に、同社ビジネスアプリのコードを全面的に書き直した、まっさらな新製品となる。
同社は、2014年12月9日に「SAP Simple Finace」を発表した。「SAP Business Suite powered by SAP HANA(Suite on HANA)」に最適化(アドオンとして提供)され、HTML5ベースの新UI「SAP Fiori」で装いを新たにし、データ構造を根底から変えることで、処理の回数・頻度やパフォーマンスを様変わりさせるなど、同社の「HANAをすべての中心に据える」戦略の先触れとなった。
今回のS/4HANAは、この「SAP Simple Finace」と同様の取り組みを、CRM/ERP/PLM/SCMなどで構成される「SAP Business Suite」全体に採り入れるものとなり、上記戦略の1つの到達点といえる。
特徴はまず、HANAの上に全面構築された点だ。元々は他社製データベースでしか使えず、途中からHANAにも最適化したSuite on HANAが提供された前版とは違い、最初からHANAを前提に開発されたのがS/4HANAである。すなわち、S/4HANAのデータベースはHANA以外にはあり得ず、他社製データベースは対象外となる。代表取締役社長の福田譲氏によると「現在、SAP Business Suite新規ユーザーの82%が基盤にHANAを選んでいる」とのことだが、少なくとも、他社製データベースを採用する既存ユーザーは、データベースの移行について考える必要がある。ただし、既存のSAP Business Suiteもサポート期間を2025年まで延長することがコミットメントされており、それまでは既存ユーザーも今まで通り利用できる。
GUIはクライアント端末がスマートデバイス・PCのいずれであっても、Fioriで刷新された新しい画面となる。データ構造もSAP Simple Finaceと同様にシンプル化される。新しいデータ構造では、いままでのようにインデックスのような中間テーブルを作成・保持せずに、大元の明細データからすべての検索・分析処理が可能となる。中間テーブルありの場合は、その間でデータの照合や更新が発生するため、パフォーマンスの真価を発揮することはできなかった。新しいデータ構造では、データ量は1/10に、処理能力は3~7倍に向上するとのことで、SAPジャパンでもERPにおける2億5000万件の生データを使って、分析に常用しているという。
そのほか、ライセンスがサブスクリプションに変更されるのが大きなところだ。
同社ではこれを「最先端のデザイン理念に基づく設計を施した、HANAのみで実現しうる完全な新発想に基づくビジネススイート」と紹介している。
「SAP ERPの動作環境がHANAのみになる」というのはなかなかインパクトの大きい話だ。ただ、その予兆はSuite on HANAの発表時から確かにあった。そこでは「データベース処理は低速であることを前提に、データベースからアプリケーションにデータを渡してアプリケーション側で処理するのが常識だった。Suite on HANAではこの常識を覆して、SAP Business Suiteの処理の一部をデータベース側で実行(プッシュダウン)する。そのために、SAP Business SuiteもHANAに最適化して再設計」されていたのだ。これを突き詰めれば、SAP Business SuiteとHANAの結びつきが深まり、切っても切り離せない関係になるのは自明の理だろう。ただし、「ABAP(Advanced Business Application Programming)」はS/4HANAでもサポートされるとのこと。
気になるのは、既存ユーザーの反応だ。SAPジャパンでは2025年までのサポート延長に加え、「今後、パートナーとともにマイグレーションプログラムを提供していく」としている。その上で、82%がHANAを選んでいるという新規ユーザーへの訴求が第一候補となるようだ。