週刊海外テックWatch

「11分23秒のキルチェーン」 AIが塗り替えた戦争の論理

 AIは人間に代わって戦争を遂行するようになるのか――。世界に衝撃を与えた米軍のイラン攻撃を巡って、研究者らの分析が出てくるようになった。その中に、戦争の口火を切ったイラン最高指導者の殺害作戦はわずか11分23秒で行われたとの報告がある。そこから浮かび上がってくるのは、AIとクラウドが軍事作戦の中枢に深く食い込んだ現実と、それが生む新たなリスクだ。

Khamenei師殺害作戦の舞台裏

 「標的を識別し、狙いを付け、決断し、破壊する」までの一連のプロセスを軍事用語で「キルチェーン」と言う。UAEのシンクタンク、Al Habtoor Research Centreのレポートによると、2月28日に実行された米・イスラエル軍によるイランの最高指導者Ali Khamenei師の殺害では、このキルチェーンがわずか11分23秒で完結したという。同センターはUAEのAl Habtoor財閥グループの機関だ。

 両軍の「標的」であるKhamenei師の動向は、イラン側の電波妨害や複雑な警備手順などで正確に把握するのが困難だった。

 レポートは、Khamenei師殺害作戦では軍のシステムに組み込まれたPalantir Technologiesのデータ管理プラットフォーム「Foundry」と、Anthropicの米政府カスタム版「Claude」が大きな役割を果たしたと分析している。

 Foundryは、「分散したデータを意味を持つオブジェクトとして再定義する『オントロジー』型データ分析ツール」で、一見関係なさそうなデータの山を分析して、意味とコンテキストを読み取り、意思決定までを支援できる。

 米軍は準備段階として、人工衛星、偵察ドローン、通信や地上のセンサーのデータ(ハッキングで入手したものも含まれる)、さらに人間の工作員からの情報も合わせた約2.3ペタバイトのデータを分析した。人手による従来の方法では328人の分析官が100日間ぶっ通しで作業しなければならない量だが、Claudeは90分で処理したという。

 そして、各地から入ってくる多層的なデータをリアルタイムで処理する中、システムがKhamenei師の防衛網に生じた3分間の隙から正確な位置を特定して攻撃計画を立案。これを人間の指揮官が承認し、無人機が2発の誘導ミサイルを発射して着弾まで確認した。これが11分23秒の内訳だ。