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NTT、6G/IOWN時代のコアネットワーク「インクルーシブコア」アーキテクチャの基本技術仕様を確立

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は25日、6G/IOWN時代のコアネットワーク「インクルーシブコア」アーキテクチャについて、基本技術仕様を確立したと発表した。

 インクルーシブコアは、「サイバー空間」と「物理空間」、「コンピューティング」と「ネットワーク」、「アナログ」と「デジタル」、「移動通信」と「固定通信」など、通信サービスそのものまたは環境変化としての、4つの多面的な「融合と協調」を実現する、さまざまな技術からなる将来の共通的基盤となることを目指している。

インクルーシブコア概要

 具体的には、「ネットワーク融合サービス高速処理基盤(ISAP)」「耐障害性の高いネットワーク技術(ロバストネットワーク)」「アプリケーション要件に適応した通信方式の選択機能(適応トランスポート)」「モノ、AIなどの多様な対象の認証機能と端末、ネットワーク、サービス間のID連携機能(認証・ID連携機能)」「ユーザー主権によるアイデンティティ管理と情報流通基盤(SSI基盤)」などの要素技術から構成される。

 ISAPは、In-Network Computingとして、端末やクラウドでのサービスに係る情報処理を仲立ちし、両者を高速に同期・協調させながら、通信環境やサービス利用環境に即したネットワーク内のハードウェアでの連鎖的な処理基盤を形成する。端末とクラウドの情報処理を、ネットワークが協調させ高速化するため、顧客環境や端末、サービスに制限されないフレキシブルなサービス体験の創出につながる。

 SSI基盤は、ブロックチェーンを含むSSIを実現する技術である、DID(分散型識別子)やVC(検証可能な資格証明)と、IPアドレスなどのユーザーを識別できる情報を隠蔽(いんぺい)する技術を組み合わせることで、プライバシーに配慮した個人の資格情報の提示をセキュアに実現する。これにより、デジタル化された個人のプライバシー情報が収集される心配なく、パーソナライズされたサービスを安全に利用することが可能となる。

 NTTでは、アーキテクチャの有効性を確認するために、AWS上にインクルーシブコアを実装し、メタバースをユースケースの例として、要素技術であるISAPとSSI基盤について実証を行った。

 メタバース空間状態と連動した、In-Network Computing基盤によるメタバース空間描画の起動・高速化の実証では、メタコミュニケーションサービス「MetaMe」から移動できる空間(MetaMeコミュニティワールド)として接続した、SSIに基づくメタバースへの移動に合わせて、AWS上に展開された5Gコアネットワークの端末接続状態をISAPが連携し、ネットワーク内のハードウェアアクセラレーターに、動的にメタバース空間描画機能を起動することによる、高速な3D空間描画を実証で確認した。

 また、個人のプライバシー情報を収集しない、パーソナライズされたコンテンツ配信を可能とするSSIに基づくメタバースの実証では、ISAP上に展開された個人のプライバシー情報を管理するセキュアIDウォレットにより、プライバシーに配慮した個人の属性情報の提示を実現し、メタバース空間上で個人を特定するような個人情報の収集を防ぎつつも、個人の属性情報に基づいてパーソナライズされたサービスの提供を実証で確認した。

 NTTでは実証を通じて、ユーザーが端末やサービスに左右されずに、いつでもどこでも使いたいサービスを自分主体で安心安全に利用できるような、ユーザーが主導権を握れる、新たなサービスの形態を提示できることを確認したと説明。今後は、これらの要素技術を、関連する国際的な標準化団体およびオープンソースコミュニティへ提案していくとともに、6G/IOWNの本格導入が予定されている2030年に、標準仕様として社会に広く実装されることを目指すとしている。