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大塚商会の2022年度中間決算、会計基準変更で減収減益も第2四半期は好調

大塚社長は前向きな見方を示す

 大塚商会は、2022年12月期の中間決算(2022年1月~6月)を発表した。

 今年度から、会計基準として「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用していることから、売上高は前年度までと比較し、コピー保守料金を中心に181億円減少している。その結果、第2四半期累計(連結)の売上高は、前年同期比4.6%減の4453億3600万円、営業利益は同7.4%減の307億7800万円、経常利益は同7.3%減の317億4700万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同3.4%減の228億4800万円となった。

2022年1~6月 業績の概況

 前述の通り、「収益認識に関する会計基準」等の適用により、第2四半期連結累計期間の売上高は181億7000万円減少、前第2四半期連結累計期間に同様の基準を適用した場合、売上高の増減率は前年同期比1.0%減となる。

 代表取締役社長の大塚裕司氏は、「会計基準変更により少しわかりにくいかもしれない。単体業績は目標値をクリアできたが、連結業績売上高は4.6%減となった。前年基準でいえば連結では1.0%減、単体では0.5%減であと一歩というところまで行った。前年度の第1四半期はGIGAスクール関連実績で233億円という特需があり、それがあってもここまで追い込むことができた」と述べ、減収減益とはなったものの、前向きな見方を示した。

代表取締役社長の大塚裕司氏

 なお通期見通しについては、期首に発表した売上高は前年比2.8%減となる8280億円、営業利益は同4.0%減の545億円、経常利益は同5.3%減の536億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同8.2%減の366億円から変更しない。AIを活用した営業、働きがいのさらなる強化といった新しい施策も実施していく。

売上高・利益の計画(連結)

現状は決して不調ではない

 大塚社長は上半期の業績について、「会計基準変更がなければ、売上高、利益はWindows 7のサポートが終了した2019年度時点の数字を上回っている」と述べ、現状は決して不調ではないとの見方を示した。

 連結決算対象となる企業は、前期から変わらずにOSK、ネットワールド、アルファテクノ、アルファネットの4社だが、「ハイパーコンバージドシステムなどの製品販売、技術サポートを行うネットワールドは、商談は順調だったものの、6月末時点でサーバーの品不足などによる受注残が前年度比で50億円増加したことなど、業績にマイナス影響があった」という。

 セグメント別売上高は、システムインテグレーション事業が前年同期比5.0%減の2870億3700万円、サービス&サポート事業が同3.7%減の1582億9900万円。「システムインテグレーション事業のマイナスは、前年度のGIGAスクール案件の影響が大きかった。また、サービス&サポート事業は会計基準変更の影響があったためにマイナス成長に見えるが、実際には堅調なビジネスとなっている」と大塚社長は説明している。

 単体詳細セグメント別売上高もほぼ同じ傾向で、SI関連商品の売上は2215億8700万円、受託ソフト等が268億2000万円、サプライが852億6700万円、保守等が714億4600万円となった。

セグメント別売上高(連結)
詳細セグメント別売上高(単体)

 連結売上高の四半期推移を見ると、第1四半期は前年度にGIGAスクール特需があったことから前年同期比12%減の2100億円、第2四半期は同3%増の2352億円。経常利益は、第1四半期は同17%減の143億3800万円、第2四半期は同2%増の174億800万円。

 この結果に対し大塚社長は、「第2四半期は売上、経常利益とも前年からプラスとなる堅調な業績となった。物流費などの増加を吸収しながら、営業利益でも前年比増となり、うれしく思っている」と第2四半期から業績が回復していることを強調した。

売上高の四半期推移(連結)
経常利益の四半期推移(連結)

 重点戦略事業の状況としては、「たのめーる」、「SMILE」、ドキュメントソリューション「ODS」はいずれも前年同期比で増加となった。パソコンとクライアント機は、4月―6月はパソコンが13.8%増の2457億800万円、パソコンとタブレットなどクライアント機合計が22.1%増の2843億7700万円となった。1月―3月は前期がGIGAスクール特需があったタイミングで、前年比減となっていることを考えると、第2四半期になって一気に回復していることが明確となっている。

重点戦略事業の状況(単体)

 たのめーるについても、上半期は前年同期を上回る912億4500万円。「利益率が高い生活用品、感染対策商品、介護用品、工具などが好調。幅広く商材をそろえ対応している」という。

 同社ではWebサービス(ASP)としているクラウドサービスについては、「コピー保守が厳しいとここ数年いわれているが、それをカバーしているのがWebサービス。その中でもたよれーるOffice365の利用者が86万人、どこでもキャビネットが25万人の契約者となり、Webサービストータルでは2022年6月時点で361万人が利用している」と順調にビジネスが伸長し、落ち込んでいる分野をカバーするまでに成長しているとした。

 サプライや保守契約などストックビジネスについては、売上高は1508億円だが会計基準変更の影響を受けていることから、「トップラインも下がっていることから、読みにくい部分はあるが、堅調に推移しているといっていい実績となっている」と説明している。

ストック(足し算)ビジネスの推移(単体)

 パソコン販売台数の四半期推移は、第1四半期は前年度がGIGAスクール特需だったことから前年割れになっているが、第2四半期は前年を上回った。「JEITAの4月~6月期の出荷台数が13.5ポイントのマイナスであることを考えると。同時期に前年を上回ることができたことは価値ある結果だと考える。私どもが働きかけることでこの伸長を実現することができた」と大塚社長は成果をアピールした。

 複写機についても第1四半期、第2四半期ともに前年割れとなった。この要因については、「サーバーやネットワーク機器ほどではないが、供給不足の影響もある」と分析している。

 こうした現状を踏まえ、「1企業あたりの提供商材が少ない」ことを課題とする。大塚商会はオフィス全体に必要な商材を提供することが特徴だが、複写機の顧客の平均商材数は4.34。徐々に増加傾向にはあるが、商材数増加が課題だという。

1企業あたりの商材数推移(単体)

 なお下半期の事業については、基本方針、中期計画は変更していない。「特需での売上増による影響ではなく、営業利益率・経常利益率ともに7%定着を進める」とし、安定した利益率実現を掲げる。

 下半期はウクライナ紛争、新型コロナウイルス感染再拡大など市場環境が不透明な部分も大きいが、営業強化を進めていく。その際の武器となるのがAIを活用した営業促進だ。予定が決まっていない営業スタッフに対しては、AIがレコメンドを行い、営業活動を促す。

 「予定が既に埋まっているスタッフに対してはレコメンドは行わない。どこの顧客を攻めればよいのかがわからないスタッフを、AIがサポートする。その結果、1月~6月期は営業商談件数が5.4%増加した。これだけ実績が出ていると、プラスがあることは明らか。ただし、単純にAIのレコメンド通りに動くだけでなく、なぜ、AIがそういったレコメンドをしたのかを考えるきっかけとして、商談の質、数を増やしていくことにつなげていくために活用したい。以前から考えている営業支援の大戦略Ⅱは、単純にAIを活用するだけでなく、もっと戦略的な営業活動を支援するためのシステムとしたい」。

AI受注率

 大塚商会では、dotDataに26.7億円の出資を行うなど、積極的にAI活用を進めており、大企業中心のAI活用を中堅・中小企業ユーザーが活用できるように、ノウハウ、サポートを提供していくビジネスも進めている。

dotData

 また2022年6月からは、新しいサービスとして、顧客が自身のポータルサイトにログインする際に利用する大塚IDによって認証管理とアカウント管理を行う「OTSUKA GATE」をリリースし、さまざまなサービスへのシングルサインオンで利用するといった使い方を提案していく。

OTSUKA GATE

 さらに、社員の働きがいを強化するためのマネジメント改革、評価制度の見直し、労働環境の改善、労働分配率の向上なども行う。

 こうした強化と共に1企業あたりの提供商材増加を進める。現状では取引企業の3分の1のみが複合取引で、残り3分の2は単品取引にとどまっている。これを改善するためには、社員が特定商品だけでなく、複数商品の販売ができるスキルを持つなどの変革が必要となるが、そうした変革も進めていく。

 「3分の2の顧客が単品取引にとどまっているということは、それだけ開拓できる市場が残っているということでもある」と前向きな見方を示した。