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大塚商会、2020年12月期の通期決算は減収減益に COVID-19の影響もあり“過去最高”の前年を超えられず

 株式会社大塚商会は1日、2020年12月期の通期決算を発表した。連結売上高は、前年比5.7%減の8363億2300万円、営業利益は同9.5%減の563億900万円、経常利益は同9.7%減の575億5000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同9.6%減の393億0900万円で、減収減益となった。

2020年12月期の決算概要

 代表取締役社長の大塚裕司氏は、「前年、2019年がWindows 10へのパソコン入れ替え、消費税増税の駆け込み需要といった特需があり、前年を上回ることへのハードルが高かった上に、2020年は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響もあった。増収増益を狙いたかったものの、減収減益という結果となった」と、要因を説明した。

代表取締役社長の大塚裕司氏

 大塚商会では2020年11月に業績の下方修正を発表していたが、今回の発表では売上高は上回ったものの、営業利益、経常利益、純利益は連結、単体ともに計画を下回った。「10月にはコロナ禍も多少落ち着き、いけるかなと思っていたものの、11月、12月には環境が悪化し、12月は厳しい中で追い込みをかけることに成功したものの、あと一歩及ばなかった」(大塚氏)。

 ただし、「2019年度が特需だったこともあり、それを上回るにはハードルが高かった。過去からの成長路線カーブをほぼとらえた業績にはなっている。過去5年間の業績の流れから見れば順行状態といえる」と述べ、成長路線であることは失われていないとした。

セグメント別の業績

 セグメント別売上高は、システムインテグレーション事業は前年比9.0%減の5266億1300万円、サービス&サポート事業は同0.6%増の3097億1000万円。サービス&サポート事業は第3四半期まで前年割れとなっていたが、第4四半期で増収へと転じることに成功した。

 単体の詳細セグメント別売上高では、SI関連商品が3931億5900万円、受託ソフト等が504億2800万円、サプライが1541億1500万円、保守等が1527億8900万円。

セグメント別売上高(連結)
詳細セグメント別売上高(単体)

 連結売上高の四半期推移では、第1四半期は新型コロナウイルスの影響がなく、2019年から続いた特需が続いた最後のタイミングとなっていたため前年を上回っている。しかし、第2四半期、第3四半期、第4四半期は前年割れとなった。

 経常利益の四半期推移は、売上高推移同様、第1四半期が前年を上回ったものの、第2四半期、第3四半期、第4四半期は前年割れとなった。

 しかし、大塚氏は、「第2四半期以降は前年割れとなったものの、前年に特需があったため、比較すると、第4四半期はかなり近い線まで追い込みをかけている。特に経常利益はかなり近い線で、市場の回復傾向が出てきたあらわれではないか」と、大きな伸びを示した前年の近いところまで回復しているとアピールした。

売上高の四半期推移(連結)
経常利益の四半期推移(連結)

 詳細セグメント別売上高増減率の四半期推移を見ると、第2四半期、第3四半期はどのセグメントも大きく落ち込んでいるものの、第4四半期には確かに回復傾向が出ており、特に保守等、サプライについてはプラスに転じている。

 顧客企業の年商別売上構成では、2019年度が大企業の比率が伸長したのに対し、2020年度は売上規模10億円未満の企業の比率が増加した。

 顧客企業の業種別売上構成は、GIGAスクールの影響で学校案件が増加したこともあって、学校教育・官公庁の割合が伸びている。ただし、キャッシュフローの営業C/Fが前年の487億円から324億円に減少している要因もやはりGIGAスクールで、「年を越して納入する分が118億円あり、その影響で減少している」という。

 重点戦略事業の状況としては、たのめーるは前年比1.9%減の1634億4800万円、SMILEが同12.6%減の115億6800万円、ドキュメントソリューションの「ODS」が同6.6%減の521億1700万円、セキュリティソリューションの「OSM」が同5.6%増の818億4700万円。

 重点ハードウェアの販売台数は、複写機が前年比3.5%減の3万6619台。うち、カラー複写機が同2.6%減の3万6590台。サーバーは同20.4%減の2万5507台。パソコンは同14.1%減の153万7963台で、タブレットなども含めたクライアント合計は同10.5%減の163万8051台となった。

 重点戦略事業は、SMILE、ODS、サーバーを除いて第4四半期にはいずれもプラスに転じており、「マイナスが続いてきた複写機が第4四半期に伸長したのは3年ぶり。FAXを電子化する際、スキャナーとして複写機を利用する需要が増加するなど、単なるコピー機からの転換は順調に進んでいる。粗利率もプラスになっている」と、明るい兆しがあることを強調した。

重点戦略事業の状況(単体)
複写機販売台数の四半期推移

 1企業当たりの商材数推移は、単品売りから複数商材を販売するソリューション販売への転換を示す指標となるもので、「3年くらい前に、コピー機単体販売に走りすぎていた時期があり、それを是正する狙いもあってこの資料を作成するようになった」と大塚社長は説明する。ゆるやかにではあるが、顧客に販売する商材数が増加していることが明らかになった。

1企業当たりの商材数推移(単体)

 サプライとコピー保守売上高の前年増減率推移は、緊急事態宣言が実施された第2四半期に大きく落ち込み、コピー機利用数が急速に下がったことを示している。しかし、その後は回復しており、「市場は戻っている。この後、ある程度、回復するのではないか」と大塚氏は市場回復に期待を寄せた。

 たのめーるの年次推移では、初めて前年の売上を下回ったが、「登録口座数は順調に増加している。競合であるアスクル、コクヨは紙のCatalogを廃止しており、たのめーるが唯一の紙、Webをそろえた法人向け通販事業となっている。差別化策として、当社は紙のカタログ提供を続ける」という方針を強調した。

 Webサービスの利用者数は、2020年度は33万人増の295万人となった。「コロナ禍でサービスメニューが伸びた。今後も使いやすいメニューを作り、お客さまの支持を得ていきたい」とさらなる利用者増に意欲を見せた。

 サプライと契約保守によるストックビジネスは、テレワークの影響で1件当たりの金額が少なくなる傾向にあるが、「大変厳しい環境であったが、通年ではプラスとすることができた。ストックビジネスが安定していることが当社の収益基盤であり、お客さまとの縁を切ることがないよう、続けていきたい」としている。

2021年度は増収増益を目指す

 2021年度の見通しは、売上高は前年比3.4%増の8650億円、営業利益は同3.2%増の581億円、経常利益は同2.5%増の590億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同0.6%増の395億5000万円。「不透明な環境ではあるが、デジタル庁設立によるデジタル化の本格化など、中小企業も本当にIT化に取り組まざるを得ないタイミングとなってきた。それをお手伝いするのが大塚商会」(大塚氏)と述べ、メイン顧客である中小企業のデジタル化支援などの事業によって、増収増益を目指す。

売上高・利益の計画

 2021年度の基本方針と中期計画については、「大きく変えていない。ただし、企業は成長しないと衰退する。利益率7%台を定着させたい」と説明した。市場環境については、「春先には新型コロナウイルスによる先行き不透明な状況は変わってほしい」と市況改善を訴えた。

 2021年の方針と施策としては、「DXとドキュメントソリューションで、お客さまに寄り添い、お客さまとともに成長する」とした。

 あえてDXとドキュメントソリューションという2つの重点施策を掲げたのは、「デジタル庁など、多くの企業が本格的にデジタル化を進めることが必須となってきている。ドキュメントソリューションについては、当社は今年創立60周年を迎える。紙の文化でお客さまと接点を持った企業であり、ドキュメント事業は今後も大切にしていきたい。その一方で、オフィス内の紙資産をデジタル化し、ペーパーレス環境を作ることが中小企業にとっても必須になってきた。これまではIT化に興味を示していなかったお客さまもIT化に取り組む必要があり、そのお手伝いをしていく」との理由から。企業規模の小さい企業のデジタル化を支援するとした。

 その要因のひとつとなっているのがテレワークで、デジタル化しなければ自宅作業では実施できない業務がある、という状況を是正する必要を持った顧客が急増。テレワーク関連ビジネスは大きく伸長したという。そこで、中小企業のデジタル化を支援するために、DX+ドキュメントソリューション+AIなど新技術活用という3本柱で取り組んでいく。

中小企業のデジタル化を推進する役割

 これまでオンプレミスパッケージとして提供してきた基幹業務アプリケーションのSMILEと、ワークフローなど情報系パッケージのeValueの統合を進めてきたが、統合と共に2月からはクラウド版「Airシリーズ」を提供する。「データを一気通貫で利用できるようにすることで、企業のDXを支援していく」(大塚氏)。

 テレワークについては、2020年はのべ4万社のテレワークを支援し、43万IDを発行した。実際にテレワークを実施したユーザーからは、「会社にある書類の確認ができない、自宅にはプリンタやスキャナーがないといった声が上がった。こうした声にしっかりと対応していく」とユーザーに寄り添ってビジネスをすることを強調した。

 長い間、大塚商会のビジネスの根幹でもあったドキュメントソリューションは、「ドキュメントのライフサイクル全体をカバーすることができる、60年間、複写機ビジネスを展開してきた経験を生かし、デジタルドキュメントの利用を勧める」としており、デジタル化にも対応していくとした。

 また大塚商会の営業支援システム「大戦略II」については、「コロナ禍で対面ビジネスを行うには制約がある中、Webを使った商談を推進する」という。具体的には。個々のユーザーのポータルサイトとなる「お客さまマイページ」を使って、顧客自身が契約状況を確認し、そこを基点としてアウトバウンドセンターから顧客との接点を密にしていく。

 AIを活用した顧客対応も実施し、営業担当者が顧客と会話する際のアドバイスとなるようAIによって商談を支援し、適切な営業活動となるように活用する。

 こうした最新技術の活用は、「自社で苦労してデジタルシフトを進めていった経験が、お客さま向け商談にも生きていく」と自らのデジタルシフトを進めている。

大戦略II
AIを活用したお客さま対応の取り組み