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ERPに劇的な進化を、次世代会計ソリューション「SAP Simple Finance」

「データ構造」をシンプル化

佐々木直人氏

 SAPジャパン株式会社は9日、次世代の会計ソリューション「SAP Simple Finance」を発売した。「SAP ERP powered by HANA(以下、Suite on HANA)」のアドオンとして提供され、Suite on HANAを劇的に進化させる。

 SAPは現在、HANAネイティブのアプリケーション開発を推進。企業経営のシンプル化を支援するアプリケーション群「s-Innovations」として訴求している。

 SAP Simple Financeはその第一弾となるアプリケーションで、財務プロセスを圧倒的にシンプル化。Suite on HANAのアドオンという形で提供され、HANA上で稼働しているSAP ERPに適用することで、Suite on HANAの「データ構造」を根底から変える。

SAP Simple Financeは3つのアドオンで構成される

 従来のSuite on HANAのデータ構造では、大元の明細データを処理するため、集計・残高・インデックスといった中間テーブルを作成・保持する。中間テーブル間では常にデータの照合や更新が発生するため、HANAのインメモリ技術を持ってしても、無駄なデータボリュームやパフォーマンス劣化が発生していた。

 SAP Simple Financeを適用すると、中間テーブルを一切持たずに、大元の明細データから集計・分析すべての処理が可能になる。単一のデータソースを実現することで余計な照合作業を不要とし、テーブル間でのデータ更新も最小限に抑えられるのだ。

従来とSAP Simple Financeにおける、債務登録時に更新されるテーブルの違い
明細という単一のデータソースからすべての処理を実行

 これにより、財務会計と管理会計の一元的なデータ活用が可能になる。任意の切り口でオンデマンドな集計・分析も可能となる。たとえば「決算処理プロセス」を見てみると、「従来は期末に個別決算・連結決算を行っていたが、オンデマンドな集計・分析により、期中からタイムリーに状況を把握し、決算プロセスを前倒しすることが可能となるため、決算早期化、資金予測の即時化、不正監査の即時化が図られる」(IVE&ソリューション本部 クラウド/アプリケーションソリューションズ 経営ソリューションズ ディレクターの佐々木直人氏)という。

 SAPグループ自社導入事例では、余計な中間テーブルによるデータ重複が排除できたことで、7.1TBのデータベース容量を1.8TBに削減できた。また、会社間取引の照合時間を70%削減、四半期決算での処理時間を420時間短縮、グループ連結も含めた決算プロセスを8.5日で完了するなど、「ビジネスに貢献する会計」を実現できたという。

従来とSAP Simple Financeにおける、決算処理プロセスの違い
SAP Fioriの軽快なUXによる予測分析も可能

 SAP Simple Financeではこのほか、グループ資金管理のための新機能やERPに統合された新しい財務計画機能などもアドオンとして提供される。オプションで「SAP Fiori」の洗練されたUI/UXも利用が可能だ。

 オンプレミスとクラウドの両形態で提供。クラウドサービスはIaaS(ユーザーはSAP Simple FinanceとSAP HANAのライセンスを用意)、PaaS(ユーザーはSAP Simple Financeのみ用意)、SaaS(すべてサービスとして利用)の3種類を提供。クラウド基盤は「SAP HANA Enterprise Cloud」のほか、他社提供のマネージドクラウドなども選択でき、オンプレミスも含めたハイブリッドな環境での稼働をサポートしている。

 SAPジャパンは今後1年間で3桁の導入社数をめざす。

川島 弘之