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神戸市とマイクロソフト、新型コロナ対策で包括連携協定を締結 神戸市のDXを推進へ

 神戸市と日本マイクロソフト株式会社は4日、包括連携協定を締結した。神戸市では、日本マイクロソフトが自治体向けに提供する業務アプリケーションプラットフォーム「Microsoft Power Platform」を活用し、新型コロナ対策のための4つのサービスを開発した。これを皮切りに、両者は新型コロナ対策以外の分野でも連携し、神戸市のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるという。

 神戸市の久元喜造市長は、「令和はテクノロジーの進化による成果を市民が享受し、人間らしい街を作るというのが神戸市の考え。今回、日本マイクロソフトとは共通した方向を見ている“同士”であり、一緒にやっていくことができると確信した」と話し、連携によるDX推進を前向きに進めていく姿勢を強調した。

神戸市の久元喜造市長(左)と、オンラインで参加した日本マイクロソフト 執行役員常務 手島主税氏(中)、日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタル・ガバメント 統括本部長 木村靖氏(右)

神戸市職員によるPower Platformを用いたアプリ開発がきっかけに

 今回の連携のきっかけとなったのは、日本マイクロソフトが提供したPower Platformによって、市の職員自身が新型コロナ対策に必要なサービスを開発したことだ。2020年4月から日本マイクロソフトに加え、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ、非営利団体コロナ対策エンジニア、株式会社セカンドファクトリー、株式会社ソントレーゾ、Twilio Japan合同会社と連携し、神戸市の新型コロナウイルス感染症対策における業務を効率化するための4つのサービスが開発された。

 1つ目は5月20日から公開している、新型コロナウイルス感染症に関する相談を受け付ける「新型コロナウイルス健康相談チャットボット」。神戸市には新型コロナウイルス感染者が出たことが発表されて以降、多数の問い合わせが寄せられた。

 「コールセンターに多数の問い合わせがあり、電話回線がすべてふさがることもあった。しかも、聴覚障害者への即時対応ができないことが明らかになったこともあって、チャットボットを開発、提供することとなった。簡単なイエス/ノーに答えていくことで、コールセンターに問い合わせる前段階のセルフチェックが行える」(久元市長)。

新型コロナウイルス健康相談チャットボット
チャットボットの例

 2つ目は、6月1日にオープンしたWebサイトの大幅刷新。従来の神戸市のWebサイトは「新型コロナウイルスに関して必要な情報にたどり着けない」という外部からの声と、「手作業で更新作業をしなければいけないため、ひんぱんな更新が難しい」という内部からの声があったという。

 「そこで刷新した新しいサイトは、複数のデータをダッシュボード形式で1つの画面に表示し、総合的に全体像を把握できるサイトとした。さらに自動更新機能をつけることで、更新にかかっていた作業工数を大幅に削減できた」(久元市長)。

 現在は1日あたり1万件のアクセスがあり、必要な情報にたどり着きやすく、リアルタイムに最新情報を提供することが可能になった一方で、市側の作業効率は上がり、省力化も実現することができるようになった。

新型コロナウイルス発生状況の可視化

 3つ目は、特別定額給付金の申請状況などを確認できる「特別定額給付金申請状況検索サイト」の作成だ。

 「関心が高かったこともあって、給付金に対してはピーク時には1日あたり4万件の問い合わせがコールセンターに寄せられた。電話での対応は、聴覚障害者には利用できないという問題もあり、5月29日に検索サイトをオープンした。申請番号を入れると自身の状況を把握することができる」(久元市長)。

 4つ目は、6月5日からスタートした音声での申請状況などの自動案内サービス。パソコンやスマートフォンを持っていない人でも問い合わせを行うことができる。

特別定額給付金 申請状況等の確認
音声通話による申請状況等自動案内サービス

 この4つのサービスは、いずれもPower Platformを使い、神戸市の職員自身が開発したもの。作ったサービスのコードについては、「オープンソースとしてGitHubに公開し、ほかの自治体の方でも利用可能とした。申請状況の確認サービスに対しては、すでにほかの自治体から問い合わせも受けている」(久元市長)。

 日本マイクロソフト 執行役員常務 手島主税氏は、「新型コロナウイルスの影響で、1カ月で2年分の急激な進化が進んだという意見があるが、神戸市はオープンに、多様な連携によってイノベーションを推進されている。久元市長と話をして、職員が思っていることをどう具現化していくのか、大きなチャレンジをしていく姿勢に共感した」と協業の背景を説明した。

4つの点で協業、神戸市のDXとスマートシティ実現を目指す

 なお、今後の協業の具体的な中身として、次の4点を挙げている

デジタルトランスフォーメーションの推進による働き方改革

マイクロソフトの働き方改革の知見を市職員にご紹介する、オンライン研修等を実施、Microsoft Teams、Microsoft 365などのマイクロソフトのコラボレーション環境を活用した、テレワーク環境や災害時の業務継続計画(BCP)の構築等により、市職員のデジタルツールの利活用を推進する。

スマートシティ実現に向けたデータ連係基盤の検討推進

日本マイクロソフトが、神戸市のスマートシティ実現に向けたデータ連携基盤の検討に参画し、最新技術による安心安全なスマートシティ実現に向けたアドバイザリーを提供。マイクロソフトの海外法人と連携し、先行する海外スマートシティのデータ連携基盤の事例を調査研究し、神戸市の理想のデータ連携基盤の概念を構築する。デジタルを利用した市役所と市民の接点の改善など、スマートシティのサービスの試行的プロジェクトの実施。

デジタル人材の育成および人材交流の実現

市民目線の新しい行政サービスや政策形成、社会課題解決のための新しいソリューション創出に向けたサービスデザイン思考ワークショップなどを実施し、デジタルを活用し、価値を創造する人材の育成と交流を促進する。政策形成や社会課題解決のための新しいソリューション創出にAIを安全かつ有効に活用するためのAIスクールを市職員や大学生向けに実施し、有効かつ安全にAIを活用できる人材を育成支援。

デジタルを活用した子どもや青少年の学び支援

家庭学習の補完となるオンライン双方向通信などの充実を図り、子どもたちの主体的な学びを支援するさまざまなデジタルツールと、その効果的な利用方法を提供。コミュニケーション教育ツールとしてのチャットボットの活用を検討。

包括連携協定の目指すところ
具体的な活動予定

 日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタル・ガバメント 統括本部長 木村靖氏は、「5月20日に、内閣官房と情報基盤構築で連携を発表しているが、自治体のデジタル化実現に向け包括的な提携を行ったのは、今回の神戸市との提携が初めてのこととなる。具体的には、働き方改革に関しては、当社の持つ知見を生かしたオンライン研修の提供、必要な人材の育成支援などを行う」と説明。

 一方で、「スマートシティ実現に向けては、デジタルシフトにつながる知見の共有を行う。デジタル人材育成に関しては、ワークショップやAIに関するオンライン学習の提供などを予定している。子どもたちのデジタル教育に関しては、デジタルを活用した学びの支援などを行っていく」としている。