ニュース

ネットアップ、30以上の新製品・新技術を国内にも順次投入へ “インテリジェントなデータインフラ”を推進

2025年度事業戦略発表会を開催

 ネットアップ合同会社は、2025年度事業戦略についての発表会を7月30日に開催。NetAppが2023年秋から掲げる新しいビジョン「インテリジェントなデータインフラストラクチャ(Intelligent Data Infrastructure)」と、それを実現する要素となる一連の新製品や新技術について、国内で発表した。

 「インテリジェントなデータインフラストラクチャ」は、従来同社が掲げていた「データファブリック」の発展形といえるもので、AIなどのインテリジェントなアプリケーションへの対応や、データインフラへのインテリジェントな技術の採用などを特徴とするという。

「インテリジェントなデータインフラストラクチャ(Intelligent Data Infrastructure)」
ネットアップ合同会社の代表執行役員社長の中島シハブ ドゥグラ氏(左)とチーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏(右)

インテリジェントなデータインフラストラクチャの日本での施策

 ネットアップ合同会社の代表執行役員社長の中島シハブ ドゥグラ氏は、NetAppが2023年に9カ国の企業にAIの進行状況を調査した結果として、グローバルの49%が進行中なのに対して日本は19%という数字を紹介。「少ないように見えるが、大きな成長の可能性を持っていると考えている」と語った。

 またAIを活用するための企業のITへの課題としては、サイバー攻撃などのセキュリティ脅威が最も多く挙げられ、次にデータのサイロ化によりデータサイエンティストが必要なデータにアクセスできないことが、そしてAIが難しくどこから学べばいいかわからないことが挙げられたという。

ネットアップ合同会社の代表執行役員社長の中島シハブ ドゥグラ氏
AIを活用するための企業のITへの課題

 そのために新しいインフラが必要であるとしてNetAppが掲げるのが、「インテリジェントなデータインフラストラクチャ」だ。

 その日本での具体的な方策として中島氏は、「新製品の国内市場への投入」「インテリジェントなデータインフラストラクチャを理解してもらうための施策」「パートナー戦略」の3つを挙げた。

 新製品としては、インテリジェントなデータインフラストラクチャを実現するものとして、今年に入ってから新製品や新技術を30以上発表した。国内でも、すでに一部の顧客と先行技術検証を行っているという。「NetAppの歴史を見ても、これほど多くの製品を一度にリリースしたことはない」と中島氏は語る。その内容については、後述する神原氏のパートで紹介する。

 理解してもらうための施策としては、日本のオフィスに「Intelligent Data Infrastructure Experience Center」を設けた。体験型の技術ワークショップを開催するほか、ハイブリッドマルチクラウド環境を構築できるPoCラボ設備を設けている。

 またパートナーについては、400社以上の国内パートナー企業と5000人を超える技術者コミュニティが、ネットアップのSEと日々交流して技術を広げているという。

今年に入ってから新製品や新技術を30以上発表
「Intelligent Data Infrastructure Experience Center」を新設
パートナー企業とともにインテリジェントなデータインフラストラクチャを推進

 中島氏はNetAppのインテリジェントなデータインフラストラクチャにより、サイバーレジリエンスやデータサイロ解消などを企業にもたらし、AIの導入を加速することで、「お客さまをビジネスチャンピオンにする」と述べた。そして、「データはAIの燃料。そのデータという燃料を与えるのがNetApp(Data Fuels AI, NetApp Fuels Data)」と語った。

今年発表された30件から新製品や新技術を紹介

 技術戦略や、新発表された製品や技術については、ネットアップ合同会社のチーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏が解説した。

 神原氏は米NetAppによる、企業がストレージやデータ管理のベンダーの選定で何を重視するかのアンケート調査から、上位の「あらゆる環境でデータが柔軟に利用できること」「続いてセキュリティ、性能向上、運用自動化」「データをさまざまなアプリケーションから利用できること」の3つを紹介。そしてそれぞれを、「Any data, Workload & Place」「Adaptive Data Management & Operations」「Expansive Ecosystem」という、インテリジェントなデータインフラストラクチャの3つの要素に関連づけた。

 「NetAppは、この3つの要素をお客さまが同時に実現できるような技術と製品を提供していきたいということで、インテリジェントなデータインフラストラクチャを発表した」と神原氏。それにひもづいたNetAppの製品ポートフォリオも、一見、今までと変わらないが、インテリジェントなデータインフラストラクチャのビジョンを実現するために大きく強化・拡張されていると語った。

ネットアップ合同会社のチーフ テクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏
インテリジェントなデータインフラストラクチャの3要素
製品ポートフォリオ

ストレージ製品:オールフラッシュストレージ製品のNetApp AFF Aシリーズの新製品など

 神原氏は、中島氏も触れた30以上の新製品や新技術の中からいくつかピックアップし、それを、ストレージ製品、セキュリティ、AIリファレンスアーキテクチャの3分野にわけて解説した。

 まず、オールフラッシュストレージ製品のフラグシップとなるNetApp AFF Aシリーズの新製品「AFF A1K」「AFF A90」「AFF A70」をリリースした。特徴づけるキーワードは、「パワフル、インテリジェンス、セキュア」だという。

 特にパワフルの面では、同じポジショニングの従来モデルと比較して最大2倍の性能を実現し、最大4,000万IOPSや、最大転送速度1TB/秒のスループットを出す。神原氏によると、これを実現したのはインテリジェンス技術にもとづいたハードウェアオフロード技術によるものだという。さらに、ストレージOSのONTAPも進化し、格納効率とパフォーマンスのトレードオフを解消して両方とも向上。IOPSのコストを最大50%削減、実効容量あたりのコストを最大35%削減するという。

オールフラッシュストレージのフラグシップモデルの新製品「AFF A1K」「AFF A90」「AFF A70」
AFF Aシリーズ新製品の性能向上
AFF Aシリーズ新製品のプライスパフォーマンス

 また、パブリッククラウド上のストレージサービス「Amazon FSx for NetApp ONTAP」も第2世代となり、大幅に性能を向上。さらに、最大12 HAペア(24ノード)まで動的に拡張できるようになった。

「Amazon FSx for NetApp ONTAP」が第2世代に

セキュリティ:ランサムウェア検出機能の強化など

 セキュリティの分野ではまず、各種のデータセキュリティ認証を取得していることに加え、新しい取り組みとして、CISAが主導するSecure by Designイニシアティブに最初から参加していると神原氏は紹介した。

CISAが主導するSecure by Designイニシアティブに最初から参加

 NetAppストレージのONTAPに組み込まれたランサムウェア検出機能、Autonomous Ransomware Protectionが強化された。AIエンジンの精度を高めることで、99%以上の精度でランサムウェアを検出するという。また、従来は設置した企業での学習期間が必要だったが、学習期間なしに導入直後から検出できるようになった。そのデータも自動更新により常に最新化される。既存のONTAPのユーザーも、バージョンアップにより利用可能。

ランサムウェア検出機能の強化
デモ:BlueXPのダッシュボードの「Alerts」にランサムウェアの検出が表示された
デモ:疑わしいファイルの種類の表示
デモ:感染前のスナップショットを選択して復元

 Cyber Vault Solution Reference Architectureは、ランサムウェアに対するONTAPの新しいデータ保護方式だ。外部バックアップは安心感が高いが手間がかかり、ストレージを二重化するとデータコピーは簡単だがランサムウェアに遭遇すると両方被害を受ける、というジレンマを解消するものだという。そこで、セカンダリストレージを管理者も改変や消去できないWORMストレージにし、プライマリとセカンダリで管理者権限を独立させて複数管理者の合意がないと操作できないようにするとのことだった。

Cyber Vault Solution Reference Architecture

AIリファレンスアーキテクチャ:生成AIチャットボット向けRAGリファレンスアーキテクチャなど

 AIリファレンスアーキテクチャの分野については、まず、AI開発プラットフォームのリファレンス構成として、AIデータセンター向けの「NVIDIA DGX SuperPOD with NetApp」をアップデート。さらに、それよりは小規模なエンタープライズ向けに「NetApp AIPod」を発表した。

AI開発プラットフォームのリファレンス構成

 また、生成AIチャットボット向けRAGリファレンスアーキテクチャ「NetApp GenAI Toolkit」を発表した。これは、RAG(検索と生成AIを組み合わせる手法)を使い、NetAppストレージ上にある社内情報にもとづいて回答する生成AIチャットボットを作るリファレンス実装だ。生成AIの部分はGoogle CloudのVertex AIとAzure OpenAIに対応。現在はプレビューリリース段階だが、GitHubで公開している。

生成AIチャットボット向けRAGリファレンスアーキテクチャ「NetApp GenAI Toolkit」
デモ:ナレッジベース検索と組み合わせないと「Amazon FSx for NetApp」についての質問に答えられない
デモ:データソースを追加する
デモ:「Amazon FSx for NetApp」についての質問に回答が返った

 そのほか、「NetApp BlueXP Workload Factory」は、「Amazon FSx for NetApp ONTAP」において、クラウド上のリソースの計画や設定管理を自動化するためのリファレンスアーキテクチャ。展開時間やコスト、パフォーマンス、リソースの保護を最適化できるという。無償で提供される。

NetApp BlueXP Workload Factory