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大塚商会、2020年度中間決算はコロナ禍で減収減益に
通期見通しの利益は下方修正せず
2020年8月7日 23:06
株式会社大塚商会は7日、2020年度(2020年12月期)中間決算を発表した。それによると、連結売上高は前年同期比3.8%減の4329億4300円、営業利益は同10.5%減の303億1000万円、経常利益は同10.8%減の309億6300万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同11.6%減の207億8900万円で、減収減益となった。
この結果について、代表取締役社長の大塚裕司氏は、「第1四半期は順調だったものの、3月後半から在宅勤務にシフトし、上期は各項目とも未達となった」と説明。新型コロナウイルスの影響が大きく、減収となった。
これを受け、通期見通しも修正する。2020年2月3日に発表したものと比べ、売上高は250億円下回る8390億円。前年比では2.9%減となる。ただし、営業利益、経常利益、当期純利益は2月の予想のまま修正しない。
☆お詫びと訂正用囲み
【お詫びと訂正】
- 初出時、「売上高は2億5000万円下回る」としておりましたが、「250億円下回る」の誤りです。お詫びして訂正いたします。
大塚社長は、「現状は7月でかなりカバーしている。努力すれば、利益については下方修正はしなくて済むと判断した」と、下半期にて盛り返せることを強調した。
セグメント別の業績
2020年1月~6月の業績は、単体では売上高は前年同期比5.3%減の3856億9900万円、営業利益は同11.9%減の267億9100万円、経常利益は同10.7%減の285億2800万円、純利益は10.6%減の同197億8400万円。連結、単体ともに売上高、利益ともに前年を下回った。
「1企業あたりの売上高は、第1四半期は前年並みだったものの、第2四半期は前年より13.9ポイント減となった」(大塚社長)という。
連結業績は、売上高、利益ともに前年を下回っているものの、一昨年(2018年)との比較では売上高、利益ともに上回っている。
セグメント別売上高は、システムインテグレーション事業はテレワークや働き方改革への対応といった需要はあったものの、前年に高い伸びとなったパソコン販売台数の反動減や緊急事態宣言発令後の営業活動の制約などがあり、売上高は5.4%減の2817億5500万円。
サービス&サポート事業では、テレワークによるオフィス利用の減少に伴い、オフィスサプライ通信販売事業「たのめーる」の売上高が前年を下回った。またサポート事業「たよれーる」は、複写機の保守サービスが売上高で前年割れとなったが、テレワークに関連するサービスやネットワークサービスなどの保守サービスが伸び、保守等全体の売上高は前年を上回った。トータルでは、売上高は前年同期比0.7%減の1511億8700万円となった。
単体の詳細セグメント別売上高は、SI関連商品が2088億7200万円、受託ソフト等が268億4500万円、サプライが753億7300万円、保守等が746億800万円。「サプライが前年から19億円減となり、以外に影響があった」(大塚社長)。
連結売上高の四半期推移では、第1四半期は前年を上回ったものの、第2四半期は前年を下回った。「前年にパソコン特需があったことを考えると、第2四半期も2018年は上回っている」(大塚社長)と説明する。ただし、経常利益の四半期推移では、第1四半期は前年を上回ったものの、第2四半期では前年、前々年も下回っている。
2020年4月~6月の業績は、連結、単体ともに減収減益となった。これは、「2008年秋にリーマンショックが起こり、その後の2009年以来、11年ぶり。対面営業が減少したことで、新規顧客へのアプローチ、ソリューション提案がいったん中断することとなった」(大塚社長)ことが原因だと分析している。
単体の詳細セグメント別売上高増減率の四半期推移では、どのセグメントでも第2四半期が大きく落ち込んでいることが明らかとなった。特に大きく落ち込んだのがコピー機関連で、「オフィスに人がいないために。用紙も売れない。保守費用も入らない。こうした状況がボディブローのようにきいてきた」と在宅で、オフィスに人がいなくなったことの影響だったことを明らかにした。
「第1四半期の段階で、コピー保守は10億円くらいのマイナス影響があるものと考えていたが、実際には第2四半期が終わった段階で21億3000万円の減収となった」(大塚社長)。
ただし、明るい材料もあった。コピー機以外のシステム保守は、20億5000万円増加。コピー保守のマイナスをカバーした。
顧客企業の年商区分別では、大きな変更はなかったが、「大企業が在宅勤務への切り替えでスパッと(商談が)止まったものの、中堅層は意外と手堅い動きを見せた」(大塚社長)と需要には違いがあったとした。
業種別売上構成では、「ほとんどの業種がマイナスだが、学校・官公庁の数字は伸びている」と不況時に強みを発揮する官需の強さがあったことを指摘した。
キャッシュフローについては、「マイナスは配当にかかった費用。財務的には健全を保っている」と問題がないことを強調した。
重点戦略事業の状況
重点戦略事業の状況は、「たのめーる」は11%減の366億7000万円。「SMILE」は33.4%減の29億5500万円。ドキュメントソリューション事業「ODS」は19.3%減の137億8900万円。セキュリティ事業「OSM」は3.0%減の198億8200万円。
複写機は18.1%減の9514台で、そのうちカラー複写機は18.1%減の9216台。サーバーは24.8%減の6376台。パソコンは34.7%減の27万91台、パソコンを含めたクライアント合計は33.4%減の28万3065台。
「テレワークでタブレット需要は結構伸びた。セキュリティソリューションは、在宅でテレワーク実施の際にセキュリティ対策が必要となるといった需要があった」(大塚社長)。
たのめーるに関しては第2四半期でマイナスとなったが、「これもオフィスに人がいない影響。ただし、口座数に関しては増加しており、オフィスに人が戻れば口座数が伸びていることは生きてくると思う」(大塚社長)と新たな需要を開拓する窓口として、たのめーるへの期待をアピールした。
Webサービス利用者数は、テレワーク時に威力を発揮する社外からもファイル等にアクセスできる「どこでもキャビネット」などが利用者を増やしたこともあって、2020年6月時点で280万人の利用者を獲得した。
サプライ、契約保守などのストックビジネスは、コロナの影響でコピー機の保守費用が減った影響もあり、前年同期から3億円減少した。
パソコンの販売台数は、前年の特需から減少しているものの、「テレワークで需要が出たこともあり、Windows XPの時のような、前年の半分になるような落ち込みとはなっていない。2018年を上回っている」と手堅い需要となっていたという。
複写機は新規需要がなくなり、第1四半期、第2四半期ともに前年割れとなった。ただし、紙の書類を電子化するソリューション提案といった需要を継続的に行った結果、「粗利率は上がっている。ソリューション型への変更はさらに進めていく」方針だ。
サプライとコピー保守売上の四半期ごとの増減率では、「5月は想定以上に落ち込んだ。ただし、6月以降は回復基調にある。V字回復とはいかないものの、回復はしてきている」と7月以降緩やかに回復していると強調した。
今後について
今後については、セールス活動でのAI活用を進め、落ち込みをカバーしていく考え。
「2月に行った業績発表の際、社内でオリジナル営業支援システム『大戦略』を『大戦略2』として強化することをお話ししたが、上半期から現場では利用が始まっている。さらに戦略的な営業活動を進めるために、AI活用を強化する。現在、3部門で利用し、トライアルから経験を重ね、ノウハウを蓄積させていく。具体的な活用方法としては、商談予定はすべて登録されているが、空き時間がある場合、AIがレコメンドして自動的に予定を入れ、すき間時間を作らないようにする。商談の際の提案内容についても、自部門以外の商材も紹介するといった、営業担当者自身では気づけなかった部分をフォローすることで、10ポイント程度営業成果が底上げされている」(大塚社長)。
また、iPhoneを秘書代わりに活用し、訪問する顧客の情報、これまでの提案内容といった情報を提示するAIアシスタントとして活用する。現在では全営業の半数が利用し、利用件数も月間3万回となっている。
インサイド・ビジネス・センターは、面談での商談が難しい中、テレワークをきっかけとした問い合わせ件数の増加があったこともあって口座獲得数を増やしている。前年同期に比べ、口座獲得数は1.6倍となった。
社内でのIT活用も強化しており、RPA、チャットボットを積極活用。RPAは6月には1万時間を超える業務自動化を実現した。チャットボットは稼働本数82本、月間9万件の質問が寄せられるようになっている。こうした成果は、ノウハウとして顧客向け商談に活用していく。
AIとともに、外部の専門家との連携も強化する計画で、中小企業診断士、税理士などとの連携により、経営サポートを行っていく。
顧客に対する商材数は今後も増加させていく方針だが、これは「コピー機に走りすぎて業績を落とした過去がある。そうならないよう、1企業あたりの商材数は増やしていく」(大塚社長)という過去の反省が要因となっている。
取り扱う商材がコピー機、サーバー、パソコン、ネットワーク、ネットワーク機器など多岐にわたることについては、「テレワークを実施するにあたり、ITシステム、ネットワーク関連とからみあった需要に応えることができた」(大塚社長)あらためて自社の強みであるとアピールした。
通期見通しについて、売上高は下方修正したものの、利益は変更しなかったことについては、「6月に決めきれなかった商談が動き出した。7月でかなりの分をカバーしており、努力すれば、利益は下方修正することなく達成できる」と強気な見通しを示している。