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ダークトレース、日本市場での事業拡大に向けた新戦略を発表
「Cyber AI Analyst」を軸にAIセキュリティ人材提供サービス会社へシフト
2021年5月21日 11:18
英Darktrace(以下、ダークトレース)は20日、日本法人ダークトレース・ジャパン株式会社のカントリーマネージャーに昨年11月4日付で就任した鈴木真氏による新体制の下、日本市場でのさらなる事業拡大を目指すことを発表した。
同日に行われたオンライン説明会では、世界初のAIセキュリティ人材提供サービス「Cyber AI Analyst」を軸とした日本市場における新戦略について説明した。
ダークトレースは、2013年に英国ケンブリッジで創業、2016年に日本法人を設立して以来、ルールやシグネチャに依存せず、事前設計やメンテナンスも不要ながら、あらゆる未知の脅威や内部不正にも理論上、リアルタイムに自動対処できるサイバーAI技術を提供し、日本を含む世界100か国以上で4700社を超える組織に導入されているという。
特に、人間の免疫システムに着想を得て開発された「Darktrace Immune System」は、ネットワーク内外に分散する従業員やデバイスの挙動や通信の定常状態を人間のセキュリティチームに代わり独自のAIが常時学習・監視・可視化し、脅威の予兆を自動的に検知・遮断する。
今回、日本市場での新戦略発表にあたり、駐日英国大使館 公使参事官 貿易・対英投資ダイレクターのクリス・ヘファー氏があいさつ。「英国では、2016年に発表された国家サイバーセキュリティ戦略のもと、サイバーセキュリティ産業が飛躍的な発展を遂げている。現在、英国のサイバーセキュリティ産業は、1400社以上の企業が年間89億ポンド(約1兆4000億円)を生み出す市場へと成長した。さらに、英国には19の大学にサイバーセキュリティ研究機関『Academic Centre of Excellence』があり、サイバーセキュリティのイノベーションをけん引している。そして、これらの叡智の結晶といえるのがダークトレースだ。日本市場には2016年に進出し、2019年には大阪に第2オフィスを開設するなど、順調な成長を続けている。また、今年I月に日英包括的経済連携協定が発効され、デジタル分野における両国のさらなる連携強化が期待されている。ダークトレースをはじめとする先進的・国際的な知見を持った英国企業が日本企業との重要なパートナーとなり、両国がともに安全なサイバー空間の実現に寄与することを願っている」と述べた。
続いて、駐日英国大使館 参事官(防衛装備、サイバーセキュリティ、航空宇宙担当)のポール・エリス氏は、「ダークトレースは、英国のサイバーセキュリティ分野の強みを象徴する企業である。現在同社は、世界をリードするAI技術とグローバルなプレゼンスを持った英国有数のサイバーセキュリティ企業となっており、パートナー企業の商取引の安全を毎日・毎秒維持している」と同社を紹介。
また「英国は、サイバーセキュリティ分野において、世界のリーダー格であると認められているが、これを支えているのが政府・産業界・学術界の3つの柱だ。特に、2016年に設立した国家サイバーセキュリティセンターは、産学官の協力モデルとなり、一般の人々のサイバーセキュリティへの関心を高めることにもつながっている」としたうえで、「このように英国は、サイバーセキュリティ分野で世界的な影響力を持つ存在となっているが、その中でもダークトレースは、グローバル経済に対応し、それを保護することができる真のグローバルサイバーセキュリティ企業であると確信している」と強調した。
そして、ダークトレース・ジャパン カントリーマネージャーの鈴木真氏が、日本市場でのさらなる事業拡大に向けた新たな戦略を発表した。これまで日本市場では、人間の免疫システムに着想を得て、AIがサイバー脅威を自動的に検知・遮断するソリューション「Darktrace Immune System」を中心に、合計120社以上の顧客にダークトレース製品を導入してきたという。
鈴木氏は、「ダークトレースは非常に優れた技術を持っており、導入企業も拡大しているが、今までは日本市場におけるメッセージアウトが弱かった。そこで、新体制を機に、日本において大きな課題となっているセキュリティ人材不足に着目。今後は、この課題を解決するべく、AIによるセキュリティ人材を提供する企業へとシフトしていく」との方針を明らかにした。
この新戦略の中核を担う製品として、日本市場で本格展開を開始するのが、世界初のAIセキュリティ人材提供サービス「Cyber AI Analyst」となる。「Cyber AI Analyst」は、Darktrace Immune Systemを構成する製品群の1つであるEnterprise Immune Systemに実装されている機能で、自動検知した異常やアラートの因果関係を瞬時に文章化し、日本語を含む8か国語で平易なインシデントレポートの生成までAIに一任することができるという。
鈴木氏は、「新たに事業展開するAIセキュリティ人材提供サービスでは、『Cyber AI Analyst』を活用し、24時間365日、休みなく働くことができ、退職リスクもない優秀なAIセキュリティアナリストを企業に派遣していく。『Cyber AI Analyst』は、派遣先の企業で顧客固有の環境を自己学習で熟知し続けて、異常を自動検知、自動調査する。これにより、人間のアナリストと比べて、脅威を調査して結論を役員に報告するまでの時間を92%削減することが可能となる」と説明した。
また、「Cyber AI Analyst」の本格展開に合わせて、パートナー戦略も強化する。大手ディストリビューターと連携し、日本語SOCサービスをバンドルして提供するほか、ネットワークに強いパートナーとの連携により個別特化したサービスを提供するなど、パッケージ販売を全国展開していく。
さらに、社内体制の強化にも取り組み、ハイタッチ営業人員を倍増するとともに、パートナー専任営業やCustomer Success Manager、トレーニングチームの拡充を図り、パートナーとの各種マーケティング施策を強化していく。
「これらの施策によって、今後1年間で『Cyber AI Analyst』を含む製品群の日本市場での売上を倍増することを目指す」(鈴木氏)と意欲を見せた。