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ヤマハ、10GBASE-Tやマルチギガビットに対応したスイッチ4製品を6月発売 PoE++給電対応のインテリジェントレイヤ2モデルなど

 ヤマハ株式会社は30日、ヤマハスイッチとして初めてとなる10GBASE-T、2.5G/5GBASE-T(マルチギガビット)に対応したスイッチを6月に販売開始すると発表した。スタンダードレイヤ3スイッチ「SWX3220-16MT」「SWX3220-16TMs」、インテリジェントレイヤ2スイッチ「SWX2320-16MT」「SWX2322P-16MT」の計4製品の提供が予定されている。

今回発表された新製品。SWX2320-16MT(左上)、SWX2322P-16MT(左下)、SWX3220-16MT(右上)、SWX2322P-16MT(右下)の4製品が提供される

 新製品はいずれも、10G/5G/2.5G/1G/100Mbpsの5つの速度に対応したLANポートを搭載しており、CAT5eまたはCAT6のLANケーブルで構築されている既設ネットワークでは、利用中のGigabit Ethernet(GbE)スイッチから新製品に置き換えることで、最大5Gbpsのネットワークを構築できるという。その際、ヤマハの同カテゴリの従来製品からの置き換えであれば、設定をそのまま移行できるため、比較的容易にネットワークを高速化可能とした。一方、新たにネットワークを構築する場合は、CAT6AのLANケーブルと新製品を利用することにより、最大10Gbpsのネットワークを構築できる。

 さらに、セキュリティ確保のためにRADIUSサーバー機能に対応した。スイッチのMAC認証とRADIUSサーバー機能を組み合わせることで、接続機器の一元管理を実現し、正規の機器からの接続のみを許可できる。

インテリジェントレイヤ2スイッチ

 新製品のうちSWX2320-16MT/SWX2322P-16MTは、インテリジェントレイヤ2スイッチの既存モデル「SWX2310シリーズ」の機能を継承しながらも、1Gbpsを超える高速なLANポートを搭載した16ポートモデル。10G/5G/2.5G/1G/100M対応ポート×12と、SFP/SFP+スロット×4を搭載している。

 このうちSWX2322P-16MTは、ポートあたり最大90WのPoE++(IEEE 802.3bt)給電に対応し、今後導入が進むWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)無線LANアクセスポイントや、高画質・高機能化が進むIPカメラ、Pro AV市場で利用が見込まれるパワーアンプなど、大容量のPoE給電が求められる場合にも対応できる。なお装置全体では250WまでのPoE給電に対応し、ヤマハのWi-Fi 6アクセスポイント「WLX413」を最大8台まで接続可能だ。

 加えてPoE関連では、スイッチのファームウェアアップデートなどのために再起動している間でも、PoE受電機器への給電を継続する「Continuous PoE機能」に対応した。これにより、スイッチに接続したIPカメラの監視映像を瞬断なく記録するなど、PoE受電機器の不用意な停止を防げるという。同機能は標準機能として利用できる。

 さらに、SWX2322P-16MTのスケジュール機能と連携することで、PoE受電機器への給電制御も可能で、夜間にPoE受電機器の不正利用を防ぎたい、節電のためPoE受電機器への給電をやめたい、といったニーズに応えられるとのこと。

 ヤマハではSWX2320-16MT/SWX2322P-16MTについて、高速なLANポートを搭載したアクセススイッチの収容など、中規模ネットワークにおけるフロアスイッチとしての活用を想定している。

 価格(税込)は、SWX2320-16MTは、ノンPoEモデルのSWX2320-16MTが23万1000円、PoEモデルのSWX2322P-16MTが27万5000円。

レイヤ3スイッチ

 一方、レイヤ3スイッチでは、10G/5G/2.5G/1G/100M対応ポート×12、SFP/SFP+スロット×4を搭載したSWX3220-16MTに加えて、10G/5G/2.5G/1G/100M対応ポート×4、SFP/SFP+スロット×12を搭載したSWX3220-16TMsをラインアップ。SFP/SFP+スロットを多数搭載したモデルを初めて用意したことで、収容距離と収容数に合わせたモデルを選べるようになった。主な機能面では、従来のレイヤ3スイッチ「SWX3200シリーズ」を継承している。

 価格(税込)は、SWX3220-16MTが38万5000円、SWX3220-16TMsが27万5000円。

 ヤマハでは、中規模ネットワークのコアスイッチ、あるいはディストリビューションスイッチとしての用途を想定しているとのこと。

Pro AV市場も視野に

 なおヤマハでは、従来、Pro AV市場向けにカスタマイズしたスイッチ製品を提供してきたが、今回は、一般企業向けに提供されてきた通常のラインアップにも、Pro AV市場向けの機能を多数盛り込んでいる。

 まず新製品はいずれも、音声・映像メディアなどの同期再生に必要となる高精度な時刻同期「IEEE 1588 PTPv2 TC (Transparent Clock)」をサポートしており、1G/10Gbpsで構成するネットワーク環境にて利用できる。同機能では、スイッチを通過するPTPメッセージに、スイッチの中継遅延時間情報を追加して転送可能となっており、Pro AV市場などリアルタイム性が要求されるケースにおいて、デバイス間の同期精度を1μsec以下にできるとのこと。

 加えて、Audio over IP技術のひとつである「Dante」に最適な環境を容易に設定可能な「Dante最適設定」に対応した。スイッチのWeb GUIから「Dante最適設定」を有効にすると、ヤマハのDante対応機器が接続された場合に、自動でQoS、マルチキャストスヌーピング、フロー制御、EEEなどを最適な設定に変更してくれる。

 管理面でも、従来の「LANマップ」機能に加え、PCアプリケーション「Yamaha LAN Monitor」により、Danteネットワーク全体を可視化可能。ネットワーク機器のLANポートの状態、帯域の使用状況、PoE給電の状態に加え、Dante対応機器の稼働状況をまとめて監視できるため、保守業務の負担軽減を支援するとのことだ。

 さらに先述のRADIUSサーバー機能についても、Pro AV市場での利用を視野に入れている。ヤマハでは、1台のスイッチで比較的容易にRADIUSを構築できることから、DanteネットワークなどのPro AV市場でも活用可能になったとアピールした。

 なおヤマハでは、音声・映像メディアの高レートや多チャンネル化が進み、ネットワークトラフィックの増加が想定されると説明。SWX2320-16MTやSWX3220-16MTを採用すると、従来のレイヤ2スイッチで構築する、同一セグメントに閉じた音声・映像メディア伝送だけではなく、レイヤ3スイッチを活用し複数のセグメントをまたぐメディア伝送環境を構築すれば、トラフィックの増加に対応できるとしている。

Pro AV市場での利用イメージ