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日本マイクロソフト・津坂美樹社長、2025年度の事業方針を生成AIやセキュリティ、リスキリングの観点から説明

日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏

 日本マイクロソフト株式会社は26日、2024年7月から始まった同社2025年度(2024年7月~2025年6月)の事業方針について説明。日本マイクロソフトの津坂美樹社長は、「セキュリティへのコミットメントをより強化し、投資を推進するほか、Copilotの拡充とAIソリューションの組み合わせによるトータルデザインの提供、AI時代を切り開くスキリングの提供によって、日本の社会に貢献していく」との方針を示した。

 また、「2023年2月に社長に就任した際に、日本マイクロソフトは、あなたのCopilot(副操縦士)として、個人や企業、日本の成長を支え、加速することを掲げた。この姿勢はこれからも変わらない」と述べた。

FY25に向けて

 津坂社長は、2025年度の取り組みについて、「生成AI」、「セキュリティ」、「リスキリング」の3点から説明した。

 マイクロソフトの生成AI戦略では、2023年2月に、米Microsoftのサティア・ナデラCEOが、「Microsoftのあらゆる製品に、製品を一変させるようなAI機能を搭載していく」と発表してから約1年半を経過。Copilot for Microsoft 365、GitHub Copilotなどを提供してきたことを紹介。さらに、Azure AI Services、インフラ、ハードウェアとサービス、データセンターといったエコシステムとしてAIプラットフォームを提供していることも示した。

 Copilot+PCについては、「ハードウェアのなかにAIが入り、いままでにないパワーを持ったPCになる。ぜひこれを体験してもらいたい」と述べた。津坂社長は、先週、手元に自分が利用するためのCopilot+PCが届き、これからセッティングを行うところだという。

Copilot+PC

 なお説明会では、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パートナー事業本部長の浅野智氏が、「日本マイクロソフト社内では、Copilotを活用することを『コパ活』と呼んでいる。パートナーとともこれを広げていきたい」と発言した。

 セキュリティへのコミットメントでは、「生成AIを活用する際には、責任あるAIによって、安心、安全を提供することが不可欠である。マイクロソフトでは、生成AI元年が訪れる前から、AIに関して、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、包括性、透明性、説明責任を果たしてきた。数百人の社員が『責任あるAI』のためにだけに仕事をしている」と語ったほか、昨今の取り組みのひとつとして、「Secure Future Initiative(SFI)」に言及。「SFIでは、AIを使う際に、設計としての安全性、既定設定での安全性、安全な運用の3点を前提とすることに取り組んでいる」と述べた。

責任あるAIの取り組み
Secure Future Initiative(SFI)

 日本においては、金融、通信/サービス、政府/自治体/教育機関、製造/IT、スタートアップなど、数多くの企業がマイクロソフトのAIを採用していることを紹介。日立製作所と発表した生成AIにおける包括的な提携を通じて、日立のLumadaを活用しながら、生成AIによって、社会イノベーションを加速する体制を整えたことにも触れた。

日立とマイクロソフトの取り組み

 AI時代を切り開くスキリングにおいては、派遣社員や学生など、約5000人の女性を対象に、テクノロジー領域におけるスキルアップを目指す「Code; Without Barriers(CWB)」を開始。女性開発者の育成などを進め、女性の正規雇用や転職、起業などを支援しているという。2024年5月にスタートし、2024年秋には第1期生が卒業することになる。

 なおMicrosoftでは、2024年4月に、国内のAIおよびクラウド基盤増強に、今後2年間で4400億円を投資することを発表。同時に、国内300万人のリスキリングを通じたAI活用の底上げを発表している。また、マイクロソフトリサーチの日本初となる拠点を今年秋に設置したり、サイバーセキュリティでの日本政府と連携したりすることも発表している。

日本経済への貢献

 日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド & AI ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏は、「日本マイクロソフトのAI戦略は、『AIを使う』、『AIを創る』、『より安全なAI』の3点から取り組んでいる」と述べた。

日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド & AI ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏

 「AIを使う」という観点では、Microsoft Copilot Solutionsとして、AIの初回リリースから150以上の機能を追加し、ナレッジワーカーだけでなく、ソフトウェア開発者、市民開発者、営業やサービス部門、セキュリティ運用など、幅広く活用できる環境を提供していることを示した。「自分の業務にあったAI活用を、いち早く行えるようにしている」と述べた。

Microsoft Copilot Solutions

 また、Microsoft Copilotは、個人をサポートするAIアシスタントから、チームメンバーの一員として利用される状況へと進化。今後は、AIエージェントとして、ヘルスケアや財務などの専門知識を持ちながら、より複雑なタスクにも対応できるような存在になるとした。

 すでに、現在、全世界で5万3000社がAzure AIを利用しているほか、フォーチュン500社の60%近くがCopilot for Microsoft 365を利用。GitHub Copilotは180万人の開発者が利用しているという。

MicrosoftのAIの実績

 「AIを創る」では、Copilot Stackにより、自らの業務に最適化した生成AIソリューション開発を支援。Open AIとの戦略的パートナーシップを通じて、GPT-4oやGPT-4miniなどを、Azure Open AI Serviceを通じて利用できるようにしていること、MetaのLlama-3やMistral AIのMistral Large、NTTのtsuzumiなどの言語モデルを選択することができること、AIのアプリケーション開発を迅速に行うためのプラットフォームを提供していること、生成AI開発に最適化した環境を提供していることを強調した。

Copilot Stack

 「より安全なAI」では、先に触れたSFIへの取り組みに加えて、Azure AI Content Safetyにより、暴力的な表現などをフィルタリングして、生成AIを安全に利用するための環境を実現。今後は、各企業のAIポリシーに合致したカスタムフィルターを適用するカスタムカテゴリーや、不正アクセスを目的としたプロンプト攻撃を監視および検出するプロンプトシールド、根拠となるソースを検出する根拠性検出などの機能を新たに追加することになる。また、Copilot Copyright Commitmentでは、著作権侵害の心配がなく、生成AIを活用できたり、Microsoft Fabricにおいては、企業に散在しているデータをひとつのプラットフォームに収集し、生成AIの活用に生かしたりできることにも触れた。

Azure AI Content Safety
Copilot Copyright Commitment

 一方、津坂社長は、米Microsoftが7月中旬に、米国シアトルで、全世界の同社営業部門とパートナー部門を対象に、約6000人のマネージャー以上が参加する社員総会「MCAPS(Microsoft Customer and Partner Sales)Start」を開催し、そこに参加したことにも触れた。これだけ大規模な社員向けリアルイベントは、コロナ禍後では初めてだったという。

 同イベントで、米MicrosoftのナデラCEOは、2025年にMicrosoftが創業50周年を迎え、その間、何度も会社の姿が変化してきたこと、そして、AI時代は2年目を迎え、3年前にはないプロダクトを投入し、新たな製品を毎月のように出していることを強調したという。

 さらに、ナデラCEOが用いた過去1000年ごとのGDPの成長率の図表を示しながら、産業革命以降の技術革新によって、GDPが急成長し、昨今ではAIがGDPの成長を牽引していることを指摘。「これまでに一番大きなテクノロジー革命がやってきた。経済産業省の調べによると、日本において、生成AIがもたらす経済効果は、2025年には34兆円に達する。これは日本のGDPの6%となり、生成AIがないとこれだけの経済効果がなくなることになる。また、AIに100円を投資すると、3.5倍の投資効果が生まれ、これまで以上に短期間で成果をもたらすことができるようになる」などと述べた。

生成AIの経済効果