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Sansan、インボイス制度で企業が取るべき対応を解説――経理担当者向け「適格請求書クイズ」も公開

 消費税の仕入税額控除の方式として、2023年10月に新たに導入されるインボイス制度。この制度に企業はどう対応するべきなのか。Sansan株式会社は24日、同制度に関する勉強会を開催し、Bill One Unit プロダクトマネジャー/公認会計士の柴野亮氏がその概要と対策について説明した。

Sansan株式会社 Bill One Unit プロダクトマネジャー/公認会計士 柴野亮氏

 インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の課題を解決し、控除金額を正しく計算するために導入される「請求書の発行と受領」に関する制度だ。

 例えば、店舗がメーカーから購入した商品を消費者に販売すると、店舗は消費者から得た消費税を納税する。ところが、同時にメーカー側も店舗が仕入れの際に支払った消費税を納税するため、サプライチェーン全体ではその商品に対する消費税が過剰に支払われていることになる。その差額をマイナスして納税する仕組みが仕入税額控除だ。

 ただし、仕入税額控除には2つの課題がある。それは、軽減税率制度によって現在消費税は8%と10%の2種類となっているが、適用される税率が記載されていないと正確な税金の金額がわからないことがひとつ。もうひとつは、課税売上高が1000万以下の法人や個人事業主は消費税の免税事業者となっているため、仕入税額控除によって納めるべき消費税が免税事業者の利益になっていることだ。

 そこでインボイス制度では、軽減税率の対象や金額の総額、消費税の記載を必須とするほか、仕入税額控除を受けるためには適格請求書発行事業者が発行した請求書の受領を必須とする。これにより、仕入税額控除の課題を解決するという考えだ。

 インボイス制度の下では「適格請求書」を活用し、正確な消費税額と消費税率を把握する。適格請求書に必要な記載事項は以下の通りだ。

1.適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
2.取引年月日
3.取引内容(取引が軽減税率の対象品目である場合はその旨を記載)
4.税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
5.税率ごとに区分した消費税額等
6.書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

適格請求書

 インボイス制度では、これまでの請求書では記載が求められていなかった、1の「登録番号」と、4の「適用税率」、そして5の「税率ごとに区分した消費税額等」を記載することが重要となる。

 では、具体的に企業はこの制度にどう対応するべきなのか。まず請求書を発行する側の企業は、適格請求書発行事業者として登録申請し、登録番号を発行してもらった上で、その番号を含めた必要項目を請求書に記載する。請求書の控えは、7年間保存しておくことが求められている。つまり、登録申請・追加記載・控えの保存という工数が新たに発生することになる。

 一方、請求書を受領する側の企業は、請求書が適格請求書発行事業者によるのものかどうか、登録番号を公表サイトで検索して確認する必要がある。また、適格請求書に必要な項目が記載されているかを確認し、その請求書を保存しておかなくてはならない。

請求書を発行する企業の対応
請求書を受領する企業の対応

 こうしてみると、請求書を発行する側の対応工数が増えることに目が行きがちだが、柴野氏は「実際には請求書を受領する側の方が、制度開始後も対応が必要で負担が大きい」と話す。取引先が適格請求書発行業者でなければ仕入税額控除を受けることができないため、特に免税事業者が多い業界では、「仕事を依頼する前に適格請求書発行業者かどうか確認する必要があるだろう」と柴野氏は述べている。

 ただし、取引先が適格請求書発行業者でなくとも経過措置があり、2023年10月1日から3年間は80%、その後3年間までは50%の控除が受けられることになっている。

受領側の方が発行側より負担が大きい

経理担当者向け「適格請求書クイズ」を公開

 このように、新しい制度への対応で企業の負担が増えることは明らかだ。Sansanによるインボイス制度への意識調査でも、経理担当者の約65%が同制度に対して不安を感じていると答えている。

 そこで同社は、経理担当者向けの学習コンテンツ「適格請求書(インボイス)クイズ」を同日より提供開始した。これは、受領した請求書が適格請求書の要件を満たしているかどうかを見分けるシミュレーションクイズで、例えば「タイトルが納品書になっていますが、適格請求書に該当しますか?」といったクイズに答えながら、実務に役立つ知識を身につけられる内容となっている。

 ちなみに、例題の答えは「適格請求書に該当する」である。適格請求書の必要要件に書面のタイトルは含まれていないため、納品書と書かれていても適格請求書に必要な要件が記載されていれば、適格請求書として扱うことができる。

 この制度に不安を感じている経理担当者は、まずこのクイズで学習してみてはいかがだろうか。

適格請求書クイズ 例題