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テクノロジーの重要性はコロナ禍においてさらに増している――、デル・テクノロジーズの米幹部が来日
2022年10月13日 13:00
デル・テクノロジーズ株式会社は12日、日本における事業展開や、サステナビリティおよびESG(環境、社会、ガバナンス)に関する方向性などについて説明した。
来日した米Dell Technologies インターナショナルマーケット プレジデントのアンガス・ヘガティー(Aongus Hegarty)氏は、「日本のビジネスは、2023年度上期(2022年2月~7月)も好調な結果になった。日本には大きなオポチュニティがある。日本の景気を押し上げ、イノベーションを活性化することを支援できる」などとした。
ヘガティープレジデントは、日本をはじめとするアジア太平洋、欧州、中東、アフリカ、中国、中南米など、170カ国以上のインターナショナルマーケットを担当。5万人以上で構成されるセールス、ソリューション、プロフェッショナルサービスのチームを率いている。Dellでは約20年の勤務経験がある。
「Dellは1989年に日本に進出したが、現在、社員数は4000人近くに達し、売上高は約40億ドルとなっている。日本各地にオフィスがあり、さまざまな領域に投資をしている。自然災害からの復興支援や、ワークスイルイノベーションの支援も行ってきた。フォーチュン500社の10%以上が日本の企業であり、金融、自動車、ハイテク、通信などの分野に広がっている。また、日本政府のデジタル戦略も活発であり、当社はそれを支援していきたと考えている。日本は世界的に見ても重要な市場である。イノベーションという観点では最前線にあり、失業率が低く、経済的にも安定している。だが、日本では、労働生産性を高めなくてはならないほか、5Gやデジタル決裁、自動運転、官公庁のデジタル化を推進していく必要がある」などと述べた。
一方、ESGの取り組みについては、「Dellは、人類の進化を促進するテクノロジーの実現を目指している。つまり、ESGの考え方が浸透している企業である。すべてのビジネスにおいて優先項目のひとつになっており、それが企業カルチャーになっている」と前置きし、「サステナブルなPCを開発し、グリーンなデータセンターを実現し、APEXによるas a Serviceも推進していく。地方都市におけるブロードバンド網の整備や、デジタルインクルージョンの推進、セキュリティの強化、AI倫理の徹底も行っている」などとした。
Dellは2030年までに、販売した製品と同等の製品を再利用およびリサイクルすること、梱包材の100%をリサイクル素材または再生可能な素材から作成すること、製品内容の半分以上を、リサイクルまたは再利用可能な材料から作ることを目標に掲げている。また、2050年までに、スコープ1・2・3において、温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロを実現することや、Dell Technologiesのすべての施設において、2030年までに電力調達の75%を再生可能エネルギーにし、2040年までには100%に引き上げる計画も打ち出している。
さらに循環型経済への取り組みについては、2006年から開始していることに触れながら、ノートPCのサステナブル設計を目指す「Concept Luna」について紹介した。
Concept Lunaは、ノートPCの設計を見直すことで、マザーボードのサイズを70%削減したり、構成部品を20%削減したりといった設計のほか、CO2排出量の削減にも貢献。カーボンフットプリントでは50%の削減を目指している。また、100個近いネジを使用していたものを、4個にまで減少。ユーザー自身が修理しやすいように設計しているのも特徴だ。
多様性については、2030年までに世界中の社員の50%、世界中の管理職の40%を女性にする目標を打ち出しており、現在、社員の33.9%、管理職の28.2%を女性が占めているという。前年に比べていずれも2ポイント上昇している。
また2030年までに、全世界10億人に対して、Dellのテクノロジーを通じて、教育や医療などにおける永続的な成果をもたらすこと目指しており、6600万人に新たにリーチができたことを報告。これによって、合計で1億6000万人にまでリーチができているという。「NPOとの連携を強化したり、デジタルライフケアプログラムを通じて、より多くの人にリーチすることができた」という。
このほかDell Technologiesでは、オーストラリアにある世界最大のサンゴ礁「グレートバリアリーフ」の保全活動を支援しており、新たに設計したディープラーニングモデルを活用することで、グレートバリアリーフで撮影、収集した大規模な画像データを、短時間で正確に分類することが可能になり、サンゴ礁の保全につなげることができているという。
日本におけるサステナビリティに関する取り組みでは、2021年4月から、NTTデータと提携し、ビジネスバリューチェーンやCSRなどの領域において協働していることを紹介した。
またヘガティープレジデントは、過去最高となった2023年度第2四半期(2022年5月~7月)の業績についても説明。売上高は前年同期比9%増の264億ドル、営業利益は前年同期比25%増の12億7000万ドルとなったことに触れながら、「サーバーなどのインフラ製品を担当するインフラストラクチャーソリューショングループ(ISG)と、PCをはじめとしたクライアントソリューショングループ(CSG)が、ともに堅調な業績となっている。景気減速やインフレ、サプライチェーンの問題など、企業を取り巻く環境は厳しいが、そうした環境においても当社が価値を提供できていること、多くの企業がDXに優先的に取り組んでいること、競合に対する優位性があることが背景となり、当社の業績向上につながっている。企業がテクノロジーに対する投資を惜しまないことが、コスト削減や攻めの経営につながり、インフレへの対抗、労働力不足などの課題も解決できる」などと述べた。
さらに、「業績が好調な理由のひとつに、サステナビリティへの取り組みがあるのは確かだ。日本を含む多くの国において、ベンダー選定や調達要件のなかにESGに関する要件が含まれている」と述べた。
加えて、「好調な業績を背景に、当社は、as a Serviceや5G、エッジなどの新たな成長分野への投資も行っている。また、エンドトゥエンドの業界随一の幅広いソリューションを持っている。チャネルパートナーの規模でも業界最大である。グローバルサービスのフットプリントも大きく、グローバル規模の柔軟なサプライチェーンも持っている。アフターサービスにおいも優れている。これにより、競合に差をつけることができている」とし、過去3年間の研究開発投資額が75億ドルを超えること、特許は出願中のものを含み2万6000件以上になっていること、ISGに所属しているエンジニアのうち、85%がソフトウェアエンジニアであることなどを示した。
「テクノロジーの重要性はコロナ禍において、さらに増している。Dellは世の中において欠かすことができないテクノロジーカンパニーになりたいと考えている。当社は将来に対しても明るい展望を持っており、業界を牽引し、顧客のイノベーションを推進する存在になりたい」と語った。
APEXについては、「as a Serviceに対する引き合いは日本だけでなく、全世界で大きくなっている。マルチクラウドに対応するために、モダンなインフラを活用したいというニーズが高まり、as a Serviceへのシフトが急ピッチで進んでいる。初期投資が不要になることもメリットである。Workforce TransformationやPC as a Serviceの領域が進んでいる」とする。
第2四半期業績で、APEXのARR(年間定額収益)で初めて10億ドルを突破している。受注は前年同期比78%増と好調だ。「これまでとは異なるビジネスモデルへと変化することによって、売り上げが減少することは織り込み済みである。as a Serviceは大きな流れである。複数年をかけてas a Service化を推進し、数年先には、すべての製品がAPEXになる」と述べた。
また、「日本においてはDXが加速しており、マルチクラウドの世界に進むべきだという判断がある。APEXで提供しているFlex on DemandやStorage as a Service、Compute as a Serviceなどのサービスメニューを日本に優先的に持っていくことを考えている」と述べた。
Dellは、PC、コンピュート&ネットワーキング、ストレージをコアビジネスとし、エッジ、テレコム、マルチクラウドなどの6分野を新たな成長事業と位置づけている。
特にマルチクラウドについては、「90%以上の企業がオンプレミスとクラウドの両方を利用しており、75%以上の企業が3つ以上のクラウドを利用している。マルチクラウドの潮流をとらえて、イノベーションパートナーとともに、顧客を中心としたマルチクラウドエコシステムを構築している。当社では、マルチクラウド・バイ・デザインという考え方を提唱しており、単に複数のクラウドを寄せ集めるのではなく、マルチクラウドとしての設計を重視することで、適切なワークロードを、適切なクラウドで利用でき、競合他社と差がついたクラウド利用が可能になる」と語った。
またPCについては、「この時代においても重要な生産性ツールである。生活のなかでも欠かせないものとなっており、仕事や学習のほか、ショッピング、ゲーム、エンターテインメントなどでも利用できる。当社のPCビジネスは好調であり、シェアを伸ばしている。日本でも好調である」と語った。