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パナソニックISと富士通に見る、プロセスマイニングを活用した業務プロセスの改善成果
Celonis Day Osaka 2024基調講演レポート
2024年12月4日 06:00
Celonis株式会社は3日、大阪・梅田のインターコンチネンタルホテル大阪で、「Celonis Day Osaka 2024」を開催した。同社が大阪でプライベートイベントを開催するのは、2023年に続いて2回目。Celonisのビジョンやプロセスマイニングに関する最新動向、国内ユーザー事例などについて紹介した。
同日午後2時から行われた基調講演では、パナソニックインフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)と富士通が、プロセスマイニングを活用した業務プロセスの改善成果などについて説明した。
パナソニックISでの活用事例
パナソニックISでは、事業会社における間接材の調達プロセスが属人化しており、その結果、重複支払いが発生したり、300日以上支払いが滞納したりといったことが発生していたという。ここにCelonisを用いて、プロセスを可視化。それによってプロセスの正常化し、課題を解決するとともに、現場の負荷の軽減にもつながったという。
また、生産リードタイムの短縮にもCelonisを活用。工程ごとに異なるリードタイムを可視化することで、現場ごとに最適化する形で推進されていたカイゼン活動を生産プロセス全体に直結させ、課題解決を図ったという。ここでは、Celonisによって全体のプロセスを可視化することで、各現場における課題のポイントも提示でき、さらなるカイゼン活動を促進にもつながったとした。
さらに、ERPの導入においてもCelonisを活用して、従来システムのカスタマイズの状況などを可視化。導入後もプロセス通りに稼働しているかを確認しているという。海外拠点では、従来通りにカスタマイズしたシステムが必要だという現場の声を反映したものの、導入後にプロセスマイニングを活用して可視化してみると、そのうちの70%が使用されていないことがわかったという。新たなシステムを導入する前からプロセスを可視化することを徹底し、こうした課題の再発につなげているという。
パナソニックIS 代表取締役 副社長執行役員の阿部裕氏は、「現在、SAPの移行に取り組んでいるところであり、カスタマイズされたものがどれだけあるのかを可視化し、標準化していくことに取り組んでいる。データがあると納得してもらいやすい。ここではDXではなく、XDと呼び、SAP/4 HANAの導入プロジェクトではなく、トランスフォーメーションのためのプロジェクトと位置づけている。
また、ITはあくまでも手段であり、現場の変革を支援する立場である」とコメント。「それを実現するためのデータ活用やプロセスファーストの実現のためにCelonisを活用している。データをもとにした意思決定を目指しているが、まだ勘や経験で意思決定している部分がある。Celonisによって、データによる意思決定を促進することができる」と述べた。
今後の取り組みとして、全社的なプロセス改革を推進するなかで、SAPだけでなく、OracleやGLOVIA、DynamicsなどにもCelonisを活用するほか、内部統制プロセスの可視化による監査体制の強化、AIを組み合わせたプロセスマイニングの活用により、ビジネス部門が気づいていないインサイトの提案などにつなげたいとしている。
パナソニックISの阿部副社長は、「2022年からCelonisを活用しはじめたが、当初、現場からは不要だと言われた。だが、いまではプロセスを可視化しなくてはならないという風潮になってきた。だが、プロセス改革とデータ活用は、テクノロジーを入れたからすぐにできるものではなく、マインドチェンジやカルチャー変革が必要であり、時間もかかる。プロセス改革とデータ活用に近道はない。まずは、経営者の理解が必要である。我々は、新たなテクノロジーを使って進化をしていきたい」と述べた。
富士通での活用事例
一方、富士通では、保守ビジネスにおける部品配送プロセスの改善にCelonisを活用して、大きな成果をあげている。同社は、6万5000社の顧客に対して、2時間以内にサポートする体制を敷いており、全国70カ所の拠点から、200万個の部品を、年間60万回配送しているが、このうちの5分の1を、タクシーなどを活用して、すぐに部品を届ける緊急配送が占めていたという。
現場では、コストが高くても緊急配送の必要性を訴えていたが、プロセスを分析してみると、緊急配送で部品が届いても、エンジニアが現場に行くのが4日後になるなど、全体の半分は緊急配送しなくてもいいことがわかった。さらに、プロセスを分析すると、通常配送の使い勝手が悪いこともわかった。そこで、通常配送の仕組みを変更した結果、緊急配送が減少。1億3000万円の費用が削減できたという。ここでは、データを活用することで、改善ができることを現場が気づくというメリットも生まれたとしている。
また、富士通グループでハードウェア製品の開発、生産、販売を担うエフサステクノロジーズでは、在庫金額が1000億円以上あり、在庫回転率が年間0.5回、部品点数は260万点、部品の種類は2万7000点という状況で、早急に改善しなくてはならない課題となっていた。
この背景には、コロナ禍で部品が入手しにくくなったことで、過剰に部品を確保しようという動きが顕著になり、ロット数が大きくなったり、長期契約になったりということが増加したことも影響している。
Celonisの海外での導入事例や、Celonisの協力を得た事前検証により、調達や在庫管理に改善できる部分が多く、Celonisがそれに対処できることを確認。導入にあたってはCoEを設置し、組織横断で全体最適化するという観点から課題抽出を行ったという。これにより、部品の正しい調達ができているかどうかを検証したり、過剰発注を抑制したりといったことが可能になり、調達方法に検証が必要な場合には事前にアラートを出すようにしている。こうした手法で、調達および部品在庫をあわせて、棚残全体で20%削減を目指しているところとのこと。
富士通 システムプラットフォームBG執行役員 SEVPの古賀一司氏は、「現場では最適に行っていると思っても、全体では最適ではないというプロセスがある。また、フローでデータの流れを見て、分析することも大切である。そして、プロセスに対して、新たな目を入れることも必要であり、そこにはCoEの活用が適している。棚残の削減は戦略的な要素を持った取り組みではないため、その成果はオープンにしていく。多くの日本の企業と一緒に業務改革に取り組んでいきたい」とした。
- 初出時、古賀氏の肩書きを誤っておりました。お詫びして訂正いたします。
Celonis村瀬社長はプロセスマイニングによる事業変革への取り組みなどを説明
このほか、基調講演でCelonisの村瀬将思社長は、「DXの最終ゴール、Autonomous Enterprise(自律型企業)とは」と題し、プロセスマイニングによる事業変革への取り組みや、同社の現状などについて説明した。
村瀬社長は、「事業活動の最適化への取り組みは、デジタルファーストではなく、プロセスファーストが重要になってきている。プロセスは、企業活動の心臓部である。日本の多くの企業が、プロセスマイニングによって、変化を加速させ、価値を刈り取ることができるチェンジメーカーになってほしい」と切り出した。
Celonisでは、複数のプロセスを関連させ、オブジェクト単位で可視化するOCPM(Object-Centric Process Mining)を提案しており、これにより、エンドトゥエンドで業務の非効率性をあぶりだし、大きな価値創出が可能になることを示したほか、プロセスファーストのアプローチでは、プロセスの分析、改善に加えて、新たに買収したビジネスプロセス管理(BPM)ソフトウェアのSymbioが持つテクノロジーを活用することで、CPM(Celonis プロセスマネジメント)を提案。さらに、プロセスをモニタリングすることで、価値創出を確認できるというCelonisならではの一連の提案を強調したほか、生成AIを組み合わせることで、プロセスインテリジェンスの提案領域を拡大し、専門家でなくても利用できる環境を提案することができると述べた。
その一方で、ビジネスの世界では生成AIを効果的に活用するためのコンテキストデータが不足しており、正しい答えが得られていない現状を指摘。「OCPMによって、複数のプロセスや複数の現場をつなぐことで、ビジネスコンテキストを用意できる。これを活用することで、生成AIが正しく回答できるようになる。プロセスマネジメントのデータと、プロセスマイニングおよびタスクマイニングのデータを組み合わせて、それぞれの企業が独自に持つビジネスの文脈を理解し、それをプロセスインテリジェンスとして理解できるようになる。プロセスがきっちりと機能すれば、AIが機能することになる」と提言した。
さらに、「プロセスインテリジェンスとCopilotを組み合わせることで、専門知識を持たない経営層でも回答を得ることができたり、プロセスマイニングを活用できたりする。Googleで『ググる』ように、Celonisを『セロる』といった使い方が可能になる。CelonisのプロセスインテリジェンスとAIを組み合わせるユースケースは、グローバルで続々と増えている段階にある」と語った。
Celonisが提案している「Autonomous Enterprise(自律型企業)」については、プロセスマイニングで企業の可視化を行う一方、企業導入しているデジタルツール群を、Celonisの新製品であるオーケストレーションエンジンを活用することで、エンドトゥエンドで業務が自律的に動く世界を構築。「企業の6~7割の業務が自動化し、自律的に運営されるようになると、人(ピープル)とプロセスに加えて、Celonisが提供プラットフォームにより、Autonomous Enterpriseを実現することができる」と話した。
また、村瀬社長は、「Celonisは日本を元気にしたい」と語り、「日本のGDPはドイツに抜かれて4位になり、幸福度ランキングも47位から51位に下がっている。30歳未満に限定すると幸福度ランキングは73位にまで下がる。将来の日本を背負う人たちの幸福度が低いのは懸念材料である。さらに日本は労働生産性が低く、少子高齢化により労働人口の減少が進展している。デジタル変革も遅れている。質も、量も、仕組みにも課題がある。これは危機的な状況である」とコメント。
「Celonisはポジティブな変化を作りたい。プロセスファーストは、最も多くの価値を創出でき、最も早く変化を実現する手段になる。プロセスマイニングを活用したプロセスファーストアプローチにより、DXの最後のピースが埋まることになる。プロセスを人に機能させ、会社に機能させ、地球に対して機能させることで、無駄やムラがないサステナブルな世界をつくる。これを成し遂げたい」などと述べた。
日本の企業のユースケースとして、販売や受注、購買や支払いといったプロセスのほか、計画から物流までのサプライチェーン、顧客対応のカスタマサービスに加え、最近ではサステナビリティでの活用が進展しており、プロセスを可視化して、無駄な配送を減らすことでCO2排出量の削減につなげるといった活用が始まっているという。
なお、Celonisでは、ユーザー企業のCxOを対象にしたCxO Clubの開催しており、これまでの11回の開催で、延べ300人以上のCxOが参加していることを報告。今回の「Celonis Day Osaka 2024」にあわせて、初めて大阪でもCxO Clubを開催。「かんかんがくがくの意見が出た。ミーティングはとても盛り上がった」と語った。