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ネットアップ、「NetApp INSIGHT 2025」でAI時代のデータプラットフォーム戦略を強調

 ネットアップ合同会社は23日、2025年10月14日~16日に米NetAppが米国ラスベガスで開催した年次イベント「NetApp INSIGHT 2025」での発表内容などについて説明した。会期中には約20の新たな製品やサービスが発表されたほか、同社が推進するNetAppデータプラットフォーム戦略を通じ、AI時代において、より重要性が高まっているデータに対してネットアップが果たす役割などを明確にしてみせた。

 ネットアップ チーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏は、「あらゆるワークロードにおいてAIが不可欠になり、データがすべての変革の中心になっている。だが、企業インフラは、AIイノベーション、データインフラストラクチャ・モダナイゼーション、サイバーレジリエンス、クラウド・トランスフォーメーションといった4つの領域での課題を抱えている。それに応えるのが、ネットアップのミッションである。今回のNetApp INSIGHT 2025では、インテリジェント・データ・インフラストラクチャを実現するためのデータプラットフォームを発表し、これらの課題解決を実現することになる」と述べた。

ネットアップ チーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏
あらゆる変革には、インテリジェント・データ・インフラストラクチャが必要

 ネットアップが提供するデータプラットフォームは、ONTAPなどの製品群によって実現する「ユニファイドストレージ」、新たに発表したAI Data Engineを中核とした「データマネジメントサービス」、サブスクリプションサービスのKeystoneやコントロールプレーンのNetApp Console、エコシステムなどによる「インテリジェントエクスペリエンス」の3階層で構成する。

 ネットアップの神原氏は、「データプラットフォームが整備されないため、AIレディなデータが不足し、それが原因となり、2026年までに60%のAIプロジェクトが放棄されるといわれている。PoCまでは順調だったが、エンタープライズAIとして商用化するところでつまずくという話をよく聞く。AIプロジェクトは、実験段階を経て、業務で本番利用を行う段階に入っており、エンタープライズグレードの機能性が求められている。ネットアップの役割は、データをリアルタイムにAIに反映するとともに、セキュアであること、自動化によって運用効率を高めることになる」とした。

NetAppのデータプラットフォーム

 NetApp INSIGHT 2025では、特に「ユニファイドストレージ」と「データマネジメントサービス」において注目される製品が発表されている。

 「ユニファイドストレージ」では、NetApp AFXシリーズを発表した。FASシリーズ、AFFシリーズ、AFF Aシリーズに続く第4の製品群といえるもので、高度なAIワークロード向けに設計されたエンタープライズグレードのディスアグリゲーテッド型オールフラッシュストレージシステムとなっている。AI時代の新たなデータインフラストラクチャと位置づけた。

 「AI向けにハードウェアアーキテクチャを見直した。これまでは信頼性を重視してきたが、それに加えて、拡張性をより重視したものになる。ストレージコントローラとSSDディスクシェルフをN:Nのメッシュ構成とし、性能と容量を独立して拡張できるようにしている」という。

 NetApp AFXシリーズは、AIファクトリーの強力なデータ基盤として機能し、NVIDIA DGX SuperPODスーパー コンピューティングの認定ストレージでもある。データコンピュータノードにはGPUを搭載している。最大128ノードまで拡張が可能で、スループットは毎秒4TB、データセット容量は1EB以上、ランサムウェア検出率は99%以上となっている。

 対象はハイパースケーラーだけでなく、サービスプロバイダーや研究機関を持つ大手企業、AIモデルを活用するゲームソフトウェア企業などとしている。

NetApp AFX AI Data Platform
NetApp AFX ハードウェア:Disaggregated Storage Architecture

 「データマネジメントサービス」では、AIをシンプル、手ごろ、安全にするために設計した包括的なAIデータサービスと位置づけるNetApp AI Data Engine(AIDE)を発表している。

 「AIモデルを構築する際にはデータが不可欠であり、データを収集し、準備し、学習させ、展開し、そのフィードバックを行うデータパイプラインをスムーズに機能させることが大切である。だが、実際には、平均して7回以上のデータコピーと移動が発生している。PoCではデータ量が少ないため、7回コピーしてもいいが、商用化する際にはペタバイトクラスのデータが必要になり、かかる工数、コスト、時間も膨大になる。さらに、コピーするたびにアクセス権管理を行う必要があるため、作業は煩雑化している。また、平均13種類以上のソフトウェアツールが利用され、ここでも複雑性が高まっている」と指摘。

 「その結果、一般的なAIプロジェクトでは、データの準備作業に81%の工数が割かれ、データ分析と学習には19%の工数しかかけることができない。週5日間のうち、4日間はデータをコピーする作業に追われ、優秀なデータサイエンティストが本来の仕事にかかわれていないのが実態である」と課題を示した。

 AI Data Engineにより、データの編成、ガバナンス、変換、ライフサイクルを一括して効率的に管理。AI開発プロセスにおけるデータパイプラインを高いレベルで実現できる。データ変更の自動検出や同期を行い、冗長なコピーを排除。常に最新データを維持する。さらに、組み込みのガードレールがAIライフサイクル全体を通じてデータに適用され、セキュリティとプライバシーを確保する。

 具体的には、ハイブリッド/マルチクラウド環境に対応し、データの発見と理解を行う「META DATA ENGINE」、ソースデータの変更を自動的に検出して反映することで、データを最新に維持する「DATA SYNC」、データのライフサイクル全体にガードレールを提供し、データをセキュアに展開する「DATA GUARDRAILS」、データをAIアプリから利用可能にするために、データを変換する「DATA CURATOR」の機能を提供。シンプルでセキュアなデータパイプラインを実現するという。

 また、AIDEは、NetApp AFX DX50のデータコントロールノード上のAFXクラスター内でネイティブに稼働。今後は、NVIDIA RTX PRO Servers(RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPU搭載)との統合も予定している。

 「NVIDIA AI Data Platformリファレンスデザインを活用しており、ベクトル化と検索拡張を実現。高度な圧縮、迅速なセマンティック検索、ポリシー駆動型の安全なワークフローを提供する。データの取り込みや前処理から、生成AIアプリへの提供までを一貫して支援する。シンプル、セキュリティ、効率性を備え、顧客のAI活用を加速できる」とした。

AI Data Engine
NetApp AFX DX50 Data Compute Node

 もうひとつ注目された発表が、ハイブリッド/マルチクラウド環境で、柔軟なデータモビリティにより、ネットアップが目指していたデータファブリック環境を実現したことだ。

 パブリッククラウドサービスとして展開されているONTAPベースのクラウドストレージサービスのすべてで、リモートキャッシング機能のFlexCacheや、レプリケーション機能のSnapMirrorが対応。Amazon Web Services(AWS)およびGoogle Cloudはすでに利用でき、Microsoft Azureは2025年中に利用可能になる。

 「ネットアップが約10年前に宣言したデータファブリックの完成形が実現できたといえる。データがどこにあっても移動させることなく、キャッシュデータで利用したり、データへのアクセス権を変更せずに管理できたりといった機能も提供している。法人ユーザー以外にも、AIサービスを提供している企業やソフトウェア開発企業、SaaS提供ベンダーなどからも注目を集めている」という。

ハイブリッドマルチクラウド環境での柔軟なデータモビリティの実現

 また、Microsoft 365 CopilotとNetAppストレージを連携するNetApp Neo Copilot Connectorを進化させ、ChatGPTと自社データを組み合わせて、プライベートAI環境を構築。データへのアクセス制御のほか、CUDA処理によって、大規模で複雑な文書から高精度に情報を抽出することで、Copilot応答の品質を最大化することができる。第1世代に比べて40倍の抽出速度を実現したという。

NetApp Neo Copilot Connector

 さらに、AI-Ready Partnership with Microsoftは、Microsoft AI関連サービスと、より緊密な連携を可能にするもので、データを移動せずに、MicrosoftのAIサービスと連携。Azure NetApp Filesの堅牢なセキュリティプロトコルによって、機密情報をセキュアに保護した上で、Microsoft FabricやAzure Databricks、Azure AIサービスと組み合わせた活用が可能になる。

AI-Ready Partnership with Microsoft

 一方、次世代のNetAppデータプラットフォーム戦略についても言及した。

 ネットアップでは、「ユニファイドストレージ」から、「ユニファイドデータモデル」への進化を打ち出し、「メタデータファブリックコンセプト」を発表。ユニファイドデータストレージ、データマネジメントサービスに加えて、メタデータエンジンを活用し、統合管理されたグローバルメタデータネームスペースを確保する。これにより、データコミュニティ、MCPおよびA2Aへの対応、MLOpsやAgent Opsへの対応を図る。さらに、AWSやGoogle Cloud、Azure、オンプレミスなどと連携しながら、ナレッジグラフの実現の鍵となるメタデータエンティティの相互関連性を統合的に管理できるようになるという。

 ネットアップの神原氏は、「次世代のNetAppデータプラットフォーム戦略により、AIスタックは、よりシンプルになる。NetApp INSIGHT 2025での発表を通じて、ネットアップのAI時代への向きあい方が整理され、わり明確になった」と総括している。

NetApp Data Platformによりシンプル化されるAIスタック