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デル・テクノロジーズ、IT-as-a-Service「APEX」の最新状況を解説
Project Alpine、Project Frontierの両ストレージソリューションも説明
2022年12月7日 06:00
デル・テクノロジーズ株式会社は6日、APEXの取り組みについて説明した。
APEXは、デル・テクノロジーズが持つさまざまなポートフォリオを、as-a-Serviceで提供する仕組みであり、2022年度第2四半期(2022年5月~7月)決算では、APEXのARR(年間経常収益)が初めて10億ドルを突破したことを発表。最新四半期(202年8月~10月)の決算発表では具体的な数字は公表していなかったが、ビジネスが順調であることを強調している。
米Dell Technologies Dell APEXプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのチャド・ダン氏は、「APEXでは、ブロックストレージ、ファイルストレージ、仮想マシン、コンテナ、サイバーリカバリーなど、当社が持つ多くの既存製品を、as-a-Serviceやサブスクリプションで提供している。このなかから、やりたいことに必要なサービスを選択してもらえればいい。当社が運用管理までを行う形態と、顧客が運用管理を行いインフラをサブスクリプションで利用する形態を用意している。これにより、最新鋭のクラウド体験をすぐに実現できるほか、最新鋭のコンサンプション体験もできる。ユーザーは、管理画面を見るだけで、すべての状況を確認できるようにしている」と説明。
「APEXで目指すのは、マルチクラウドとハイブリッドクラウドの世界へとしっかりと導くことであり、そこで発生するインフラの課題も解決する。そのために、計画的なマルチクラウドを意味する『Multi Cloud by design』を実現する」と述べた。
また、オンプレミスによる従来型のIT投資では、購入したストレージ容量に対して1年目は30%以下しか使用されず、3年目以降には60~65%しか使用されていないといったオーバープロビジョニングが発生していること、発注から納品まで平均で3~4.5カ月かかり、価値を創出するまでの時間が長期化していること、一括払いでの投資が必要なため、投資負担が大きいこと、といったデメリットがある一方で、パブリッククラウドにおいても、セキュリティやコンプライアンスのコントロールが難しいこと、パフォーマンスと遅延の課題が発生していること、クラウドに大量のデータが蓄積され、データを活用する際にコストが発生する仕組みになっている課題を指摘する。
「企業の9割がマルチクラウドを利用しており、そのうち75%が3つ以上のパブリッククラウドを利用している。だが、マルチクラウドによって、データやワークロードがサイロ化し、混沌とした状態が生まれている。その結果、データを活用したいという気力も削がれてしまっている。また、なにかしら妥協点を探って利用しなくてはならないといった実態もある。こうした課題を解決するのがAPEXであり、クラウド体験の良いところと、オンプレミスやコロケーションのワークロードのメリットを得られ、セキュリティ、ガバナンスのコントロールも取り戻すことができる」とする。
デル・テクノロジーズでは、従来型のストレージなどの製品をパブリッククラウド上でも利用できようにする「Ground to Cloud」と、クラウドに最適化されたサービスやワークロードをオンプレミスでも利用できるようにする「Cloud to Ground」という2つの動きがあると説明。ここにAPEXが活用できるとしている。
一方、ストレージソフトウェアをAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloudといった主要なハイパースケーラー上で稼働させる「Project Alpine」と、エッジのマルチクラウド環境の運用を簡素化する「Project Frontier」についても説明した。
Dell Technologies APJ(アジア太平洋および日本)シニア ディレクター兼プリセールス責任者 Dell APEXクラウド&コンテナソリューション担当のグレン・ハイアット氏は、「Project Alpineは、ソフトウェア定義型の先進ストレージをパブリッククラウド上で動作させるものであり、クラウド間のデータポータビリティを容易に実現するものになる」とした。
ここでは、Ground to Cloudとしての事例で紹介。「パブリッククラウドには相互の互換性がないが、Project Alpineによって共通のストレージ階層を構築することで、利用者は、特別なツールを利用することなく、ハイパースケーラー間でワークロードを自由に行き来できるようになる。オンプレミスでもコロケーションでもハイパースケーラーのクラウドでも、運用上のガバナンスの一貫性を担保できる。さまざまなワークロードをさまざまな環境で利用できる」などと語った。
Project Alpineでは、まずはDell PowerFlexに対応。AWS上でも稼働させているのに加えて、2023年にはGoogle Cloud、Microsoft Azureでも動作させるという。さらに、Dell PowerStoreやDell PowerScale、Dell ObjectScaleにも対応していく。
またProject Alpineは、「Cloud to Ground」の提案でも効果を発揮するという。
「クラウドネイティブなどの新たなアプリケーションの本番環境を、パブリッククラウドで動作させるのはよくないという指摘がある。パフォーマンスが出ないことや、データセキュリティやデータ主権の課題などがあるためだ。そこで、Project Alpineでは、パブリッククラウドで動作しているサービスを、当社のインフラ上で稼働できるようにした」と説明。
さらに、「Project Alpineで実現する共通のストレージ階層によって、パブリッククラウドやオンプレミス、コロケーションの間で一貫した運用が可能になり、ワークロードの可搬性を増すことができる。パブリッククラウドで動作しているアプリケーションを、オンプレミスに移行することでコスト効率が高まり、パフォーマンスも、セキュリティも向上させながら、クラウドのメリットも活用できる」と述べたほか、「これからのマルチクラウドの実現においては、トランザクションやワークロードを、簡単に、どこでも稼働できるようにする必要がある。効率的なITの実現は、場所に関わらず同じ運用ができることが条件になる」とも指摘している。
一方のProject Frontierは、2022年10月に開催した同社の年次イベント「Dell Technologies Summit」で発表したもので、エッジオペレーションソフトウェアプラットフォームとして提供。「エッジオペレーションを行うための新たな考え方によって、エッジの課題を解決し、エッジにおける根本的なデザインシフトを促すことになる」(Dell Technologiesのダン バイスプレジデント)と位置づけた。
「さまざまなデバイスやIoT機器、ゲートウェイをエッジで管理し、データをエッジで処理し、そこから知見を抽出する必要がある。だが、エッジには特有の制限や課題があり、業界特有の用途もある。横ぐしで利用できるものが少ない。さらに、エッジの保守を行う人はITスキルが高いとはいえない課題や、物理的なセキュリティだけでなく、システムやネットワークのセキュリティも維持しなくてはならない。Project Frontierでは、ITスキルがなくてもエッジを展開でき、ゼロストラストで守り、接続性の課題がある場所にも展開できるようにする取り組みである。既存のハードウェアと、Project Frontierで提供するソフトウェアが互換性を持ち、エッジの展開を自動化し、セキュリティや運用も一元的に管理できる。幅広い製品を持っているデル・テクノロジーズだからこそ実現できるものであり、顧客にとってもメリットを提供できる」などと語った。