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シスコ、可視化製品「ThousandEyes」と従来の主要アーキテクチャとの統合を推進

ThousandEyesの画面

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は29日、ネットワークアシュアランス事業について説明した。

 米Cisco Systems(以下、Cisco) シニアバイスプレジデント兼ネットワークアシュアランス ゼネラルマネージャーのモヒート・ラド(Mohit Lad)氏は、「ThousandEyesにより、ネットワーク上のあらゆるデジタル体験を確認し、把握し、改善することができる。数十億の測定ポイントをもとに、Google Mapsのように、世界中のネットワークの状況を可視化でき、停止状況も確認できる。例えば、AWSの利用停止や、Microsoft Teamsの利用停止といった状況が理解でき、局所的な影響なのか、それとも大規模な影響を与えるのかといったことも予測し、理解できる。ネットワークの課題がどこにあるのかを確認できるのが特徴である」などと述べた。

米Cisco シニアバイスプレジデント兼ネットワークアシュアランス ゼネラルマネージャーのモヒート・ラド氏

 ネットワークプロトコルを深く観測していること、特許を持つ独自の方法でネットワークに関するデータを収集していること、インテリジェンスを持ったユニークなインサイトを提供できること、複雑なネットワーク環境を可視化できることを、ThousandEyesの特徴に挙げた。

 ラド氏は、Ciscoが2020年に買収したThousandEyesの共同設立者兼CEOであり、「2013年以降、CiscoはThousandEyesの顧客であり、ネットワークの環境を理解するために約7年間活用していた。Ciscoによる買収後、ThousandEyesの陣容は2倍に拡大している」などと述べた。

 今回の説明のなかで強調したのが、ThousandEyesと、Ciscoの主要製品やアーキテクチャとの統合を強力に推進している点だ。

 AppDynamicsとの統合により、Full Stack Observability(FSO)の実現を加速。問題を迅速に解決するための情報を収集でき、予測にもつなげることができる。また、ハイブリッドワークへの対応ではWebexとの統合により、ThousandEyes Webex監視ポイントやWebex接続の自動監視のほか、ThousandEyesのインサイトをWebex Control Hubに統合するといった取り組みも進めている。またSASEの領域では、ThousandEyesをCisco SD-WAN platformsやCatalyst 9000、Nexus 9000に組み込むことで、より迅速な対応が可能になるほか、デバイス管理プラットフォームによるシンプルでスケーラブルなエージェント管理も実現しているという。

シスコ主要アーキテクチャとの統合

 Webexとの統合では次のような事例を挙げた。

 「Webexを使い、ビデオ会議をしているときに発生したトラブルの原因が、インターネットなのか、Wi-Fiの問題なのか、Webexそのものの問題なのか、あるいはそれ以外のものなのか。それがわからないとトラブルシューティングは難しくなる。だが、ThousandEyesをWebexに統合したことで、どんな環境で、なにと接続しているのかが理解でき、トラブルが発生したときに迅速に確認することができる。ITに関するトラブルの多くは、IT部門が後追いで対応することになるが、ThousandEyesではすぐにアラートがあがり、別のアクセスポイントに切り替え、接続を維持できる。大きな問題になる前に対処できる。Webex以外のコラボレーションツールにも同様の対応を行える」などとした。

 さらに、「今後も、モバイルや自宅、ワイヤレスやルーター、アクセスポイント、データセンターおよびサービスプロバイダー、インターネット、クラウドやアプリケーションまで、シームレスなデジタル接続を実現することを目指す。これにより、膨大なデータを収集して、あらゆる環境の可視化を実現できるのに加えて、プロアクティブなインテリジェンスを提供し、問題の迅速な特定と切り分けを行い、エコシステムとの統合によって、運用可能なワークフローを拡張することができる。ネットワーク上のあらゆるデジタル体験を確認し、把握し、そして改善ができるのは、One Ciscoになったからこそ成しえるものである。統合によって、ThousandEyesをデプロイしやすくなり、ThousandEyesの価値を、より発揮できるようになる」などとした。

 また、AWSとの協業も発表しており、「パブリッククラウドの深いところまでを観測することができるようになる。まずは、AWSとの協業となるが、今後、対象を広げていくことになる」と述べた。

 一方、シスコ 執行役員 エンタープライズネットワーキング事業担当の眞﨑浩一氏は、「クラウド利用とハイブリッドワークが常識になると、クラウド間やクラウドと企業間などのネットワークの運用が複雑になり、管理がサイロ化することになる。ThousandEyesにより、デバイス、LAN、インターネット、WAN、クラウド、データセンターまでをエンドトゥエンドで可視化し、リアルタイムに問題を特定。さらに、Cisco MerakiやCisco DNA Center、Cisco SD-WANなどと連携することで、ネットワークの問題を解決することができる。これにより、テクノロジーやアプリケーション、ネットワークを統合管理し、シンプルで安全、予測可能な体験をユーザーに提供できる。SD-WANのクラウドマネージドサービスの機能などは、欧米に続き、今後、日本でも提供していくことになる」とした。

シスコ 執行役員 エンタープライズネットワーキング事業担当の眞﨑浩一氏
迅速に問題を特定、そして解決

 同社の調査によると、アジア太平洋地域の企業では、CIOやIT担当者、開発者の91%が、「インフラストラクチャのインサイトやネットワーク、アプリケーション、サイバーセキュリティなどのデジタル体験の管理を一元化する必要がある」と回答しており、アジア太平洋地域においても、ThousandEyesに対するニーズが高いことを裏づけている。

 2023年6月に米国ラスベガスで開催された同社年次イベント「Cisco Live 2023」では、Cisco Networking Cloudと呼ぶコンセプトを発表した。オンプレミスとクラウドの運用モデルのための統合プラットフォームであり、「オンプレミスやクラウドで提供されているCiscoのツール群をひとつのプラットフォームでマネジメントできる。そのベーステクノロジーのひとつがThousandEyesになる」(シスコの眞﨑執行役員)と位置づけた。

Cisco Networking Cloud

 Cisco Live 2023においては、Cisco MerakiにThousandEyesを組み込み、より多くのサイトをカバーできるようになったことも発表。Ciscoのラドシニアバイスプレジデントは、「ThousandEyesの統合によって、さまざまな製品を起点にした導入を図ることができる。Merakiを使用していた多くのユーザーに対しても、ThousandEyesの価値を提供できる。Merakiでの体験をベースに、さらにThousandEyesの活用範囲を広げていくことができる」などと述べた。