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大塚商会の2021年度連結決算、増収も営業利益が微減 上期・下期で大きく異なる結果に

 大塚商会は1日、2021年度(2021年12月期)の決算を発表した。

 連結の売上高は、前年比1.9%増の8518億9400万円、営業利益は同0.9%減の558億2700万円、経常利益はほぼ前年並みの575億6700万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同1.6%増の399億2700万円となった。代表取締役社長の大塚裕司氏は、「上半期、下半期で大きく異なる結果となった。計画未達のマイナスとなり、特に売上と純利益が公表数字に届かなかったことをおわびしたい」と話した。

2021年12月期 決算の概要
代表取締役社長の大塚裕司氏

 大塚氏は2021年度の業績について、「下期には新型コロナウイルスが落ち着くという見通しのもとに計画を立てたが、7月以降は感染者が増加したことで計画が大幅に狂い、上半期・下半期で大きく異なる結果となった。2019年度はWindows 7サポート終了の影響で業績が伸び、2020年度はGIGAスクールでのパソコン導入による影響で業績が伸びた。それに対し、2021年度は基本部分は堅調だったものの、計画値には届かなかった」と分析した。

 セグメント別売上高(連結)では、システムインテグレーション事業が前年比0.6%減の5236億900万円、サービス&サポート事業は同6.0%増の3282億8400万円。

 詳細セグメント別売上高(単体)では、SI関連商品が3906億2100万円、受託ソフト等が506億9900万円、サプライが1627億600万円、保守等が1626億9700万円。「SI関連が前年から25億円のマイナスとなり、課題がSI関連商品であることが明らかになった」(大塚氏)とした

セグメント別売上高(連結)
詳細セグメント別売上高(単体)

 四半期推移は連結売上高、連結経常利益ともに、「環境変化によって苦戦している状況が明らかになった」(大塚氏)という。新型コロナウイルスの感染者が増加した第3四半期(2021年7月~9月)は第1四半期、第2四半期と比較し売上高、経常利益が落ち込んでいる。経常利益に関しては、「角度だけ見ると少し戻ってきてはいるものの、やはり上半期、下半期で全く様変わりしている」(大塚氏)と説明した。

 第3四半期は新型コロナウイルス感染者が増加したことと共に、大塚商会にとって下半期で人事刷新があり、新体制で事業に臨んだタイミングとなる。さらに、半導体不足などの影響で商材が思うように確保できない事態も起こった。「下半期は、新体制で臨んだもののコロナで十分な対応ができなかった。物不足についても、上半期はなんとか頑張ったものの、下半期はコピー機をはじめ、物の確保に苦労した。ベトナムがロックダウンした影響による部材不足でコピー機も品不足となった。原材料費が上がったことで、お客さまも慎重な姿勢となったことも影響した」(大塚氏)

売上高の四半期推移(連結)
経常利益の四半期推移(連結)

 重点戦略事業の売上高(単体)は、たのめーるが前年比6.2%増の1735億2800万円、SMILEが同1.9%減の113億4500万円、ドキュメント事業ODSは同5.7%増の550億8400万円、セキュリティ事業OSMは同4.8%増の857億6900万円。

 販売台数は、複写機が前年比1.1%増の3万7039台で、うちカラー複写機は同1.6%増の3万6249台。サーバーは同3.5%減の2万4606台。パソコンは同5.7%減の144万9698台、タブレット等含むクライアント機全体では同0.8%減の162万4893台となった。

 「たのめーるは2015年以来、久々の100億円増となった。パソコンは昨年はGIGAスクールによる特需があったため台数は大きく落ち、さらに品不足が影響している。今後のパソコン需要だが、DX推進の流れは今後も続くと考える。中小企業についてはテレワーク実施も含め、対応ができていないところも多いため、これからも需要はある。さらに1、2年後にはWindows 10パソコンの入れ替え需要が出てくるため、さらにパソコン導入を増やしていく素地はある。複写機については、上半期と下半期で大きく状況が変わったのが2021年度。メーカーの数字よりも若干伸長している。コピー保守については安定した状況で、コロナの影響は一巡したのではないか」(大塚氏)。

重点戦略事業の状況(単体)

 Webサービスについては、2021年度1年間で340万人が利用しているが、利用人数が大きかったのは、業務のサポートプログラム「たよれーる」のITサービス部分で79万人が利用。ホスティングサービス「どこでもキャビネット」は25万人が利用した。

 サプライや契約保守売上高などストックビジネス売上は3137億円となり、「上場した時点の売上高と匹敵する規模となってきた」という。

 今後の計画については、基本方針に変更はないものの、中期計画として「営業利益率・経常利益率ともに7%定着」を掲げる。「昨年は6.6%で停滞した状況が続いている。もう一皮むける必要がある」と、実現に向けては見直しが必要であるとした。

 具体的には、「2021年度の下半期、7月以降はコロナの影響もあって商談件数が低下した。活動が制約された影響もあって、行きやすいお客さま、売りやすい商材に偏る傾向があった。全商品を全社員が販売できる体制を作るという目標は、上長には浸透したものの、現場社員までは定着していない。今後の課題といえる。現場主導で営業成績が上がってきたものの、それが横ばいになっている。これまでのやり方だけでは限界があり、お客さまにより沿った、新しいやり方に変わっていく必要がある」と2021年度を反省した。

基本方針と中期計画

 下半期の営業不振の要因として、営業スタッフ1人当たりの1日の商談件数が低下傾向にあること、一企業に売り込む商材数が限られていることから、全商材を生かせる会社への転身を進める。

 「当社のお客さまは28.7万社あるが、このうち3分の2が、たのめーるだけのお客さま。オフィス内には当社が扱っているさまざまな商材が導入されているものの、他社が導入している。当社が扱う商材は約2400社のパートナーの商品で、これをソリューションとして28.7万社のお客さまに販売できる会社へ変わっていく必要がある」とし、営業スタッフがより多くの商材を扱える営業を行う会社への転身を目指す。

 「そのために営業プロセス変革を進める。よく言われるモノからコトへと活動の軸足をシフトさせる。お客さまにもっと深く入り込み、商品ありきではなく、お客さまの困りごとを解決するスタイルへと変わらなければならない」(大塚氏)。

下期不振の要因

 その武器として活用するのが営業支援システム「大戦略Ⅱ」だ。リアルな訪問商談に加え、Web、アウトバウンドセンターを組み合わせ、顧客との関係性を強化していく。新しい営業スタイルを定着させるために大塚商会自身もマネジメント改革、社内評価制度の見直し、労働分配率の引き上げを実施。「常にお客さまとつながり、関係を強化する」ことを標榜する。

 大戦略Ⅱとともに、AIを活用し営業スタッフのパーソナル秘書となるAIアシスタント、AI活用で社内スタッフの状況を把握するウェルビーイングの実現なども行いながら、営業活動を支援していく。

大戦略Ⅱ

 2022年度(2022年12月期)の見通しについては、会計基準が変更され「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)」となることから、主にサービス&サポート事業の一部の取引が、純額で売上計上する方法に変更となる。

 その影響もあって、売上高は前年比2.8%減となる8280億万円、営業利益は同4.0%減の536億円、経常利益は同5.3%減の545億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同8.2%減の366億円となる。セグメント別売上高計画は、SI事業は前年比99.1%、サービス&サポート事業は同104.8%。

 2021年度の決算結果に新会計基準を適用した場合と比較すると、売上高の前年比は1.2%増となるが、大塚氏は営業体制に反省材料があるとの見方を示し、「このままでは売上高8000億円の企業で終わってしまう」と、営業プロセス変革を実施していくことを強調した。

 大塚氏はさらなる成長に強い意欲を示し、「大戦略Ⅱを活用し、成長を続ける。この状況のままでは8000億円企業で終わってしまう」と現状打破していく姿勢を明確にした。

売上高・利益の計画(連結)