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ネットアップの斉藤新社長が会見、「今後3年間で国内市場シェアぶっちぎりのナンバーワンを目指す」
Intelligent Data Infrastructure実現に向けたデータインフラメーカーへのシフトを推進
2025年10月1日 11:54
ネットアップ合同会社(NetApp)は9月30日、日本における事業戦略について説明。6月16日に社長に就任した斉藤千春氏は、「2026年度(2025年3月~2026年2月)は、ネットアップが推進するコンセプト『Intelligent Data Infrastructure』を展開する1年であり、それが私のミッションである」と述べ、「Intelligent Data Infrastructureを広げることで、日本を元気にする。今後3年間で、国内市場シェアでぶっちぎりのナンバーワンを目指す。それを実現できる手応えがある」と宣言した。
ネットアップは、2025年第2四半期(2025年4月~6月)の国内オープンネットワークストレージ市場において、13.4%のシェアを獲得し、僅差ではあるが首位となっている。
また、会長に就任した前社長の中島シハブ・ドゥグラ氏は、「ネットアップは、データとインテリジェンスの時代に突入したと発表した。そのための理想のデータ基盤としてIntelligent Data Infrastructureを提供し、2025年度は、これを実現する革新的な技術と製品を次々と発表した。日本市場向けには、毎月のように新製品を発表することができている。製品ポートフォリオの拡大によって、セキュリティ、モダナイズ、AIといった顧客ニーズに対応している」などと語った。
斉藤社長は、IT業界で30年以上の経験を持ち、日本ヒューレット・パッカードに22年間在籍し、製造業や通信事業者などを担当したのちに、ストレージ部門のゼネラルマネージャーなどを歴任。2015年に日本オラクルに入社し、2020年に執行役員に就任した。直近まで、同社でクラウドシステム事業統括 統括本部長を務め、Exadata事業などを指揮していた。
斉藤社長が掲げた同社2026年度の事業戦略のキーポイントは、「カスタマーサクセス」、「伴走型アプローチ」、「データインフラメーカー」の3点である。
「カスタマーサクセス」では、ネットアップが持つ97%という高い顧客評価をベースに、顧客の成功やAI導入を支援する体制をさらに強化。「顧客評価は業界平均に比べて1.5倍高い。AIの利活用を成功に導くために、製品や技術を導入して終わるのではなく、継続的に改善していくことが重要である。これを顧客やパートナーとともに取り組んでいく」とした。
同社では、パートナービジネスチームを刷新し、国内パートナー企業との戦略的ビジネスプランを策定。「ネットアップの実行力として届けていく」と述べた。
「伴走型アプローチ」では、Intelligent Data Infrastructureを具体化するために、顧客の歩みに合わせて共創する姿勢を強調。「インフラの世界でも、顧客と一緒に進めていく伴走型のアプローチが求められている。ネットアップでは、それに向けて、SEおよび営業が一体となり、顧客に向き合う体制を構築する。Intelligent Data Infrastructureを通じて、インテリジェンス技術を活用して、現場の生産性を向上させる」とした。
「データインフラメーカー」としての取り組みでは、ストレージハードウェアメーカーから、データインフラストラクチャメーカーへのシフトを標榜。
さらに、「ネットアップの各ポートフォリオは、Intelligent Data Infrastructureを構成するためのパーツとなり、顧客ごとの要望に応じたデータインフラストラクチャを一緒に作り上げることができる。これが今年度のネットアップのミッションであり、最重要テーマである」とし、「ネットアップはハードウェアメーカーとしてのイメージが強いが、このイメージを維持しながら、インテリジェントなデータインフラを提供するメーカーというイメージに進化させたい」と語った。企業へのインフラ導入を支援するIntelligent Data Infrastructure Experience Centerを強化し、国内専任チームを通じて、個別案件への対応を推進することも示した。
また、斉藤社長は、「企業においては、AI、クラウドトランスフォーメーション、サイバーレジリエンス、データインフラモダナイゼーションというデータに関わる4つの課題がある。AIを活用するためのデータプラットフォームの構築、ハイブリッドクラウド環境下でのデータの管理、サイバーセキュリティの強化と迅速に復旧できる環境の構築、老朽化したデータプラットフォームをAI時代に最適化していく必要がある」と指摘。
「2025年8月の調査では、日本企業の65%がAIを活用しており、今後の投資分野でもAIが最優先項目となっている。しかし、AIの成功には、データプラットフォームの整備が必須であり、AI先進国の米国では、AIプロジェクトが失敗した最大の要因として、データアクセス環境が整備できなかったことが挙げられている。失敗プロジェクトの85%で、データプラットフォームが未整備であった。この重要なポイントに、日本の企業やシステムインテグレータは気がついていない。調査結果からも、データプラットフォームには関心があるものの、投資の優先順位が低く、ここからもそれが裏づけられる。この状況を変えていくことが、ネットアップの国内における使命である」と語った。
一方、中島会長は、同社2025年度(2024年3月~2025年2月)を振り返り、「ネットアップの製品は多くの顧客から評価されている。グローバルの売上高は前年比5%増の66億ドル、純利益は同10%増の15億ドルとなり、過去最高を達成した。オールフラッシュ、Keystone、クラウドストレージの3つの分野では驚くべき成長を遂げた。この傾向は日本でもほぼ同じであり、戦略が正しいことが確信できた」と総括した。
ユーザー事例についても説明した。日本製薬では、VMwareの仮想化基盤を見直すとともに、データ基盤も刷新して高速なデータアクセスを実現。京都大学では、研究データ管理の高度化を目的にネットアップ製品を採用した。
またNTTデータでは、大規模機械学習向け基盤提供サービスにネットアップのデータインフラストラクチャを採用したという。さらに、次世代に向けた先進プロジェクトにも取り組んでおり、具体的な事例として、NTTのIOWNグローバルプロジェクトへの参画や、山口大学の衛星インターネットサービスを活用したストレージデータアクセスの実証実験に取り組んだことを示した。
説明会では、パートナーの1社である三谷産業によるネットアップ製品への取り組みについても触れた。同社は石川県金沢市に本社を持つ創業97年の歴史を持つ企業で、情報システム事業は1966年から開始。北陸地域密着や業種密着型のICTソリューションの提供、独自開発のグループウェアであるPOWER EGG 3.0の販売のほか、データセンター事業も行っている。2007年から、ネットアップのONTAP製品の取り扱いを開始している。
三谷産業 取締役 DX推進担当の深堀俊彰氏は、「地域企業では、IT人材やセキュリティ人材が不足しており、ネットアップはこうした課題を解決できる技術を持っている。ネットアップでは、バックアップやDRサイト構築、セキュリティなど、顧客のデータの可用性を高めるための技術や製品をワンストップで提供できる。また、データインフラの再構築に向けた攻めのソリューションだけでなく、データを守るソリューションも提供している。社会課題である労働人口の減少や、IT人材不足といった課題に対して、技術で担保された解決策を持っている。今後、顧客とともに、データ活用やAI活用では、地域を盛り上げたい」と語った。