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NECの2020年度第1四半期連結業績、赤字も「市況悪化の影響は5月に想定した範囲内」
通年見通しは期初計画発表時の想定から変更なし
2020年7月31日 21:29
日本電気株式会社(以下、NEC)は31日、2020年度第1四半期(2020年4~6月)連結業績を発表した。
売上収益は、前年同期比10.1%減の5877億円、営業利益は前年同期の33億円の黒字から、102億円の赤字に転落。調整後営業損益は前年同期の76億円の黒字から、58億円の赤字。税引前利益は前年同期の37億円の黒字から96億円の赤字に、当期純利益は前年同期の32億円の黒字から、50億円の赤字となった。
NEC 代表取締役執行役員副社長兼CFOの森田隆之氏は、「前年同期の大型案件の反動と、ビジネスPCの更新需要の一巡に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により減収となった」と総括。
「ビジネスPCの売上減で20億円減、大型案件の反動で20億円減は当初から想定していたものである。新型コロナウイルス感染症の影響による市況悪化で、グローバルやエンタープライズ、日本航空電子などで大きな影響があり、ここで175億円の悪化がある。だが、市況悪化の影響は5月に想定した範囲内で推移している」とした。
また、「第1四半期には5Gを中心とする開発費を、前年同期比で40億円増加させており、費用コントロールで70億円を改善した」と述べた。
セグメント別の業績
セグメント別業績では、社会公共の売上収益が前年同期比14.2%減の748億円、調整後営業利益は前年同期から29億円減の33億円の赤字。「医療、公共向けの減少に加え、ビジネスPCの売上減により減収になった」という。
社会基盤は売上収益が前年同期比6.0%減の1227億円、調整後営業利益は前年同期から57億円減の18億円。航空宇宙、防衛向けの減少に加えて、連結子会社の日本航空電子の減少により減収および減益になった。
エンタープライズは、売上収益が前年同期比16.4%減の1150億円、調整後営業利益は前年同期から56億円減の27億円。前年の金融および流通向け大型案件の減少に加え、ビジネスPCの更新需要の一巡などにより減収。
ネットワークサービスは、売上収益が前年同期比4.5%増の990億円、調整後営業利益は前年同期から20億円減の21億円の赤字。連結子会社であるNECネッツエスアイを中心に増収となったが、5G関連の投資増により減益になった。
グローバルは、売上収益が前年同期比15.1%減の970億円、調整後営業損失は前年同期から25億円減の30億円の赤字となった。海洋システムが増加したが、ディスプレイやワイヤレスの減少に加えて、KMDの一部事業の終息により減収になった。なお、「英Northgateは堅調であり、計画を若干上回るレベルで推移している。KDMの一部事業を当初から想定していたものであり、利益の基調は継続している」と述べた。
グローバルのディスプレイ事業では、2020年度上期末を予定しているシャープとの合弁会社化による再編のほか、エネルギー事業では、NECエナジーソリューションにおける新規受注の停止を決定するとともに、既存プロジェクトの完工と、保守継続に限定するといった事業改革を行っている。
システムプラットフォームやデジタルビジネスプラットフォーム、クロスインダストリーなどで構成するその他事業は、売上収益が前年同期比11.6%減の791億円、調整後営業利益は6億円減の43億円となった。
なお、国内の第1四半期の受注状況は全体では前年同期比5%減。内訳は、社会公共が同31%減、社会基盤は同9%増、エンタープライズは同21%減、ネットワークサービスは同1%増となった。
「社会公共は、前年同期にマイナンバー関係の中間サーバー更新案件があったこと、中堅中小企業向けのITサービスが市況悪化の影響を受けて減少。エンタープライズは前年に金融向け、流通向けの大型案件があったこと、ビジネスPCの需要減、市況悪化の影響を受けた。だが、6月単月の受注は前年同月比で3%減に回復している。社会基盤では、ベトナム向け地球観測衛星が貢献して、プラス成長となった。この案件を除いても前年実績を上回っており、堅調な受注環境が継続している。ネットワーク領域は国内外ともに、新型コロナウイルスによる市況の影響は少ない。通信業界に選択肢が少なく、新たな選択肢が求められている」などとした。
また、「IT投資については、業界によって差がある。金融分野や通信キャリア向けIT投資は堅調。製造は慎重な部分はあるが、先行して抑制が利いていたこともあり、これまでが底であり、今後は、改善してくだろう。流通は全体的には回復の戻りが遅いと見ている」と分析した。
「DXに対する投資の考え方は、従来のIT投資の考え方と変わってきている。各企業が競争力を強化することに、プライオリティをおいている。遅延が起きたり、投資に対するリターンを厳しく見るといった動きもあるが、来年以降、堅調な成長に戻ってくると考えている」と述べた。
2020年度の業績見通し
2020年度(2020年4月~2021年3月)の業績見通しは、売上収益が前年比2.1%減の3兆300億円、営業利益は同17.5%増の1500億円、調整後営業利益は同13.2%増の1650億円、当期純利益は同10.0%減の900億円と、期初見通しを据え置いた。
セグメント別業績見通しは、社会公共の売上収益が前年比5.9%減の4500億円、調整後営業利益は58億円増の400億円。社会基盤は売上収益が0.6%減の6750億円、調整後営業利益は22億円減の620億円。エンタープライズは、売上収益が1.9%増の5600億円、調整後営業利益は79億円増の600億円。ネットワークサービスは、売上収益が0.6%減の4800億円、調整後営業利益は14億円増の320億円。グローバルは、売上収益が7.7%減の4550億円、調整後営業利益は252億円増の220億円。その他の売上収益が4100億円、調整後営業利益は150億円を見込む。
「新型コロナウイルス感染症の拡大を起因とする第2四半期以降のマクロ環境の変化をレビューした結果、期初計画発表時の想定から変更はない。上期での終息を前提とした場合、一定程度の減収インパクトが想定されるが、費用コントロールとNew Normalによる新たな需要の獲得によって、利益予想を達成できると考えている。キャッシュマネジメントにおいては、万全の手元流動性を確保し、資産売却については順次実施していく。状況については、不透明感はあるが、3カ月前に比べると、どういうように推移するか、それに対してどういう手を打つかという視界については、かなり見えつつある」とした。
また、「各セグメントにおいて、前年と同等レベルの受注残を維持している。今後の受注動向で先行きのリスクがあるが、社会公共、社会基盤では、GIGAスクールや補正予算を含めて、第3四半期、第4四半期に、いかに受注を取り込めるかが鍵になる。デジタルワークプレイスを含めたニューノーマルソリューションの拡販を進めており、第3四半期以降で一定の実額規模を想定したい。エンタープライズでは、アパレルや交通などの業種では、引き続き厳しいところもあり、リスクがある。ネットワークサービスは堅調な状況が続く」と述べた。
New Normalに向けた取り組み事例、5G領域での取り組みも説明
また、New Normalに向けた取り組み事例についても紹介。ハワイ主要5空港に、生体認証および映像分析技術と、サーマルカメラによる感染症対策ソリューションを提供。体表温度が高い人物の検知と、空港内での移動経路の見える化を実現し、観光客やビジネス客の安全、安心な旅行、出張と、現地の人たちの安全対策に貢献したという。
東京・三田の本社ビルでは、生体認証によるDigital IDを活用したゲートレス入退や、マスク対応レジレス決済などの実証実験を開始。これを、新しい働き方をDXで実現する「デジタルオフィスプロジェクト」と位置づけ、2020年度内をめどに、順次ソリューションの提供を開始するという。
5G領域においては、NTTとの提携によりO-RANの普及促進やIOWN構想の実現に向けた共同開発を進めること、楽天モバイルとスタンドアロン方式の5Gコアネットワークの共同開発を進めることを挙げた。「NTTとは、日本の産業競争力強化、通信インフラの安全性の確保に取り組む。また楽天とは、社会信頼性を備えた日本製の5Gコアの構築を進め、Rakuten Communications Platform(RCP)の実現に貢献する」と述べた。
「5Gはまだ不透明なところもあるが、目標は20%の市場シェアの獲得である。これに達すると、3000~4000億円の事業規模になる。2025年以降は全体の4割がオープン市場になると想定している。オープンRANの領域における実績を近いうちに紹介できるだろう」とした。
一方、7月に開催した同社初のデジタルイベント「NEC iEXPO Digital」は、従来の10倍以上の延べ3万人が参加。ターゲット層へのリーチは10%増加し、VIPの来場が6倍に増加。さらに、参加企業の3割が新規顧客という結果が出たという。「リアルと遜色(そんしょく)がない成果をあげることができ、手応えを感じている」とした。
同社では、11月に、「NEC ユーザーフォーラム& iEXPO2020 Digital」を日本最大級のオールデジタルプライベートイベントとして開催することを決定し、海外からの集客も強化。前年の2.5倍にあたる5万人の参加を見込んでいるという。