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シンプルこそが最大の差別化要因――、「Cisco Meraki」がポートフォリオ拡充 シスコ製品との統合を加速

Catalystのハードを採用、開発に2年を要したスイッチ「MS 390」などを発表

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は25日、同社のクラウド管理型ネットワークソリューション「Cisco Meraki」のポートフォリオ拡充を発表した。

 本発表にあわせて米国から来日した米Cisco、Cisco Meraki シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャ トッド・ナイチンゲール(Todd Nightingale)氏は、「Simple Comes First――、シンプルこそがMerakiの最大の差別化要因。そこにセキュリティやスイッチなどCiscoの強力なテクノロジーが統合され、Merakiはより価値のあるプラットフォームへと進化を遂げた。日本のMerakiユーザーにもその価値を届けていきたい」と語り、日本市場にも引き続き注力していく姿勢を見せている。

米Cisco、Cisco Meraki シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャ トッド・ナイチンゲール氏

さまざまなCisco Merakiの新ソリューションを発表

 今回、Cisco Merakiの新たなポートフォリオとして発表されたソリューションは以下の通り。

Cisco Meraki MS 390シリーズ

Merakiとして初めてCiscoのスイッチ製品(Cisco Catalyst)をハードウェアに採用した次世代スイッチ。Merakiのシンプルなダッシュボードはそのままに、長くイノベーションを重ねてきたCiscoスイッチを「約2年かけて統合した。Meraki製品でここまで時間をかけたのは初めて」(ナイチンゲール氏)。2019年12月提供予定

Meraki製品としては初めてCiscoのハードウェアを採用したスイッチ「Cisco Meraki MS 390」は、開発に2年を要したという
SecureConnect

スイッチ製品「Cisco Meraki MS」のポートに無線LANアクセスポイント「Cisco Meraki MR」が接続されると自動で検出する機能。MS 210シリーズ以上およびWi-Fi 5/6対応のMRでサポート

アダプティブポリシー

ユーザー/アプリケーション/デバイスをグループ化し、接続形態やデバイス/ユーザーの追加にかかわらず、グループごとに適切なポリシーを適用できるマイクロセグメンテーションが実現。MerakiネットワークとCatalystなどをメインとしたSD-WANファブリックマルチドメインポリシーで連携することも可能に

デバイス、ユーザー、アプリケーションをグループ化し、デバイス数や接続タイプにかかわらず、共通のセキュリティポリシーが適用可能に
セキュリティイノベーション

MDMをインストールすることなくセキュアなデバイス認証を可能にする「Cisco Meraki Trusted Access」の導入、Ciscoが提供するクラウド型セキュリティプラットフォーム「Cisco Umbrella」とMRの統合によるDNSトラフィック保護およびコンテンツフィルタリング(Meraki MR with Cisco Umbrella)、セキュリティアプライアンス「Cisco Meraki MX」のファイアウォールルールの強化など。2020年第2四半期提供予定

Cisco Meraki MG 21シリーズ

次世代の無線WANを実現するクラウド管理型セルラーゲートウェイ。2020年第2四半期提供予定

Merakiとしては初となる、ワイヤレスWAN市場に向けたセルラーゲートウェイ「Cisco Meraki MG21」シリーズ

 なお、現時点でのリリースは未定だが「今後2カ月以内」(ナイチンゲール氏)の提供が予定されているMeraki製品として、2019年5月のカンファレンス「Cisco Live!」で発表されたネットワークカメラ「Meraki MV 32」も含まれている。360度ビューイングが可能な魚眼レンズで通行人や物体をトレースし、AIによる分析(推論)をリアルタイムで行えるセキュリティカメラで、インテリジェントなAIエッジデバイスとしても位置づけられる。

Ciscoの技術や製品との統合が加速

 これらの新しいMeraki製品/ソリューションに共通するのは、Ciscoの技術や製品との統合が加速している点だ。2006年にサンフランシスコのスタートアップとして誕生したMerakiは、2012年にCiscoに買収されてからも独自のブランドを維持しており、シンプルでセキュアなクラウド型ネットワーク管理製品として、SMB(中堅・中小企業)を含めグローバルで広くその名を知られている。

 その一方で、ここ1、2年は急速にCisco傘下のいちブランドとしての位置づけを強めており、Merakiが得意としてきたシンプルな管理性と、セキュリティやネットワーキングといったCiscoの技術を統合することで、より広いレンジの顧客をターゲットにしている。

 「Merakiのターゲティングは大きく2つある。まずSMBだが、これは業種業界を問わず、すべてのSMBに受け入れられるソリューションを提供していく」としたうえで、エンタープライズに関しても広いレンジを狙っていくという。

 「Merakiが特に向いているのは、多くの場所に分散したサイトをもつ企業、例えば小売りや学校、ホテルなどだ。従業員5000人が1つの場所で働いているなら、それを集中管理するITアドミニストレータを1人雇えばいい。だが5000人が複数の場所に分散している場合、それぞれのサイトでITアドミニストレータを雇うことは難しい。Merakiはそうした分散した数多くの現場を、IT担当者がいなくても管理できるプラットフォーム。今回、Merakiの製品にCiscoの強力なネットワーキングやセキュリティなどが統合されたことで、Merakiがよりセキュアで拡張性/柔軟性の高いプラットフォームへと進化し、多くの拠点をもつ顧客企業のIT環境をさらに向上させていく」(ナイチンゲール氏)。

国内での傾向と導入事例

 日本市場においてもMerakiのビジネスは順調に成長しているが、ナイチンゲール氏が指摘するように、拠点を数多く持つ小売りや教育機関などでの採用が目立つ。Merakiの日本市場におけるビジネスを統括するCisco Meraki ジャパンカントリーリード 山移雄悟氏は、「企業規模にかかわらず、日本企業がITに対して抱える課題としてもっとも多いのは“人”に関する問題、つまりIT人材の不足やノウハウの不足などだ。Merakiのシンプリシティはそうした課題を抱える日本企業にとって受け入れやすい存在」と語り、現在、5000社以上の日本企業がMerakiを導入していると語る。

Merakiの最大のケイパビリティが、このダッシュボードに象徴されるシンプリシティ。誰がどのデバイスで、どんなアプリケーションを動かしているかがひと目でわかる。セキュリティ的に不審な動作があれば、リアルタイムに検知することも可能
シスコ Cisco Meraki ジャパンカントリーリードの山移雄悟氏

 Merakiの国内事例としては

・リコーの複合機にMerakiダッシュボードを実装、ユーザー企業が所有するすべての複合機を一元管理できるようにしたほか、複合機をアクセスポイントとして機能させ、パネルからワンタッチでゲストWi-Fiを作成可能に
・NTT東日本の「ギガらくスイッチ」「ギガらくVPN」の基盤にフルスタックでMerakiポートフォリオを採用
・全国に1万5000を超える店舗を持つローソンのネットワーク管理基盤としてMerakiを採用、24/365オープンのコンビニエンスストアで発注作業や検品の検知などをリアルタイムかつゼロタッチで実現

などが有名だが、いずれもIT人材がいない複数の現場でも、シンプルな操作性でもって簡単にネットワークを設定/管理できている点が特徴となっている。

リコーとの協業事例。複合機にMerakiを実装し、企業の全事業所にある複合機の状況を一元管理可能に。複合機をアクセスポイントとして機能させ、ゲストWi-Fiの作成も
NTT東日本が提供する企業向けSDxサービス「ギガらくスイッチ」「ギガらくVPN」の基盤にも、フルスタックでMerakiポートフォリオが採用されている

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 ナイチンゲール氏は「われわれのゴールは、顧客企業のビジネスに対するパッションをシンプル(Meraki)でパワフル(Cisco)なテクノロジーでもって実現すること。シンプルこそが可能性を広げる」と語る。

 来年以降、Wi-Fi 6や5Gといった最先端ネットワーク技術の普及が急速に拡大することが予想されているが、そうしたトレンドにおいてもCiscoとの統合を進めることはMerakiにとって大きな優位性をもたらす可能性は高い。

 複雑化/高度化するネットワークの世界を、可能な限りシンプル化して顧客に提供していく――。Ciscoとの技術統合を進めつつも、ブランドの象徴であるシンプリシティを維持し続けることが、Merakiにとっての変わらないミッションであることは間違いないようだ。