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中小企業の働き方改革をITで支援――、シスコが国内市場の中小企業戦略をアップデート、MerakiをCisco Startに追加

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は17日、国内の中小企業を対象にしたソリューションブランド「Cisco Start」シリーズのアップデートを発表し、ブランド、製品/価格、販売体制の3つの分野における新戦略を明らかにした。

 シスコ 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋慎介氏は「現在、シスコの国内ビジネスにおける急激な成長を支えているのは中小企業向けソリューション。働き方改革の影響もあり、中小企業の積極的なIT投資はまだまだ拡大すると見ている。今回のCisco Startのアップデートをきっかけに、中小企業の働き方改革を積極的に支援していきたい」と語り、中小企業向けビジネスにより注力していく姿勢を示している。

シスコ 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋慎介氏

ローンチから2年半でシスコの国内ビジネスを支える存在へ

 2015年9月のローンチ以来、ルータ、スイッチなどのネットワーク製品から「Cisco WebEx」などのクラウドサービスに至るまで、国内の中小企業に徹底的にフォーカスしたラインアップと販売体制で展開してきたCisco Start。フラグシップのスイッチ「Cisco Catalyst」シリーズに4万円台の製品を投入するなど中小企業向けの製品展開に注力し、2017年度は前年度比237%の売上を達成、“Ciscoブランド=大企業向け”というイメージを覆し、ローンチから2年半でシスコの国内ビジネスを支える存在へと成長している。

2017年度のCiscoはグローバルではマイナス成長だったが、日本法人は2ケタの伸びを示しており、その原動力となったのがCisco Startによる中小企業ユーザーの拡大

 加えて2017年は、政府が推進する「働き方改革」の流れが中小企業にも波及、ITによる生産性向上の課題が中小企業でもクローズアップされるようになり、「ネットワーク、セキュリティ、コラボレーションの3つの側面からIT環境を向上したいというニーズが急激に強まっている」(高橋氏)という背景がある。

 さらに人材不足やセキュリティ強化といった以前からの課題だけではなく、「中小企業であっても最新のIT事情にキャッチアップしていく必要がある」(高橋氏)というトレンドもあり、こうした変化を踏まえて今回のCisco Startの刷新に踏み切ったとしている。

Cisco Startは中小企業の働き方改革を「ネットワーク、セキュリティ、コラボレーション」のニーズに則して支える

3つの柱でアップデートを実施

 今回発表されたCisco Startのアップデートの概要は以下の通り。

ブランドの強化

中小企業のユーザーがITに楽しく取り組めるようにオリジナルキャラクター「Cisco5(シスコファイブ)」をCisco Startでもコンシェルジュとして活用。またアスリートアンバサダー契約を結んだ卓球の石川佳純選手、張本智和選手が「必ず東京オリンピックに出られるように支援」(高橋氏)し、ブランド価値の向上を図る

Cisco Startのブランディングも担当するCisco5の面々
製品/価格戦略の強化

無線LANアクセスポイントのエンドライン新製品として、IEEE 802.11ac対応の「Cisco WARP125」を投入(市場提供価格は1万円台)、またCisco Startのポートフォリオとしてクラウド管理ソリューション「Cisco Meraki」「Cisco Intersight」、コラボレーションキット「Cisco Spark Board」「Cisco Spark Room Kit」を追加した。また働き方改革を推進するため、Merakiを含むCisco Start全ラインアップの市場想定価格を10%前後見直して提供

新製品のワイヤレスLANアクセスポイント「Cisco WAP 125」
販売体制の強化

地域別の事業組織を展開し、「地元のパートナーとの関係性を強化した地割り制度」(高橋氏)を採用、また産業別のビジネス担当者を配置し、文教や小売りなど特定の業種/業界へのコミットを強化

 会見では、自宅や外出先からエンドポイント「Cisco AMP for Endpoints」を経由して会社のネットワークにセキュアに接続し、「Cisco Spark Room Kit」でリモート会議に参加、リモートデバイスの管理はMeraki MXで行うデモが披露された。Cisco Sparkのラインアップを利用することで、中小企業でも場所や時間にとらわれず、生産性を向上する働き方が十分に可能であることが強調されていた。

Cisco Startの組み合わせの一例。在宅勤務やリモート会議など、大企業では一般的な働き方を中小企業でも実現するツール群

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 この中でもっとも注目すべきは、これまで別展開だったCisco MerakiをCisco Startブランドに統合したことだろう。

 Merakiは2017年11月から日本でも提供が開始されているが、クラウドによるネットワーク/モバイルデバイスの一元管理を手軽に実現できるソリューションとして、大企業はもちろんのこと、中堅/中小企業からの引き合いが強い。

 「中小企業が顧客向けのネットワークを導入する際、最初は量販店で売っているような家庭用Wi-Fiルータなどを購入してLANを構築するケースが多い。しかしビジネスが大きくなるにしたがって、そうしたコンシューマレベルのネットワークでは追いつかなくなり、デバイスの管理も限界になる。こういった顧客の問題を解決するソリューションのひとつとして、クラウド上で一元管理できるMerakiは最適」と高橋氏は語る。

 ネットワークがコンシューマレベルでは追いつかなくなったとき、エンタープライズレベルの機能を求めて、多くの中小企業がシスコに相談に来る。その際、より広い電波エリアをカバーできるエンドポイントなどとあわせて、不特定多数のモバイルデバイスをクラウドで管理できるMerakiは、IT人材が不足しがちで現場の繁閑の差が激しい中小企業にとっても手軽で導入しやすく、その効果を実感しやすい製品であり、教育現場や飲食店、旅館/ホテルなどの導入が急激に増えている。

 すでに陣屋やスープストックトーキョーといった国内企業によるMeraki導入事例も発表されており、Cisco StartにMerakiが追加されたことで、IT管理の効率化、そして働き方改革の推進がより広がることが期待される。

 また、シスコにとってもMerakiが正式にCisco Startブランドに入ったことで前年度の237%増という数字を大きく上回る売上増が見込まれており、中小企業ビジネスの拡大の傾向はさらに続きそうだ。

Cisco Start導入企業の一部。文教やリテール、ホテルなどの導入が目立つ。陣屋、スープストックトーキョーなどはCisco Merakiのユーザーでもある