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ネットアップが2024年度事業戦略を発表、“4つのS”を実現するソリューション群を展開
ONTAPの新しいライセンスモデルや保証プログラムなども
2023年7月28日 06:00
米NetAppの日本法人であるネットアップ合同会社は、日本における2024年度事業戦略についての発表会を7月27日に開催した。
ハイブリッドマルチクラウドによるデータの複雑化を顧客の課題として、「4つの“S”」を提供することが語られ、そのための製品やサービスのソリューション群が紹介された。
NetAppは「4つの“S”の価値を提供する」
事業戦略については、ネットアップ合同会社 代表執行役員社長の中島シハブ ドゥグラ氏が説明した。ちなみに、今年は日本法人設立25周年となる。
中島氏は、現在の企業ITは、データ、クラウド、AIの3つのトレンドの交差点にあると説明。生成されるデータがますます多様化し、複数のクラウドや地域にまたがって存在していると語った。NetAppが4月に公表した調査レポートでも、企業がクラウドとデータの複雑さに影響を受けて、ITパフォーマンスの低下や、収益の損失、ビジネスの成長への障害につながっている可能性があると述べている。
これを受けて中島氏は「誰もがシンプルさを求めている」と語った。
NetAppが顧客の課題をどのように解決しようとしているかについて、中島氏は「4つの“S”の価値を提供する」と語った。
1つめは「Savings(コスト削減)」。ハイブリッド・マルチクラウドにおいて、あらゆるポイントとデータライフサイクル全体におけるデータ管理のコストを最適化するという。
2つめは「Simplicity(シンプリシティ)」。インフラの統合、簡素化、自動化における最先端の技術を提供するという。
3つめは「Security(セキュリティ)」。ランサムウェア対策や災害対策において、データ保護と回復性をこれまで以上に迅速かつ確実なものに高めるという。
4つめは「Sustainability(サステナビリティ)」データインフラの効率性を高め、顧客のサステナビリティの目標を達成する支援を提供するという。また、データが確実に消去されていることを第三者機関に証明してもらい、顧客の安心と機材の無駄な廃棄を減らすことを両立していることも中島氏は説明した。
NetAppの事業は、主に「ストレージとデータファブリック」と「クラウドオペレーション」の2つからなる。中島氏は、NetAppのさまざまなソリューションのうち、「ストレージとデータファブリック」からは、マルチクラウドでの統合管理ツール「NetApp BlueXP」を紹介した。また、「クラウドオペレーション」からは、AI技術などを使ってクラウドのコスト最適化をはかる「Spot」を紹介した。
そのほか特徴的なものとして、サブスクリプション型ストレージサービス「NetApp Keystone」も中島氏は紹介した。クラウドサービスのようにオンプレミスでもNetAppのストレージ製品をサブスクリプション型で利用するものだ。氏はNetApp Keystoneについて、案件が昨年度比で約3倍に、パートナー数が昨年度比で約2倍に拡大していると語った。
さらに「お客さまとパートナーは重要」と中島氏は語り、顧客向けの保証プログラム「NetApp Advance」(後述)と、新しいパートナープログラム「Paretnet Sphere」についても触れた。
そのパートナーの中から、NVIDIAの日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝氏がビデオメッセージで登場。「AI導入にともなう複雑さや、セキュリティなどの課題について、NVIDIAとNetAppが協業して実効性のあるインフラについて取り組んできた」と語った。
「4つの“S”」を同時に実現するソリューション群
最新の製品やテクノロジーについては、ネットアップ合同会社 チーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏が説明した。
神原氏はまず、中島氏も挙げたNetAppの事業領域の図を示して、主な製品ポートフォリオを紹介した。
「ストレージとデータファブリック」には、オンプレミスのデータストレージハードウェアと、クラウド上のデータストレージがある。これは、効率的かつセキュアにデータを格納していくのに加えて、相互にシームレスに連携してハイブリッドストレージとして機能するという。
さらにこの領域では、バックアップを取ったり、アクセス権などの管理ポリシーをきちんと設定したりといったことデータサービスが必要となる。これをハイブリッドクラウドの中できちんと一括して設定できるツールとして、NetApp BlueXPを神原氏は紹介した。
もう一方の「クラウドオペレーション」については、中島氏はあらためて「Spot」ブランドを紹介。「複雑化し煩雑化しているクラウドオペレーションを、AIを使って効率化、シンプルにしていく。それにより、コスト削減、可視化、マネージドサービスを提供する」と説明した。
キャパシティフラッシュ製品「Cシリーズ」と、オールフラッシュSAN「ASAシリーズ」
以後の氏の説明は「ストレージとデータファブリック」中心となる。
神原氏はNetAppのデータストレージ製品のポイントとして、前述の「4つの“S”」を個別ではなく同時に実現することを挙げた。
まずは最新のオールフラッシュのデータストレージ製品について。業界でオールフラッシュストレージ製品が、高価で高速な製品と、低コストなSSD&HDDハイブリッドストレージに2極化していたところに、NetAppはその間に位置するキャパシティフラッシュ製品「AFF Cシリーズ」を出した。CシリーズはQLCフラッシュメモリを採用することで低コストで記憶容量を増加させた。「すべてのお客さまに対して、オールフラッシュは高いという固定概念を覆す」と神原氏は説明した。
さらに、SANに特化したオールフラッシュストレージ「ASAシリーズ」も、6月に新発表した。「従来は業務システムを人間が操作していたが、既存のシステムとクラウドが融合すると、データ連携や自動化などによってトランザクション数がこれまでの比較にならないぐらい増える」とその意義を神原氏は説明した。
この以前からの2種類と、新しい2種類のストレージを、すべてストレージOSのONTAPによる操作で統一するというのもNetAppの特徴だ。
これらの製品について、「4つの“S”」のうち複数項目を同時に実現するポイントを神原氏は説明した。
まず、Cシリーズは、コスト削減+サステナビリティを実現するという。フラッシュの高速性と、ONTAPのストレージ効率化技術により、2.5ラック必要だったものを2Uサイズに削減。それにより消費電力を削減し、CO2削減にもつながる。
また、ASAシリーズは、ミッションクリティカルに求められる99.9999%の高可用性をミッドレンジで実現。それにより、コスト削減や安全性、サステナビリティを実現する。
データサービスの分野では、2022年に発表された「NetApp BlueXP」について神原氏は説明した。BlueXPは、クラウドやアーキテクチャの違いを抽象化して一元管理できる統合管理コンソールだ。
神原氏はデモ動画で説明した。IT専門家でなくても使えるようGUIのドラッグ&ドロップで操作できる。ランサムウェア対策もワンクリックででき、そこから分析にもつなげられるという。
全部入りのライセンスモデルを新発表、保証プログラムにも新サービスを追加
そのほか、ONTAPの新しいライセンスモデル「ONTAP One」についても、神原氏は新発表として取り上げた。これはすべての機能を包含した単一のライセンスモデルだ。
なお、ONTAP Oneは先行してCシリーズでも利用できた。今回は、新しい機種だけでなく、すでに使っている機種でもバージョンアップによって対応するという形で新発表となったとのことだった。
また、顧客向けの保証プログラム「NetAdvance」についても、3点の保証サービスが新発表された。
まずは「ストレージライフサイクルプログラム」。これは、契約更新して新しいコントローラにアップグレードするときに、それまで使っていたコントローラを下取りして新しいコントローラに交換できるものだ。
また「ランサムウェアリカバリ保証プログラム」は、ランサムウェア対策のプロフェッショナルサービスや、管理者でも削除できない「耐タンパ性スナップショット」の機能を提供する。さらに万一被害を受けた場合にはストレージ製品の料金を補償するとのことで、「ポイントは、それぐらい自信を持っているということ」と神原氏はコメントした。
さらに、「99.9999%データ可用性プログラム」は、データ可用性を保証するもの。ツールを使って稼働状況をモニタリングし、可用性の基準を満たせなかった場合は金銭的に補償する。
NVIDIAとともにAIプラットフォームのリファレンスアーキテクチャに取り組む
そのほか、NetAppストレージ関連ソリューションのユースケースの1つとして、神原氏はAIを取り上げた。
NetAppでは、AIの精度を高めるためのプラットフォームとして、フィードバックループをスムーズに行うための、エッジ、コア、クラウドという全体の流れに着目したリファレンスアーキテクチャ「NetApp Data Pipeline」を持っている。その中では、AI開発に必要となるさまざまなツールもNetAppが提供しているという。
このアーキテクチャにもとづき、NVIDIAとながらく協業していると神原氏。協業の最初の成果は2018年のコンバージドインフラ「NetApp ONTAP AI」だ。
そして今回は「この協業をさらに高めて、AIをプロダクション環境で利用できるための堅牢性、セキュリティ、信頼性を得られるよう、NVIDIAのAIパイプラインの取り組みに参画することを決定した」と神原氏は語った。