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NTTとNTTドコモ、6G時代に向けコンピューティング機能を備えたモバイルネットワークを実証

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)と株式会社NTTドコモは21日、NTTが6G/IOWN時代のコアネットワークとして提案する「インクルーシブコア」構想をもとに、3GPP標準準拠のモバイルコアを拡張することで、6Gの特徴の一つであるコンピューティング機能を備えたモバイルネットワークを構築し、共同で実証したと発表した。

 両社は、従来のモバイルネットワークは、端末とクラウドでのデータ処理とは独立して、データの転送を担ってきたが、この固定的な機能分担により、端末とクラウドのサービスは密接に連携した処理ができなかったと説明。一方で、6Gではサイバーフィジカル融合などによる先進的なサービスの実現に向けて、端末とクラウドのサービスが密接に連携することが求められるとしている。

 こうした課題に対し、NTTとNTTドコモでは、インクルーシブコアネットワークにおいてGPUなどのアクセラレーターを含むコンピューティング機能の具備と、端末とサーバーを仲介するISAP(In-network Service Acceleration Platform)の活用により、端末とクラウドの連携処理を目指していると説明。これにより、端末やクラウドで担っていた処理をネットワーク内で高速処理しながら、低遅延・大容量な6Gネットワークにより、端末とクラウドのサービス情報処理の連携を加速できるとしている。

従来のネットワークの機能分担
モバイルネットワークとコンピューティングの融合

 ISAPは、コンピューティング機能を融合したモバイルネットワークアーキテクチャを構成する技術要素として、1)端末のモバイルネットワーク接続状態に合わせたモバイル回線への計算サービス設定、2)クラウド側のサービスの利用状態の変化に合わせたモバイル回線への計算サービス設定、3)モバイルネットワークやクラウド側のサービスの状態や特徴・特性に適した計算サービスに用いるコンピューティング機能の制御――を実現する技術となる。

 実証実験では、Nokiaの3GPP標準準拠のモバイルコアネットワークをパブリッククラウド上に構築し、ISAPと連携するように、ネットワークの情報を外部に開示する5G標準機能のNEF(Network Exposure Function)を拡張することで実施した。

 端末のモバイルネットワーク接続状態に合わせたモバイル回線への計算サービス設定については、モバイルコアネットワークからNEFを用いて、端末のモバイルネットワーク接続状態情報を取得し、連動して、モバイルネットワーク内のコンピューティング機能から計算サービスを統合制御可能であることを確認した。また、通常のモバイルネットワークへの接続手順相当の時間で完了することを確認した。

 クラウド側のサービスの利用状態の変化に合わせたモバイル回線への計算サービス設定では、メタバースを利用するケースにおいて、メタバース空間内の状態に応じて高性能なレンダリング、エンコード/デコード機能に対応したGPU付きの計算サービスを具備するように、計算サービスを制御可能であることを確認した。また、メタバース空間の状態変化時間内に、計算サービスを回線に設定できることを確認した。

 モバイルネットワークやクラウド側のサービスの状態や特徴・特性に適した計算サービスに用いるコンピューティング機能の制御では、メタバースに加えて、監視カメラ映像ストリームをAIで分析するサービスなど、サービスごとに異なる特性がある場合において、GPUやDPUなどのコンピューティング機能を、CPUを介さず動的に組み合わせて計算サービスを構成し、モバイル回線の接続および変更手順相当時間内に設定が可能であることを確認した。

 NTTとNTTドコモは、引き続きコンピューティングと融合した6Gネットワークのユースケースやアーキテクチャの検討と実証を継続し、ユーザーが端末の処理能力やサービスの負荷状況に左右されず、いつでもどこでも使いたいサービスを自分主体で利用できるような新たなサービス形態の検討を進めるとしている。