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ダークトレース、サイバー攻撃を自律的に予防するAIセキュリティ製品を提供開始

日本市場における新たな事業戦略も発表

 ダークトレース・ジャパン株式会社は28日、組織が未来のサイバー攻撃に先制するためのプロアクティブな自律防御能力を提供するAIセキュリティ製品群「Darktrace PREVENT」を、8月1日から正式に一般提供開始すると発表した。同日に行われた発表会では、新製品の概要とともに、日本市場における新年度(2023年6月期)の事業戦略について説明した。

 「Darktrace PREVENT」は、英国ケンブリッジに拠点を置くDarktraceのサイバーAI研究センターで培われた研究成果と、Darktraceが3月に買収したオランダのアタックサーフェス管理(ASM)企業、Cybersprint社の技術によるブレークスルーに基づいて開発されたもの。今回は、「Darktrace PREVENT」製品群として、「Darktrace PREVENT/E2E(End-to-End)」と「Darktrace PREVENT/ASM(Attack Surface Management)」の2製品を提供開始する。

 英Darktrace アジア太平洋地域および日本統括 エンタープライズセキュリティディレクターのトニー・ジャーヴィス氏は、「Darktrace PREVENT」の発表にあたり、サイバーセキュリティの現状について、「当社が発表した新たな脅威データでは、1月から6月の間に、特に対処の優先順位が高いセキュリティインシデントが全世界の顧客基盤において49%増加したことが明らかになった。また同期間中、世界各国の政府関連セクターの顧客に影響を与えるサイバー攻撃が世界的に138%増加した。6月には、当社の顧客基盤全体および米国で、情報通信セクターが攻撃対象として最多となった。一方で、150以上の組織における外部脆弱性データに基づく調査結果によると、高リスクの脆弱性の85%は1週間以内にパッチを適用されておらず、1か月後でも70%は未適用のままであることがわかった。企業のセキュリティチームは、増え続ける脆弱性への対処に苦戦しているのが実情だ」と指摘する。

英Darktrace アジア太平洋地域および日本統括 エンタープライズセキュリティディレクターのトニー・ジャーヴィス氏

 「こうした状況に対して当社では、AIで予防・検知・遮断・修復のサイバーセキュリティ対策を完全自律化する技術ビジョン『サイバーAIループ』の実現を目指しており、これまでに検知領域で『Darktrace DETECT』、遮断領域で『Darktrace RESPOND』を提供してきた。そして、今回の『Darktrace PREVENT』のリリースにより、新たに予防領域に本格参入する。さらに今後、修復領域をカバーする『Darktrace HEAL』も発表する予定であり、業界初となる『サイバーAIループ』の具現化に向けて大きく前進したことになる」(ジャーヴィス氏)との考えを示した。

ダークトレースが目指す技術ビジョン「サイバーAIループ」

 「サイバーAIループ」の予防領域を担う「Darktrace PREVENT」製品群では、AIを駆使して「攻撃者の目線で考える」ことで、組織の最も重要な資産への経路をシステムの内外から見つけ出すことができるという。また、「内部を知る」独自のAI技術が個々の組織にとって最も破壊的な攻撃を継続的に分析し、その情報を「Darktrace DETECT」と「Darktrace RESPOND」にフィードバックすることで、システムを自律強化するための継続学習と自動化を支援する。

「Darktrace PREVENT」製品群の概要

 各製品の機能としては、「Darktrace PREVENT/E2E」では、攻撃経路モデリング、自動侵入テスト、攻撃対応演習およびセキュリティ意識向上トレーニング、脆弱性特定をAIで自律化する。複数の分野において最高の機能を組み込んだサイバーリスク管理のための成果ベースのアプローチとなる。

 「Darktrace PREVENT/ASM」は、エンティティ名をインプットするだけでAIが特定のターゲットに対して偵察を行い、アタックサーフェスを常時自動監視することで、組織内の個々の資産におけるサイバーリスクや緊急度の高い脆弱性、外部からの脅威を評価する。シャドーITやサプライチェーン、M&A、設定ミスなど、多くのユースケースにおいて価値を提供する。

 また両製品が、悪意のあるドメインなどシステム外のインサイトを常時学習し、自動検知(Darktrace DETECT)および自動遮断(Darktrace RESPOND)のメカニズムに供給することで、脅威に対する自律対処の精度と速度をさらに向上。予防、検知、遮断の各機能が相互に補完し合って自律的な防御態勢を構築する。

 今回の新製品発表に合わせて、ダークトレース・ジャパン カントリーマネージャーの鈴木真氏が、新年度に向けた日本市場における事業戦略について説明した。「当社は昨年度(2022年6月期)、『AIセキュリティ人材提供サービス会社』を目指す方針を掲げ、人員体制の強化に力を注いできた。この結果、前年度から倍以上の売り上げを達成し、顧客数も、グローバルの32%増を上回る36%増と、多くの新規顧客を獲得することができた。この理由としては、ランサムウェア被害の急増などで、既存のセキュリティ製品では守りきれないという危機感が強まる中で、当社のAIセキュリティ人材提供サービスが市場ニーズにマッチしたと考えている」と、昨年度は好調にビジネスが推移したという。

ダークトレース・ジャパン カントリーマネージャーの鈴木真氏

 これを受けて、今年度の製品戦略としては、「新たにリリースする『Darktrace PREVENT』を活用し、人間ではなくAI人材による『レッドチーム』を展開していく。また、既存のセキュリティ製品では守りきれないというニーズに向けて、ゲートウェイ型ではない、メールを取り巻く文脈を学習し続けるEメールセキュリティ製品や、IT環境・OT環境を横断的に監視する製品の拡販に力を注いでいく。これにより、今後1年で売上50%アップを目指す」との方針を明らかにした。

 パートナー戦略については、「これまでのジェイズ・コミュニケーションとエムオーテックスに加え、大手ディストリビューターと連携することで、リセラーへのサポートを強化し、“よりリセラーが販売しやすい形”で日本全国を面でおさえていく。また、NECネッツエスアイ、ピーエスアイ、アイネット、パナソニック ソリューションテクノロジーのパートナー各社と協働し、POV(Proof of Value)を提供する」としている。

 今後、特に注力する市場・業界としては、医療業界と製造業を挙げ、「日本をサイバー脅威からパートナーと共に救う会社と認識される。そのために一人ひとりがセキュリティのプロフェッショナルとして、パートナーと共に顧客のトラステッドアドバイザーとなる」と、今年度に向けた新たなビジョンを打ち出した。