ニュース

シスコ、日本市場におけるMerakiビジネスへのフォーカスを表明 新製品の紹介も

「日本のユーザーにもシンプルでセキュアなデジタルワークプレイスを届けたい」

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は19日、クラウドベースのIT管理ソリューション「Cisco Meraki」のアップデートに関し、報道関係者向けのラウンドテーブルを開催した。

 説明を行った、米Cisco Systems(以下、Cisco)でMerakiビジネスを統括するCisco Meraki シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのトッド・ナイチンゲール(Todd Nightingale)氏は、「Merakiはシンプル、セキュア、デジタルワークプレイスの3つをキーワードにして成長してきた会社だが、日本市場でも非常に多くのユーザー事例が生まれている。これはわれわれの掲げるシンプリシティが日本のユーザーにも高く評価されている結果だと受けとめている」と語り、引き続き日本市場に対して強くコミットしていく意向を示している。

米Cisco、Cisco Meraki シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのトッド・ナイチンゲール氏

包括的なクラウドプラットフォームへと成長したMeraki

 MITのリサーチプロジェクトとしてスタートし、その後、クラウドベースのWi-Fi管理を得意とするスタートアップとして注目される存在となったMerakiは、2012年11月にCiscoに買収され、大きな話題となった。

 「この6年間でMerakiビジネスは20倍以上の規模」(ナイチンゲール氏)に成長したが、その要因はMerakiブランドとしての独立性をある程度保ちながらも(例えばMerakiオフィスは現在も創業時と同じサンフランシスコにあり、Cisco本社とは別に存在する)、「Cisco DNA Center」など主要なCisco製品との統合を進め、さらに市場のニーズに適した着実なポートフォリオ拡張戦略を取ってきたところにある。

 現在では単なるWi-Fi管理製品のイメージから脱し、エンタープライズからSMBや従業員10名以下の小規模オフィスまでの幅広いユーザー層をカバーする包括的なクラウドプラットフォームへと成長している。

 Merakiポートフォリオには

・ワイヤレスアクセスポイント「Cisco Meraki MR」シリーズ
・スイッチ「Cisco Meraki MS」シリーズ
・セキュリティ & SD-WANアプライアンス「Cisco Meraki MX/Z」シリーズ
・アプリケーション/WAN分析「Cisco Meraki Insight」
・エンドポイント管理「Cisco Merakiシステムマネージャ」
・セキュリティカメラ「Cisco Meraki MV」シリーズ

といった、ハードウェア/ソフトウェアをあわせた6つのラインアップが含まれており、規模や用途に応じたセキュアなネットワーク環境――、ナイチンゲール氏がいうところの“デジタルワークプレイス”を容易に構築することが可能だ。

 飲食店やショッピングモール、ホテルなどにおけるゲストWi-Fi環境、本社とブランチオフィスをつなぐSD-WAN、ワークスペースや店舗内のカメラによる監視、カンファレンス会場の来場者の行動分析など、Merakiの使われ方は多種多様であり、サードパーティによるアプリケーションもAPIで容易に連携させることができるため、利用シーンは日に日に広がっている。

 そして、これらをすべてクラウド上のダッシュボードから一元管理できる点もMerakiの大きな特徴となっている。

 Merakiのようにクラウドベースでエンドポイントを含むWi-Fiネットワークを管理するサービスは他社からも提供されているが、Merakiの最大の差別化要因は、前述のナイチンゲール氏の言葉にもあるように“シンプリシティ”に徹底的にフォーカスしている点にある。

 「ダッシュボードにたくさんの機能を詰め込んだり、プロフェッショナル向けのコマンドラインインターフェイスを提供したりしても、それを使いこなせるビジネスユーザーは少ない。Merakiは誰でも簡単に導入でき、ダッシュボードの画面をひと目見て、いまネットワーク上で何が起こっているかをすぐに理解できるよう、カスタマーエクスペリエンスに徹底的にこだわっている。単にユーザーインターフェイスを“シンプル”にしているだけではない」(ナイチンゲール氏)。

 Merakiが「シンプルでセキュアなデジタルワークプレイス」にフォーカスする理由は、ネットワークプラットフォームの構築にユーザーが手を煩わす必要をなくすためである。ネットワークの設定はエキスパートにとっても難解な場合がある。ましてや専門のIT要員を抱えることができないSMBや小規模オフィスであればなおさらだ。そのハードルをMerakiが取り除くことで、企業は本来の仕事に集中することができる。

 ただのWi-Fi管理製品にとどまらず、Merakiが顧客のビジネスを支援するデジタル“プラットフォーム”として存在するためには「シンプルでセキュアなデジタルワークプレイス」は常に追い続けなければならないゴールだといえる。

Merakiにとって、グローバルと日本のニーズは非常に近しい

 Merakiは現在、世界190カ国でビジネスを添加しており、導入企業の数は42万社を超えるが、日本においてもここ1、2年で急激に顧客数を増やしており、現時点で国内の顧客数は5000社を超える。興味深いのは「グローバルとポートフォリオの売上比率があまり変わらない」(Cisco Meraki ジャパン カントリーリード 山移雄悟氏)という点で、ことMerakiに限っては、グローバルと日本のニーズが非常に近しいことを示している。

日本市場におけるMerakiポートフォリオの売上の推移。Ciscoに買収された2016年から急激に売上が伸びており、2019年度は10カ月時点ですでに2018年度の売上を超えている。各ポートフォリオの売上の比率がグローバルに近いことも特徴のひとつ

 グローバルと同様に、Merakiを導入する日本企業の業種業界も、教育機関、製造、小売/レストラン、医療など多岐にわたっており、ローソン、河合塾、東映アニメーション、龍谷大学などの事例も発表されている。

 例えば、ローソンでは約2万の店舗でMerakiを導入し、発注作業や欠品の検知などをリアルタイムに近い形で実現できているという。「コンビニエンスストアは24時間365日オープンしている業態であるため、ネットワーク設定の作業も業務中に行うしかない。現場の方々がいかにしてその作業時間を短縮できるかという点において、ゼロタッチを実現できるMerakiを評価いただいた」(山移氏)。

Merakiを導入した日本企業の一部。最近では小売やレストランでの採用が急速に増えているという

 また、4月には日本発のMerakiビジネスとして個人事業主や従業員10名程度の小規模オフィスに特化した「Meraki Go」の提供を開始しており、SMBよりもさらに小規模な事情者へのリーチも強めている。

 一方で、「これまで閉域網のデータセンターに置かれてたデータがパブリッククラウドに置かれるようになり、海外のブランチオフィスや各店舗から直接、インターネットにセキュアに抜けるために、MX/Z(SD-WANアプライアンス)を使いたいという企業が増えてきた」(山移氏)ことから、中堅~エンタープライズのSD-WAN構築のニーズも高まっているという。

東京とサンフランシスコの間でSD-WANを構築するデモ。スポークを選択し、接続先のハブをドリルダウンで選ぶだけで簡単にVPNトンネルを構築可能
デモではMeraki東京オフィスのネットワーク接続状況をダッシュボード上に表示、どのデバイスがどのアプリケーションを使用しているか、どれくらいのデータ量を通信ししているかなどがひと目でわかる

 こうした日本市場のポジティブな動向について、ナイチンゲール氏は「日本は以前からわれわれにとって重要な市場。2年前(2016年11月)、“日本語でMeraki”を掲げ、ダッシュボードの日本語化を実現したが、プラットフォームとしてのMerakiを評価してくれる企業が増えたことをうれしく思う。日本には非常に数多くの中小企業があるが、Merakiは焼き鳥屋のような小さな飲食店でも使えるシンプリシティを目指している。そういう点で、Meraki Goは日本のシステムに適したソリューション」と語っており、今後も日本市場へのコミットを強めていくとしている。

スマートカメラの新製品・新機能をデモ

 Ciscoは6月9日~13日(米国時間)にわたって、米国サンディエゴで年次グローバルカンファレンス「Cisco Live 2019」を開催したが、そのキーノートにおいてナイチンゲール氏は、2018年11月に発表し、この5月から販売を開始したスマートカメラの新製品「Cisco Meraki MV32」およびスマートカメラ向け機能「Motion Search 2.0」「Motion Recap」のデモを行った。

 Meraki MV32は360度ビューイングを可能にするフィッシュアイカメラで、ズームはもちろんのこと、バーチャルなパンチルト機能も提供する。パンチルト機能を搭載するネットワークカメラは非常に高価な製品が多いが、ソフトウェアとしてパンチルトを実現することで、コストを抑えている点も特徴のひとつだ。

サンディエゴで開催された「Cisco Live 2019」のキーノートでナイチンゲール氏が行ったMeraki MV32のデモ。360度の円形画像からズームもパンチルトも可能。最大解像度は2058x2058で、256Gバイトのオンボードストレージが搭載されている
新しくラインアップに加わったフィッシュアイレンズのスマートカメラ「Cisco Meraki MV32」は360度のビューイングを提供する

 また、強力で鮮明な動態検知アルゴリズムを実装した「Motion Search 2.0」、ひとつのカメラが同じ場所で撮影した複数時間帯の画像をコンポジットし、指定時間内に何が起こったかを把握できる「Motion Recap」という2つの機能がMVシリーズに新たに加わり、スマートカメラとしての性能がより高まっている。

 ナイチンゲール氏はこれとほぼ同じデモを今回のラウンドテーブルでも行い、「日本のユーザーにもより協力になったMVシリーズをぜひ試してもらいたい」と語っている。

MV32を含むMerakiのスマートカメラはMerakiのほかのポートフォリオと組み合わせることで、管理者はどこからでもセキュアなモニタリングを行える。ビューイングクライアントのデバイスを使えば、あたかもその場にいるような疑似体験も可能

*****

 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が取り上げられるようになってずいぶんたつが、日本企業はネットワークを含むITインフラの管理/運用に多大なコストや手間をかけているところがいまだに多く、本来の意味でのDXを実現できている企業は残念ながら少ない。

 そうした中にあって、企業規模を問わず、シンプルなエクスペリエンスでもってセキュアなデジタルプラットフォームを構築できるMerakiは、日本企業の業態にもマッチしやすく、導入件数が増えているというのもうなずける。

 DXを実現するには、そのベースとなるプラットフォームが必要となる。その最初の選択肢として、あるいはSD-WANのように時代の変化にあわせたネットワークの再構築プラットフォームとして、Merakiへの注目度は日本でも高まっていくことは間違いないだろう。

 新製品の展開を含め、ユーザー事例の拡大やパートナー戦略に関しても日本市場でMerakiがどんな戦略を取っていくのか、引き続き追っていきたい。