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日本オラクル、Oracle Fusion Cloud Applicationsの最新事業戦略を解説 生成AIへの取り組みを加速
2023年10月27日 06:00
日本オラクル株式会社は26日、クラウドアプリケーションであるOracle Fusion Cloud Applicationsの事業戦略について説明。そのなかで、生成AIへの取り組みを加速していることを強調した。
日本オラクル バイスプレジデント アプリケーション統括の武藤和博氏は、「オラクルは、SaaSにおいて10年を超える実績がある。そこに新たなテクノロジーやセキュリティを積極的に組み込んでいる。Oracle Fusion Cloud Applicationsはシングルデータモデルであり、クラウドネイティブのSaaSとして、インフラの統一、インスタンスの集約ができていることが強みだといえる。従来のERPは一度構築するとバージョンアップが困難であったが、四半期ごとの自動アップデートを行えるほか、最新機能が無料で利用でき、セキュリティも強化することができる」と述べた。
現在、Oracle Fusion Cloud Applicationsの月間ユーザー数は2500万ユーザー以上、Oracle NetSuiteは219カ国において3万7000社が利用。Oracle Industries Appsは180カ国において1万社以上が利用しているという。
日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション戦略統括の塚越秀吉氏は、「Oracle Fusion Cloud Applicationsは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)という強い足腰の上で稼働している。だからこそ、さまざまな価値を提供でき、強みが発揮できる」と語った。
また、武藤バイスプレジデントは、「インフラストラクチャ、開発環境、アプリケーションのそれぞれのレイヤーにおいてAIの実装を進めており、さまざまなお客さま要件に対応するエンタープライズ向けAIを提供している。クラウドネイティブSaaSに組み込まれたAIは、すでに30以上をリリースしている。今後、生成AIを核に、加速度的にAIの実装が進むことになる」と語った。
日本の企業においても、生成AIを活用することで、アプリケーションと会話をしながら利用する時代が訪れていること、経営会議においても生成AIを活用して、より深い資料づくりが可能であることなども示した。
またオラクルでは、2022年6月にCohereとの戦略的提携を発表。組み込み型AIをOCI上のサービスとして提供し、データセキュリティ、プライバシー、ガバナンスを提供しながら、ビジネス向けに、強力で、セキュアな生成AIサービスを実現していることも示した。
日本オラクルでは、クラウドアプリケーション事業では、事業環境変化に向けたモダナイゼーションのためのSaaSを提供する「SaaS for Japan」と、AIで業界全体のDXを推進し、日本社会の生産性向上を目指す「AI & ML for Japan」の2つを重点施策に掲げている。
「SaaS for Japan」では、今回の会見にあわせて、産総研が、財務会計システムを、「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning(ERP)」によって再構築したことを発表。日本オラクルの武藤バイスプレジデントは、「製造、金融、流通といった領域での採用に加えて、公共セクターにも拡大してきた。オラクルのSaaSのモメンタムを感じてもらえる」と手応えを示した。
また塚越執行役員は、「AI & ML for Japan」について、Oracle Fusion Cloud SCMを例にあげて説明。「SCMは問い合わせが増えている分野のひとつである。特徴は、AIをビルトインしていることであり、支出分類や倉庫におけるサイクルタイム予測、新製品発売時の需要予測、生産異常検出などにおいて、使えば使うほど精度が上がり、価値の高い情報をもとに判断ができるようになる。SoRやSoEとは異なり、SoI(System of Intelligence)が注目を集めている。海外のヘルスケア分野では、AIを活用することで、痛みが発生する前の対処が可能になり、救急車を呼ぶ緊急連絡が3割減り、ナースコールが4割減少し、本来の緊急対応などにリソースが避けるようになったという実績が出ている」と語った。
Oracle CloudWorld 2023の発表内容を解説
なお米Oracleは、2023年9月に米国ラスベガスで「Oracle CloudWorld 2023」を開催。説明会では、その内容について、日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏が報告した。
「昨年のOracle CloudWorldは久々にワクワクしたと報告したが、今年はさらにワクワクした」としながら、ラリー・エリソン会長兼CTOが、要素技術の話に時間を割き、生成AIのトレーニングに最適なクラウドがOCIであること、Oracle Database 23cにAIを活用したベクトルデータベースを搭載したこと、NVIDIAスーパークラスター技術とCohereのLLMによって、生成AIを拡張する環境を実現していることなどを発表。さらに、Oracle Applications の製品開発を担当するスティーブ・ミランダEVPが、新機能の8割を顧客の要望に基づいて実装していることや、変化に対応することを目的にした開発姿勢(Designed for change.Built for you.)をあらためて打ち出したことなどを紹介。
「Oracle Fusion Cloud Applicationsは、強力なクラウドインフラの上で、ERPやSCM、HCM、CXを網羅しており、インダストリーとの連携とともに、アプリケーションとテクノロジーの両方を提供しているのが強みである。AIが搭載されるようになると、この強みがさらに発揮できる」と位置づけた。
Oracle CloudWorldでは、ユースケースを交えながら、Oracle Fusion Cloud Applications 全体における最新の生成AIの活用について発表があったほか、B2Bトランザクションを合理化および自動化するOracle B2Bの発表、Mastercardとのパートナーシップにより、組み込み型バーチャルカードペイメントの仕組みを発表したこと、AIを活用した新しいデータ分析プラットフォームであるFusion Data Intelligence Platformを発表したことなどを紹介した。
一方、日本オラクルの武藤バイスプレジデントは、国内SaaS市場の動向について言及。「国内SaaS市場は、今後4年間で約2倍に拡大すると予測されている。最新の機能に常にアップデートされるという強みが社会に認知されてきている。また、国内AI市場も今後4年で約2倍の市場規模となり、AIは、SCMやマーケティング領域での採用が始まっている。SaaSとAIの掛け算になり、新たな社会の価値を創出できるだろう」と発言した。
さらに、「ITは、社会変革のイネーブラーとならなくてはならないが、過去30年間に渡り、ITが、日本の社会変革に貢献していなかったのは大きな反省である。顧客の声に寄り添うことは大事だが、作り込みによって新たな時代の流れに追随できないという課題を生んでしまった。日本の社会を立ち上げなおすにはSaaSで貢献することが重要になる。B2Bソリューションに実装されるAIを活用することで、社会の変革につなげることができる。AIでDXに貢献したい」と語った。