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Dell Technologies、新たな“as-a-Service”ポートフォリオ「APEX」のラインアップを発表
Dell Technologies World 2021にてお披露目
2021年5月10日 06:00
米Dell Technologiesは、同社年次イベント「Dell Technologies World 2021」を5月5日・6日(米国中部時間)の2日間、オンラインで開催した。
同社のマイケル・Dell会長兼CEOによる基調講演のほか、100以上のブレークアウトセッションやデモ、ハンズオンラボが行われ、200以上の専門家が登壇。250以上のホワイトペーパーや製品ビデオなどが公開された。ITインフラやアプリケーション、デバイス、セキュリティなどの最新技術が紹介されるなかで、今回のイベントにおける最大の目玉として発表されたのが、「Dell Technologies APEX」だ。
APEXは、企業のテクノロジー利用を簡素化するas-a-Serviceポートフォリオの新たなブランドであり、企業のニーズに合わせて、最適なテクノロジーやサービスを選択できる。インフラの構築と管理はDell Technologiesとパートナーが行うことから、これまでのような物理的なITインフラの調達や管理、保守、サービスに伴う時間や複雑さを軽減可能な点が特徴。必要に応じてITをスケールアップして、新たなアプリケーションを展開したり、新規プロジェクトを立ち上げたりしながら、組織の変化やニーズの変化に対して、柔軟に対応できるという。
Dell Technologies ビジネスユニットマーケティング担当のサム・グロコット シニアバイスプレジデントは、「世界中の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速しようと考えており、そこにおいては、61%の企業がITインフラをコンサンプション(消費)モデルlに移行したいと考えている。また、リスク低減や高いパフォーマンスを実現するプライベートクラウドと、オペレーションのシンプルさや俊敏性を持つパブリッククラウドの、双方のいいところを利用するために、2つのクラウドの橋渡しが可能なハイブリッド型ソリューションがDell Technologiesに求められている」と前置き。
「それを実現するのがAPEXだ。適切なテクノロジーとサービスを組み合わせて、ひとつのサブスクリプションとして提供できる。Dell Technologies自らから生まれ変わっていくためのポートフォリオになる」と説明した。
なお、Dell Technologiesでは2020年10月に、as-a-Serviceに関するビジョンとして「Project APEX」を発表していたが、今回の「APEX」は、製品ポートフォリオを体系化し、具体的なソリューションとして発表したものになった。
同社では、「DXをシンプル化し、ITの俊敏性を高め、制御を実現することができるas-a-Service」に位置付けており、今後、同社が提供するas-a-Serviceは、APEXのブランドで展開することになるという。
「APEXによって、企業はインフラ管理よりもイノベーションやビジネスにフォーカスでき、単一のコンソールを通じて管理を行える。また、プロジェクトを素早く実行し、ステークホルダーにいち早く価値を提供する俊敏性も実現。使用した分だけを支払えばいいモデルを提供することができる。適切な場所でデータを管理でき、セキュリティが担保された環境で利用が可能になる。いまの時代に求められているイノベーションのスピードに合わせた環境を実現できる」とした。
APEXは、あらゆる業界や、あらゆる企業規模での導入が可能であり、将来の予測が立たないコロナ禍においても、柔軟な対応とコストの最適化が行えるといったメリットを発揮できるとしている。
Storage-as-a-Serviceの「APEX Infrastructure Services」
Dell Technologies World 2021では、APEXに関して、5つの発表を行っている。
ひとつめは、「APEX Infrastructure Services」のひとつとして提供される「APEX Data Storage Services」である。これは、APEXポートフォリオの第1弾となるもので、Storage-as-a-Serviceとして提供する。
「世界No.1のストレージベンダーであるDellが提供するエンタープライズストレージを活用。ストレージの所有権はDellが持ち、管理やメンテナンスもDellが行う。企業はその上で動作するアプリケーションを管理することになる」(Dell Technologies APEX ポートフォリオ担当のアカンシャ・メロートラ バイスプレジデント)という。
データサービス、パフォーマンス、ベースキャパシティ、サブスクリプション期間、ロケーションの5つのパラメータから選択することで利用が可能になる。
「基本容量は50TBからスタートでき、1年あるいは3年のなかから選択可能だ。また、それぞれの要件に合わせてブロック、ファイル、ストレージの3つのサービスを選べる。価格設定は透明性が高く、追加料金なしで利用が可能。急に容量が増加したときもバッファ分を利用でき、調達のプロセスもシンプルである。導入からインストールまで、14日間での提供が可能である」とした。
一貫したクラウド体験を提供する「APEX Cloud Services」
2つめは、「APEX Cloud Services」だ。
パブリッククラウドやプライベートクラウド、エッジのすべてをおいて、一貫したクラウド体験を提供するものであり、オファータイプ、インスタンスタイプ、インスタンスの数量、サブスクリプション期間を選ぶことにより、14日間での導入が可能。拡張も最短5日間で行えるという。
「パブリッククラウドとオンプレミスのニーズのギャップを埋められ、一貫性を持ったセキュアなマルチクラウドの環境が実現できる。例えば、VDIのワークロードを稼働させたい場合には、アクセラレータの最適化といったタイプを選択するだけでいい。オペレーションの簡素化と合理化を実現でき、運用コストを削減しながら、全体的なクラウドIT支出の管理を行える」という。最大で86%高速なハイブリッドクラウド環境を利用することができる。
最も幅広いテクノロジーポートフォリオをas-a-Serviceとして提供
3つめが、「APEX Custom Solutions」である。
「業界で最も幅広いテクノロジーポートフォリオを、as-a-Serviceとして提供するもので、より柔軟なas-a-Serviceを求める企業に適したものである」と位置付けた。
ここでは2つのサービスを用意している。
まずひとつめは「APEX Flex On Demand」である。Dell Technologiesのサーバーやストレージ、データ保護ソリューション、HCIを従量課金で提供するものであり、求める製品とサービスを指定すればすぐに使用でき、必要に応じてスケールアップやスケールダウンができる。「業界最大のポートフォリオのなかから、ユーザー環境に最適なものを選択できる。魅力的な料金体系になっている」という。
もうひとつの「APEX Data Center Utility」は、カスタムメータリングおよびマネージド サービスを、データセンター全体に適用することで、これを従量課金で運用するなど、さらに高いレベルの柔軟性を提供できるとした。
APEX Custom Solutionsは、全世界30カ国以上で展開し、日本でもサービスを提供。パートナーを通じた展開も行う。
APEXのライフサイクル全体を1カ所で管理する「APEX Console」
4つめが、「APEX Console」である。APEXのライフサイクル全体を1カ所で管理することが可能であり、「わずか数ステップで、セルフサービス型のインタラクティブ体験を享受できる」と述べた。
企業が求める成果を実現するための適切なテクノロジーとサービスをマッチングし、最適なものをサブスクライブ。APEXで提供されるサービスをモニタリングし、管理することで、IT環境を簡素化するほか、常に最適化を図れるという。
「利用状況レポートおよび支出レポートを確認して、変化するビジネスニーズに合わせてAPEXサービスを調整し、必要に応じて拡張したり、撤去したりといった作業も可能になる。次回の請求額も事前に確認できる」とした。
APEXによるパートナーシップ
最後がAPEXによるパートナーシップである。ここでは、エクイニクスとの協業を発表した。これにより、APEXをグローバルコロケーションサイトにまで拡張でき、APEXの可用性が大きく広がるとしている。
「データセンターは管理したくないが、パブリッククラウドの環境に縛られたくないという場合に最適なオプションである。Equinixとのコラボレーションによって、Dell Technologiesが所有、管理、維持するコロケーションのインフラを、企業は使った分だけ、1件の請求書にまとめて支払うことができる。全世界のセキュアにインフラを利用できる点も大きな特徴である」と説明した。
さらに、販売パートナーにとっても、APEXによって、Dellが管理するリソースを活用でき、ITサービスに関する複雑性を排除。価値の高いソリューション提案や、業界特化型の戦略的なビジネスにフォーカスした提案活動が可能になると位置付けた。
「APEX Consoleを販売パートナーに提供することで、パートナーが顧客に変わって管理するといったことも可能になる。また、販売パートナーには、業界最高レベルとなる20%のリベートを提供しており、利益性の高いビジネスを継続的に行える。セールスサイクルを最適化し、新たな顧客もカバーできる」と述べた。
一方、エッジソリューションに関して、ストレージでの分析、処理をエッジで行う「Dell EMC Streaming DataPlatfrom」、製造業向けの「Dell Technologies Manufacturing Edge Solutions」、鉄道分野におけるDXを支援するためにDuos Technologiesとのパートナーシップによるソリューションを提供することを発表した。
Dell Technologies クラウドエッジテレコミュニケーション担当のヴァルン・チャブラ(Varun Chhabra)バイスプレジデントは、「何百万というデバイスから流れてくるストリーミングデータを分析することで、より速い意思決定ができるようになる。また、APEX Private Cloudによって、スマートマニュファクチャリングを実現するソリューションをPTCとのパートナーシップで実現する。これは、アプリケーションとインフラをひとつのパッケージで提供する」と説明した。
また「もうひとつの鉄道向けエッジソリューションは、貨物列車の走行前の安全点検を変革するもの。1車両あたり8分の点検時間がかかると、120車両では16時間に及ぶ点検作業を行うことになる。しかし同ソリューションでは、車両に搭載した高性能カメラと線路脇のエッジソリューションを組み合わせることで、貨物列車が走行中に点検を行えるため、点検のために車両を停止させる必要がなくなる」と説明した。