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日本オラクル、Oracle Cloud Applicationsの最新情報を説明 3点の新たな戦略を打ち出す

 日本オラクル株式会社は14日、米Oracleが10月17日~20日(現地時間)に米国ラスベガスで開催された年次イベント「Oracle CloudWorld 2022(OCW 2022)」にて発表した、Oracle Cloud Applicationsに関する最新情報について説明した。

 アプリケーション事業においては、「変化対応のために設計され、お客さまの成功のために開発(Designed for Change. Built for You)」することを基本方針を掲げ、「必要なものをすべて提供(Everything You Need)」、「イノベーション実現のために(Innovation that Matters)」、「お客さまの成功のために(Committed to Your Success)」の3点の戦略を打ち出したことに触れた。

変化対応のために設計され、お客さまの成功のために開発

 日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏は、「OracleがピュアSaaSベンダーとして、ERP、サプライチェーン、HR(人事)、CX(カスタマーエクスペリエンス)まで、顧客が必要とするすべてのものを網羅して提供していること、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)という強力なクラウドプラットフォーム上でアプリケーションを提供していることを強みとして訴えた。これにより、アプリケーションのパフォーマンスを高め、セキュリティを維持し、可用性を担保することができる」とした。

 さらにOracle Applications Platformでは、「スイートアプリケーションの提供は今後も強化するが、ラストワンマイルの部分で顧客がファインチューンしたいという要望に対応できるようなプラットフォームを提供することを発表した。Oracleの開発チームが使用しているツールやプラットフォームをそのまま展開し、テンプレートのようなものでUXが実現しやすくなったり、ローコード開発を推進したりといったことが可能になる」と述べた。

日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏

 Oracle Applications Platformにおいて、Oracleの受賞歴のあるRedwood UX(User Experience)コンポーネントに加えて、検索、自己学習型の提案機能、会話機能などの高度なテクノロジー、テレメトリーやローコード開発ツールを活用できるという。

Oracle Applications Platform

 またOracle B2B Commerceは、プロセスの自動化が自社のなかだけでは完結しない状況を、SaaSを活用することで解決するソリューションとして提供。J.P. Morgan PaymentsとFedExがこれを立ち上げることを支援する。日本でも製品提供に向けた開発を進めていく姿勢を示したほか、Investments for Goodでは、サプライチェーンやDEIといった変化への取り組みを支援するアプリケーションとして、実行、分析などの領域をカバーすることになると述べた。

Oracle B2B Commerce
Investments for Good

 さらにOracleでは、顧客の成功のための取り組みを強化しており、製品の会社からサービス会社へと移行していることを強調。「新機能の8割が顧客のフィードバックに基づいて開発されている。開発チームと顧客が近い関係にあり、プロジェクトの支援や、カスタマーコミュニティの提供などを行っている」などと語った。

 一方、Oracle Cloud ERPでは、エンドトゥエンドの企業間取引を統合、自動化する新しいサービスを発表した。ここには、先に触れたOracle B2B Commerceも含まれている。

 日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括ソリューション・エンジニアリング事業本部の三谷英介氏は、「ERPを中心として社内の効率化、高度化に加えて、企業を取り巻くさまざまな業務プロセスを自動化、効率化することを目指している。変化に柔軟に対応することができるようになる」としたほか、「OCW 2022では、時代の変化に対応するためにSaaS型ERPの導入が必須であったこと、それと同時に既存のビジネスプロセスを見直したこと、リアルタイムのデータ分析やAI/MLの活用により将来を予測しているといったことなど、いくつかの事例が示された」などとした。

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括ソリューション・エンジニアリング事業本部の三谷英介氏

 Oracle Cloud SCMでは、スマートファクトリーによるデジタルツインの実現と自動化に関するデモンストレーションを実施。Oracle自らが実装しているOracle ESG Intelligence frameworkによるESGへの取り組みについても説明した。「サステナビリティの実現に向けては、設計、実行、データ収集、レポーティングといった、すべての経営プロセスに対して、戦略的に取り組む必要がある。Oracle ESG Intelligence frameworkは、エンドトゥエンドでプロセスをカバーしており、サステナビリティ推進に向けた活動を支援している」という。

Oracle Cloud SCM

 Oracle Cloud HCMに関しては、リモートワークによって希薄化したコミュニケーションを、オラクルのソリューションによってサポート。日常業務のなかで発生する人事上の課題や、社員のモチベーション維持、人材採用と育成、定着化などについても、包括的な対応ができると述べた。「Oracle Fusion HCM Analyticsによる包括的なアナリティクスサービスを強化。実行系アプリケーションとシームレスに連携することで、事前定義済みのKPIが提供されたり、外部データとの連携により、掘り下げた分析ができたりするようになっている」と述べた。

Oracle Cloud HCM

 Oracle Fusion Cloud CXにおいては、買収したCX製品を統合することをアナウンス。ERP、SCM、HCMとシームレスに接続し、セールスの改善、サービスの提供をモダナイズすることができるという。また、製造業が持つ資産を適切に管理し、ダウンタイム防止の自動化を支援するソリューションも発表した。

 なお、Oracle Fusion Cloud Applicationsの顧客数が1万社超となったことも報告した。

 日本オラクルの三谷氏は、「Redwood UXコンポーネントを、Oracle Applications Platformで提供することをアナウンスしたのは大きな発表であった。独自性が必要となる部分については、APIを経由する形で追加開発を行うことができるようになり、Oracleのアプリケーションと同様のパーツをローコード開発で提供でき、生産性向上と統一的なプラットフォームを提供可能だ。オラクルはオープンな技術を採用しており、追加開発の際にもオープンな言語を活用できる点が特徴である」と述べた。

Oracle Fusion Cloud CX

 今回のOCW 2022は、3年ぶりのリアル開催となり、全世界から1万2000人以上が来場。日本からは100人以上が参加した。

 新卒で日本オラクルに入社した善浪常務執行役員は、「長いオラクルの経験のなかでも、オラクルが第2の創業期を迎えたことを感じるイベントであった」とし、「サフラ・キャッツCEOの基調講演の内容は、スピードとイノベーションに集約された。オラクルは最もパフォーマンスが高く、最もサステナブルで、最も費用対効果の高いプラットフォーム上にアプリケーションを提供すると述べ、ラリー・エリソン会長は、データベースという言葉を使わずに講演を行い、マルチクラウド、社会課題解決への貢献、Cernerの買収を踏まえたヘルスケアの話題が中心となった。そして、アプリケーション事業を担当するスティーブ・ミランダEVPは、変化する環境に、顧客が対応できるようにアプリケーションを提供していくこと、それぞれのインダストリーの課題に対応して、エコシステムを拡大しながら、顧客の成功にコミットすることを訴求した」と、講演での内容を紹介。

 また、「3人の基調講演を通じて、社会課題や業界の課題解決に向けて、エコシステムを構築し、パートナーシップによって推進し、今後Oracleが、AIやアプリケーションなどを組み合わせて、社会課題を解決する企業になることを示した」と、OCW 2022の内容について報告した。

 そしてその上で、「日本から参加した金融機関の役員は、ITやデジタル活用が2周、3周遅れていることを感じ、逆にモチベーションが湧いたという言葉を聞いた。日本オラクルとしても、これを日本にどう伝えていくかがこれからの命題である」と述べた。