週刊海外テックWatch

「民主化」を語るAltman氏 社内文書が示した“本音”とは

 AIに対する暴力的な反発が現実のものとなった。4月10日未明、OpenAIのCEO、Sam Altman氏の自宅に火炎瓶が投げ込まれた。容疑者は、AIが人類を絶滅に追い込むと主張する「反AI」文書を携えていた。Altman氏はその夜、自身のブログで「AIの民主化」を主張した。ところが、その数日後、社内文書が外部に漏れた。その中には民主化とは似て非なる戦略が書かれており、OpenAIが置かれた複雑な立場を象徴しているようだ。

深夜の火炎瓶、そして「民主化」宣言

 「AIは民主化されなければならない。権力が過度に集中してはならない」。Altman氏が自身の個人ブログにそう書いたのは、4月10日の深夜だった。

 この日はAltman氏にとって忘れられない夜となった。同日午前3時45分ごろ、サンフランシスコのAltman氏宅に男が火炎瓶を投げつけた。Altman氏のブログによると、それは家屋に当たって跳ね返り、けが人はなかった。男はその後OpenAIの本社に向かい、「建物を燃やし、中にいる者を殺しに来た」と叫びながら椅子でガラス扉をたたき破ろうとした末、駆け付けた警察官に逮捕された。

 男はテキサス州出身のDaniel Alejandro Moreno-Gama容疑者(20歳)で、Wall Street Journalによると、逮捕時に携帯していた「反AI」文書には、複数のAI企業の取締役や経営幹部、投資家の名前と住所が記されており、「われわれの迫り来る絶滅について、もう少し言葉を」と題した一節にはAIの人類への脅威が書かれていた。連邦検察は、公共政策への影響を意図した犯行であれば国内テロ罪の適用も検討するとしている。

 冒頭のAltman氏のブログ投稿は、その襲撃の直後に書かれたものだ。「言葉には力がある。私はその力を過小評価していた」とAltman氏は記している。だが感情的な被害者の言葉よりも、むしろ冷静な原則論が目を引く。

 「民主化」に続けて、Altman氏は「AIは個人一人ひとりに力を与えるもの」であり、「ごく少数のAI研究所が、われわれの未来の姿に関する最も重大な決定を下すのは正しいことではないと考える」と書いている。

 さらに、「AGI(汎用人工知能)をコントロールする唯一の存在になろうとする、すべてを飲み込むような哲学こそが問題だ」とも述べ、技術を広く共有することが解決策だとした。