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リモートワークでもAWSは優位――、在宅勤務向けのソリューション製品群を紹介

Amazon WorkspacesやAWS Client VPNなどをアピール、導入事例も

 アマゾンウェブサービスジャパン株式会社(AWSジャパン)は23日、仮想デスクトップを実現するマネージドサービス「Amazon Workspaces」や、クラウドベースのコンタクトセンター「Amazon Connect」など、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大にあわせて需要が増大しているリモートワーク向けのソリューション製品群について、活用事例を交えて紹介するオンライン会見を行った。

仮想デスクトップサービス「Amazon Workspaces」

 Amazon Workspacesは、Amazon Web Services(AWS)が提供するフルマネージド型の仮想デスクトップサービス(DaaS)で、「いつでも、どこからでも、AWSクラウド上の仮想デスクトップにアクセスでき、リモートワークが求められる環境で使用されている」(AWSジャパン レディネス&テックソリューション本部の瀧澤与一本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト)という。

AWSジャパン レディネス&テックソリューション本部の瀧澤与一本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト

 また、その特徴として「ストリームデータの暗号化や多要素認証、クライアントに機密データを残さないセキュアな環境で利用できるとともに、初期費用が不要で、使用した分だけの支払いであること、わずか数分という短時間で展開が可能なシンプルなデプロイと管理を実現していること。さらには、1台からはじめられ、増減が容易な拡張性と、グローバルにも展開でき、一貫したパフォーマンスを提供可能な点にも特徴がある」と述べた。

Amazon Workspaces

 課金体系としては、月額料金と時間料金の2種類を用意。CPUコア数やメモリ量に応じてさまざまなプランを選択でき、CADやグラフィックスを利用するユーザー向けには、GPUを利用できる環境もラインアップされている。また2カ月間に限定し、月40時間まで無料で利用できるプランも用意されているとのこと。

 使い方は、ノートPCやタブレットでWorkspacesクライアントを起動し、ユーザー名やパスワードといった認証情報を入力してWorkspacesに接続すれば、設定した環境でさまざまなアプリケーションが利用できる。

 Windows搭載PCやMac、Chromebook、ゼロクライアント/シンクライアント、iPad、Androidタブレットのほか、Kindle Fire HDXや、ChromeやFirefoxといったWebブラウザからのアクセスも可能だ。

さまざまな環境で利用できる

 Amazon Workspacesで利用できるアプリケーションとして、「Amazon WorkDocs」を用意。ExcelやWordのファイルを保管できるほか、データを共有して共同編集などを行える。Amazon WorkDocs Companionというツールを用いれば、ローカルでの編集作業なども可能だ。

Amazon Workspaces

仰星監査法人では約330ユーザーが利用

 今回のオンライン会見では、仰星監査法人の事例を紹介した。

 AWSを導入して監査調書などを格納し、監査業務などの遂行管理などを実施している仰星監査法人では、2015年からAmazon Workspacesを採用し、現在、約330ユーザーが利用しているという。

 仰星監査法人 パートナー 公認会計士の金子彰良氏は、「VDIの導入を検討しているときにAmazon Workspacesに出会い、ローンチ初期から利用している。社内ではAWSといえばWorkspacesという認識がある」と前置き。

 「それまでは、拠点ごとにオンプレミスのサーバーがあったり、持ち出し用のノートPCに重要なデータを格納したりといった使い方だった。そこで、情報漏えいのリスクを軽減するためにAmazon Workspacesを導入。さらに端末もシンクライアント仕様とした。クラウドへシフトした結果、災害発生時に法人業務の中断に伴うリスクが軽減されるとともに、リモートワーク環境が整ったことで、顧客先と事務所の移動時間の削減、すき間時間の活用などが可能となり、業務生産性が向上した」と、その効果を説明する。

 さらに「今回の新型コロナウイルスの影響においても、すぐに在宅勤務が行え、インターネットに接続できる環境があれば、どこにいても最新の監査調書にアクセスできるため、在宅勤務への移行時にも、仕事のロケーションが変わっただけといえるほどの効果があった」とした。

Amazon Workspacesを中心とした在宅勤務

 またWorkDocsの活用により、監査調書の作成に必要な被監査会社の資料を、迅速に、セキュアに受領できるようになったとのこと。

 「これまでの資料の受け渡しは被監査会社の会議室で行われ、いわば三密の状況のなかで、紙の資料やPDFの資料を受け取るということが多かったが、こうしたリスクもなくなった。WorkDocsサイト上に、被監査会社の関係者と監査担当者しか入れないバーチャルな監査室が用意される形で、2月以降、30チームからWorkDocsサイトの新設申請があり、現在は約110サイトで稼働している。在宅勤務時の資料の受領や共有も可能になっている」とした。

 Amazon Workspacesの導入事例としては、このほか、日本では日本事務器がすでにテレワークに活用していることを紹介したほか、海外ではジョンソン&ジョンソンが3万5000のデスクトップをAmazon WorkSpacesに移行。Amazon自らも、20万ユーザーを対象にAmazon WorkSpacesへの移行を開始しているという。

仮想コンタクトセンター「Amazon Connect」

 仮想コンタクトセンターの「Amazon Connect」は、東京リージョンでも提供されてサービスで、100%クラウドベースのPBX/CTIシステムだ。コンタクトセンター向けオールインワン型ソリューションとして、従量課金方式で利用できる。

 それぞれの企業にパーソナライズ化した形でコンタクトフローを構築できるほか、セルフサービスでの設定変更、AWSの各種サービスの活用やSalesforceをはじめとする他社システムとの連携も可能となっている。

Amazon Connect

 導入事例として紹介されたPLUSでは、老朽化し、リプレースに多大なコストがかかる既存のアプライアンス型PBXを廃止して、新たにAmazon Connectを採用。2019年6月3日から稼働させたところ、一日平均1100回の発信、1200回の受信を行う環境において、年間で40%のコストダウンが見込めたという。さらに、自然災害や今回のような緊急事態宣言の環境下において、オペレーターが出社できない事態に陥っても、在宅で業務継続ができる環境が整ったとした。

 そのほかファンヴォイスでも、コールセンター業務を在宅で実施。カインズでは、30分でCTI環境を立ち上げ、緊急対応時も即時増員対応が可能になったといった事例を紹介した。加えてトランスコスモスでは、Amazon Connectを活用したクラウドコンタクトセンターサービスを、2020年度中に100件のサービス導入を目指しているとのこと。

 AWSジャパンの瀧澤本部長は、「Amazon Connectが選ばれている理由は、数カ月かかっていたコンタクトセンターの構築を数分で構築できること、AWSがプールしている電話番号を取得して、電話を受けられる環境がすぐに作れること、コンタクトフローもドラッグ&ドロップで行えるために、ITリテラシーが低くてもフローを構築できること、テキストで書いたものを音声合成のMizuki(女声)とTakumi(男性)で発声して対応できること、Salesforceと連携したシステム構築が可能であることなどが挙げられる。さらに、同一のインターフェイスで操作が可能なチャット機能も昨年から追加された」などと語った。

リモートでのコミュニケーションツール「Amazon Chime」

 3つ目のツールとして紹介されたのが、リモートでのコミュニケーションおよびコラボレーションが可能なツールが「Amazon Chime」である。今回のオンライン会見でもAmazon Chimeを利用し、約70人が参加した。

Amazon Chime

 Amazon Chimeでは、最大250人までが同時に参加できるオンライン会議やビジネスチャットが可能となっており、エンタープライズで利用することを想定して開発されており、AES 256ビットによる通信の暗号化、監査ログを取るAWS CloudTrail、パスワードを使った会議室への入場ロック、ユーザー権限の柔軟な設定変更などのセキュリティ機能を備えている。

 「エンタープライズのニーズに応える上で、セキュリティは最優先事項として取り組んでいる。これがAmazon Chimeを選んでいただけるポイントになる。まだ認知度が低いが、これからがんばっていきたい」と述べた。

 加えて「Webブラウザからの参加が可能であり、スマホやタブレットからでも利用できる。電話回線に切り替えた参加にも対応した。また高音質での会議や、ネットワーク切断時には自動的に再接続するといった機能もある。SIPとH.323に対応したビデオ会議システムとの互換性も持っているほか、使いやすい管理コンソールも特徴のひとつである」などとした。

リモートネットワークアクセスを実現する「AWS Client VPN」

 4つ目のツールとしては、リモートネットワークアクセスの「AWS Client VPN」が紹介された。AWS上に配置されたClient VPNのエンドポイント(VPC)を経由し、オンプレミス内のシステムへ接続可能なネットワークで、1エンドポイントあたり2000の同時接続が可能であり、セキュリティグループやNACLで通信元や通信先を制御できる。

 「在宅勤務が一斉に始まったことで、VPNルータのキャパシティが足りずに、従業員がVPNに接続できないという課題が発生しているが、AWS Client VPNはクラウド型であり、接続数を自動的にスケールアップするため、接続数が増加しても、プライベートネットワークに接続することができるようになる」とする。

AWS Client VPN

 シオノギデジタルでは、オンプレミス環境にVPNルータを設置していたが、原則在宅勤務へと移行したことにあわせて、急遽、AWS Client VPNを導入したという。

 「シオノギデジタルは、極めて短いリードタイムでサービスを展開できるVPN環境として、AWS Client VPNの利用を検討。すでにメインデータセンターとDirect Connect接続されていた既存のAWS基盤を利用することで、実質3日間で構築、検証、ユーザー展開の準備を済ませ、動作検証を完了させた。4月13日から順次展開し、既存VPN環境を含めて、約4倍のVPN同時接続数のキャパシティを確保。国内のシオノギグループの在宅勤務ニーズをおおむね満たせるようになった」とした。

 また、デスクトップアプリケーションの配信を行う「Amazon AppStream 2.0」のリモートワークに活用されていることを紹介。「Amazon AppStream 2.0は、完全マネージド型のアプリケーションストリーミングサービスで、デスクトップアプリケーションを任意のコンピュータのブラウザへ安全に配信できる」と説明している。

Amazon AppStream 2.0

AWSからの支援策

 このほか今回は、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせて、リモートワークが急増していることにあわせて、AWSから行っている提案についても説明した。

 Amazon WorkSpacesでは、初めてWorkSpacesの使用を開始するユーザーに対して、6月30日まで、最大50個までのWorkSpacesを無料で提供。Amazon WorkDocsについても、初めてAmazon WorkDocsの使用を開始するユーザーに最大50ユーザーに、1TBずつのストレージと機能を無料で提供する。

 また、Amazon Connect AWSでは、12カ月間の無料利用ができる環境を用意。Amazon Chime AWSでは、初めて使用するユーザーにAmazon Chime Proの機能を無料で提供しており、Amazon AppStream 2.0でも、無料で1カ月あたり40時間が利用できるようにする。

 そのほか、AWSクラウドを活用して、ビジネス革新を目指すITリーダーやITプロフェッショナル、エンジニアを対象とした「AWS Innovate オンラインカンファレンス」を延長して、5月8日まで開催する。

AWSからの支援策

 さらに、「COVID-19 データの分析用パブリックデータレイク」の提供や、2000万ドルを投じて、新型コロナウイルスの感染拡大緩和と、革新的な診断方法に関する研究、イノベーション、開発を加速するための「AWS Diagnostic Development Initiative(AWS診断開発イニシアチブ)」を設置したことを報告した。

 なおAWSでは、国内のAmazon Partner Network(APN)のパートナー各社が、AWSを活用して無償で提供しているサービスをまとめたWebサイト「日本おうえんプロジェクト」を、4月23日10時にオープンしたことを発表。「新型コロナウイルスの感染拡大の環境下において、お客さまの声を集めながら、AWSやAmazonがなにをできるのかといったことを、今後も考えていきたい」と述べた。