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SAPジャパンがHXM事業を強化、パートナー9社との連携も発表

 SAPジャパン株式会社は26日、新たなソリューション領域となる「HXM(Human eXperience Management)」事業のビジネス戦略について説明会を開催した。

 HXMとは、「企業活動にかかわるすべての働く人が最高のパフォーマンスを出し、企業の継続的な成長につながるよう、あらゆる業務において最高のエクスペリエンスを提供し、働く人の声を聞き、改善し続けることのできる、新しい人材マネジメントのコンセプトだ」と、SAPジャパン バイスプレジデント 人事・人材ソリューション事業本部 本部長の稲垣利明氏は説明する。

SAPジャパン バイスプレジデント 人事・人材ソリューション事業本部 本部長 稲垣利明氏

 1980年代に台頭したHRM(Human Resource Management:人的資源管理)では、労働力管理の電算化や効率化が進められ、2000年代に注目されるようになったHCM(Human Capital Management:人的資本管理)では、優秀な人材を選抜し計画的に育成できるようになった。

 新たな分野となるHXMでは、「多様化した従業員とそのキャリアパスに合わせ、全員が最高の成果を生み出せる環境を提供する」(稲垣氏)という。

HXMという新分野に取り組む背景について

 具体的な製品としては、SAPジャパンが提供するクラウド人事システム「SAP SuccessFactors」と、同社グループ企業のクアルトリクス合同会社が提供する従業員エンゲージメントシステム「Qualtrics Employee(XM)」を中心に、9社のパートナーソリューションを組み合わせて提供する。

 稲垣氏によると、すでにSuccessFactorsは日本でも350社以上が導入しており、ユーザー数は130万人に達しているという。人事管理や勤怠管理はもちろん、採用、学習、キャリア開発など、人事業務のすべてを網羅しているが、「ここにクアルトリクスの従業員エンゲージメント機能を追加することで、人材にまつわる事象の背景まで把握できるようになる」(稲垣氏)としている。

SuccessFactorsの全体像

 クアルトリクス カントリーマネージャーの熊代悟氏は、「SuccessFactorsは、従業員の情報や属性、給与、成績などのO(Operational:業務)データを処理している。一方のクアルトリクスは、なぜ従業員は入社し、なぜ退職するのかといったX(eXperience:体験)データを深堀りする。この2種類のデータを組み合わせることで、より高度なインサイトが入手できる」と話す。

 例えば、従業員の8割は仕事に満足していても、勤務年数別に分析すると異なる結果が見えてくるかもしれないと熊代氏は述べ、「こうしたインサイトによって人事の仕組みの改善にもつながる」としている。

クアルトリクス カントリーマネージャー 熊代悟氏
XデータとOデータの融合を目指す

 現在多くの企業では、従業員エクスペリエンスを高めようと、定期的に従業員調査などを実施しているが、その頻度は1年に1回程度というのが現状だ。それだけでは不十分だと熊代氏は見ており、「入社から離職までの従業員ライフサイクルの中で、入社時のオンボーディング体験や研修、昇進、異動、育児休暇など、イベントが発生するごとにサーベイを実施するのが望ましい」とする。

 「より良いエクスペリエンスを提供する最も効果的な手法は、積極的に従業員の声を収集して分析し、改善アクションの実行を日々の業務として行うこと」というのが、熊代氏の考えだ。

クアルトリクスのソリューションで職場のライフサイクル全体を測定し改善する

 SuccessFactorsとクアルトリクスのソリューションを中核とした上で、今回独自のソリューションを組み合わせて提供するパートナーは、電子署名ソリューションを提供するドキュサイン・ジャパン株式会社、デジタル文書作成・管理ソリューションを提供するオープンテキスト株式会社、就業管理ソリューションを提供するKronos Incorporated、デジタルワークフローソリューションを提供するServiceNow Japan合同会社、デジタル技術の定着化を支援するソリューションを提供するWalkMe株式会社、人材スキル管理ツールを提供する株式会社イノービア、ウェブ面接サービスを提供する株式会社ZENKIGEN、メッセージプラットフォームを提供するSlack Japan株式会社、経路検索サービス「駅すぱあと」を提供する株式会社ヴァル研究所の9社だ。

 稲垣氏は、「先進的技術を持つパートナーと組むことで、最高のエクスペリエンスを提供するエコシステムを構築していきたい」と述べた。

説明会にはパートナー各社も参加し、今回の取り組みに前向きな姿勢を見せた
パートナーとのエコシステム