ニュース

SAPジャパン新社長就任から1年、今後は「経営変革につながる最新IT」をアピール

 SAPジャパン株式会社は4日、2014年7月28日に代表取締役社長に就任した福田譲氏の社長就任から1年が経過したことから、1年の総括、今後のビジネス方針を説明する記者会見を開いた。

 福田氏は「SAP自身がこの10年で相当変わっている」と述べ、ワールドワイドでSAPが大きな変革を続けていると説明。その中でSAPジャパンは、2015年度上半期(2015年1月~6月)はグローバルの92%増を上回る152%増をはじめ、ソフトウェアが35%増、トータル11%増と順調にビジネスを続けている。

 今後のフォーカスとしては、(1)Digital変革、IoT/Cloud、デザイン思考といったIT主導のInnovation、(2)Industry X LoB、経営課題の解決、グローバル化対応といったBusiness Valueフォーカス、(3)Cloud、platform、準大手/中堅向けビジネスの強化など投資拡大&人材育成を挙げている。

 「IT主導でビジネスモデル変革を促すような、経営にインパクトがあるアピールを強化する」(福田社長)方針だ。

SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏

上半期ではCloudが152%増

 福田社長は会見の冒頭、SAPグローバルでの事業ポートフォリオを説明した。SAPのもともとのビジネスであるERPをはじめとしたCore Applicationsの売り上げが40%、HANAを代表するPlatform事業が40%、残りがCloud Applications、企業と企業をつなぎそこに登録されたサプライヤを利用することで新しい場所でも即ビジネスを開始することを可能とするBusiness Networkの売り上げとなっている。

 「日本はワールドワイドに比べてCore Applicationsの比率が41%と若干高いものの、売り上げの半分以上がERP以外になっている。これは2007年にBusiness Objectsを買収以来、8年で3兆円かけてM&Aを進めてきたことによる成果。M&A戦略も、昨年Concurを買収したあたりで一巡し、必要なものがほぼそろった状況となっている」とM&AによりSAPのビジネスポートフォリオが、従来のERPベンダーとしてのイメージから大きく変わっていることを強調した。

 日本のビジネスはほかの国に比べオンプレミスのソフトウェアビジネスの比率が依然として高いものの、上半期ではCloudが152%増と大きな伸びとなっている。

 「海外に比べると母数が小さいという点は考慮しなければいけないものの、大きな伸びとなっている。グローバルでも中期経営計画の目標を超えてCloudが増加しており、昨年第4四半期あたりからSAPのCloud事業はトランジションに入ったと評されるようになった」と、Cloudの伸長が著しいことが特徴とした。

SAPの事業領域
ビジネス状況
クラウドビジネスが劇的な伸びを見せたという

5つの分野へフォーカス、その結果は?

 福田氏は社長就任会見において、(1)SAPジャパンのGLOCALIZATION、(2)Globalインダストリービジネスユニット、(3)ERPへの再フォーカス、(4)Cloud、(5)SAP HANA Platformという5つの分野へのフォーカスを挙げていた。

就任時に挙げた5つのフォーカスエリア

 (1)については、「グローバル化を行いながら、日本のお客さまの望むローカル化に対応する」ことを目指したもの。これを実現するために人材を強化し、新卒社員のうち営業担当は全世界で実施しているグローバル教育制度に6カ月間、米国に渡ってトレーニングを受けた。「前半が終わった段階では、教育担当者から日本の参加者は日本だけに固まり、発信が少ない。もう参加しなくていい!という厳しい意見をもらったものの、なぜ、この教育制度が必要なのか、あらためて伝えることなどで、後半では二皮も、三皮もむけるような成長を見せた」という。

 今年の新卒社員についても今月から半年、同じ研修に出向くことになっている。「新卒営業担当者は21人、全体で30人だが、欲しい人材を再定義した結果、半数が女性、半数が日本以外の大学出身、半数が日本人ではない人材となった」と述べ、SAPジャパン社員のグローバル化が進んでいることをアピールした。

 (2)のGlobalインダストリービジネスユニットでは、注力分野として公益事業統括本部が東京電力を挙げたほか、自動車産業統括本部では、ドイツで自動車担当15年のスタッフを日本に呼んで、本社直結で自動車業界を支援する体制を構築した。

SAPジャパンのグローバリゼーション
Globalインダストリービジネスユニット

 (3)のERPへの再フォーカスは、「これだけ長いことERPをアピールしてきたものの、日本のトップ企業のうち当社が取引しているのは半分にすぎない。日本ではまだERP市場を拡大する余地がある」との判断から、あらためてERP分野をアピールするというものだ。

 さらにCloud、HANA Platformによる変革を一層アピールすることを狙い、年次イベント「SAPPHIRE」には、前年の倍となる200人が参加して、HANAを活用することでテクノロジーだけではなく、ビジネスモデル変革につながる大きな革新を実現することをテクノロジーベースにアピールした。

 「HANAはAnalytical Platformからスタートしたが、その後、事前に用途ごとにテーブルを用意して計算を行うのではなく、直接データから必要なものを見つけ、計算することがリアルタイムで行える、といった高速さの強みを生かしている。これによって複雑になっていたITシステムがシンプル化した。OLTP型データベースは、決まった処理はできるものの、このスピードで在庫がなくなれば何日で在庫が切れるといった予測はできない。この弱点をカバーするのがHANA。処理と予測を同時に行うアプリケーションを作ることが可能で、未来予測型ITとして活用することができる」(福田氏)。

 SAP HANA Platformの技術者コミュニティも拡大し、認定技術者は1000人、従来のERPパートナーに加え、Platform/Cloud系パートナーとの連携もスタートしている。

 パートナー企業との協調も、EPR S/4HANAの早期対応パートナー5社、コンソーシアムパートナー21社と順調に推移し、日本独自のニーズ取り組みなどに寄与しているという。

 こうした取り組みを受け、福田社長の自身への採点は「70点といったところ。質、量か見て、ギリギリ合格といったところではないか。やらないといけないこと、やりたいことはまだいろいろとある」と合格点ではあるが、厳しめの採点となった。

SAP HANA Platformは、次世代ビジネス基盤へと順調な進化を遂げているという
技術者コミュニティも拡大している

 また昨年度の目標を受け現在フォーカスしているのが、(1)IT主導のイノベーション、(2)Business Value フォーカス、(3)投資拡大&人材育成の3点だ。

 福田社長就任以降、HANA Platformのアピールを行ってきた。ただし、これまではこうしたアピールがIT部門担当者にとどまっていたことから、「SAPのテクノロジーを活用することで、経営改革につながることを経営層にもアピールしてほしいという声があり、経営層へのアピールにつながるアピールを行う」という。

 IT主導のイノベーションでは、「やりたいことがあるのに、なぜ、それがITでできないのか?が課題となっていた。しかし、現在ではむしろできることは広がっているのに、われわれ側の想像の範囲が限定され、できることがとどまっている」とIT活用によって、従来とは全くことなる経営変革ができることをアピールする。

 Business Valueフォーカスについては、「日本はIT投資に予算がとられていない。工場投資とIT投資、どちらを選択しますか?というアピールを行いたい」とIT投資拡大が、ビジネス拡大につながることを本格的にアピールする。

 今年7月には経営層にフォーカスした招待制イベントを実施し、経営課題解決に最新テクノロジーが直結することをアピールした。「昨年年末、ユーザー会の参加者から、経営層に変化の必要性をアピールしてほしいというリクエストがあった。確かにこれまでは経営層へのアピールが足りなかった。今後は経営層にも理解できる、テクノロジー活用のメリットをアピールしていきたい」という。

3つのビジネスフォーカス

三浦 優子