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バックアップからデータマネジメントにシフトし大きな成長を――、ヴィームの古舘正清社長
前年比150%増の国内売上成長の維持を目指す
2019年9月12日 13:38
ヴィーム・ソフトウェア株式会社(以下、ヴィーム)は12日、同社の事業戦略を説明する記者会見を開催した。その中で古舘正清社長は、「3~4年後には国内トップシェアを奪えると考えている」と発言。ここ2年間続いている、前年比2.5倍という日本における売り上げ成長を維持する考えを示した。
古舘社長は、「多くの人がバックアップは成熟市場だと考えているが、バックアップにとどまらず、データマネジメントにシフトすることで大きな成長が見込める」と前置き。
その上で、「私はヴィームの社長に就任して2年目だが、その間、データマネジメントの考え方が浸透し、日本では非常に高い成長率を維持している。欧州では、すでにトップシェアになっており、グローバルでも2年後にトップシェアになれるだろう。日本の市場に参入したのは4年前であり、まだシェアは低いが、ヴィームのソリューションの価値が理解されはじめてきた」と、現状を説明する。
また、「まずはパートナーを増やしていくことに取り組んでおり、今年から大手SIパートナーとの取引も開始した。2017年には70社だったパートナー企業は、2019年には約3倍となる200社以上にまで増加している。金融、公共、製造、通信の各業界のトップ企業が採用をはじめており、勢いがついている」と述べた。
グローバルでもAPJでも高成長を維持
同社2019年度(2019年5月期)におけるグローバルの売上高は10億ドル以上となったほか、35万社が利用し、毎月4000社ずつユーザーが増加。全世界のデータ保護&リカバリソフトウェアでは、新規ライセンスの売上高で27%のシェアを獲得し、トップに立っているという。
また、アジア太平洋・日本地域(APJ)でも、売上高は前年比36%増の7500万ドル、3600社以上の新規顧客を獲得しているとする。
こうした実績について、Veeam Software エンタープライズ戦略 バイスプレジデント(VP)のデイブ・ラッセル氏は、「2018年における全世界のソフトウェア単独市場は前年比6.8%増だが、当社は世界全体では前年比16%増、APJでは36%増。日本では150%増という高い伸びを示している」と好調さをアピールする。
Veeam Software アジア太平洋地域・日本担当シニアバイスプレジデント(SVP)のショーン・マクレガン氏も、「APJでは、過去3年間の平均成長率は30%、案件の増加率は23%増、新規顧客の増加率は55%に達している。ビジネスの100%がパートナーを通じたものであり、APJには1985社の取引パートナーがいる。市場平均成長率の6倍の成長を遂げており、他社が人員を削減しているのに対して、当社は今がチャンスだと考えて投資を加速している」とした。
またVeeam SoftwareのラッセルVPは、「バックアップ&リカバリベンダーを変更したいと思っているかという質問に対して、半分強が変えたいと考えている結果が出ている。言い換えれば、業界は半分強の企業に対して、望み通りの製品を提供していないということになる。その理由は、コストの問題、容易な導入や日々の運用の課題、バックアップとリストラのスピードに不満がある」と指摘。
「ベリタス、Dell EMC、IBMという上位3位の企業はシェアを落としているが、それに対して当社は高い成長を遂げている。また、他社の売り上げは3分の2以上がメンテナンスによるものであるが、当社の3分の2は新規ライセンスからの収入である。データのアベイラビリティ、データのアジリティ、ビジネスのアクセラレーションという3点にフォーカスしている点が評価されている」などとした。
また、Veeam SoftwareのマクレガンSVPは、「クラウドデータマネジメント市場は、2023年までに310億ドルの市場規模にまで拡大する見込みであり、マネジメントする範囲が広がっている。これまでのデータセンターは、仮想化による最先端の技術を活用したものであったが、2019年からはフェーズ2に入り、データがさらに急速な勢いで増え、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドでの活用が増える。そうした環境において、シンプルで、高い信頼性を持ち、柔軟性を備えた製品はますます重要視されることになる」と、今後の展望を示していた。
日本におけるデータマネジメントの状況
ヴィームの古舘社長は、日本におけるデータマネジメントの状況についても説明した。
日本の企業は、世界に比べてデータ管理が遅れている現状にあるとのことで、「東日本大震災以降、BCPに対する投資が加速し、資金力がある企業はDR(災害対策)による二重化を進めている。しかし、それ以外の企業はバックアップを取っているに過ぎず、日本の企業のダウンタイムは、グローバルに比べて2倍以上。ひとつの障害に対する損害額も大きい」のだという。
これは、レガシーのツールを活用していて、バックアップからリストラができないという課題を抱えていたり、バックアップツールがサブシステム単位にバラバラに導入されていたりすることが原因。古舘社長は、「バックアップの取り方がバラバラ、戻し方がバラバラであり、世代管理もバラバラ。バックアップさえ取っていればいいという意識が強く、整合性を取ることができない状況にある。クルマを購入する際に、何も考えず、自動車会社が扱っている自動車保険をそのままつけてしまうようなもの。販売会社や導入の仕方が異なるたびに、バラバラのバックアップツールが導入され、サイロ化している」と、警鐘を鳴らす。
では、どう対処すればいいのかという点については、「当社が提案しているのは、統合して、効率的なデータ管理システムを作ること」と説明。「オンプレミスとクラウドのハイブリッドクラウド環境やマルチクラウド環境が当たり前になるなかで、データを一元的に管理することも当たり前にならなくてはならない。データマネジメントの観点から一元管理し、全体を可視化できるようにリアーキテクチャすることが大切である」とする。
「データの全体像を考えていない企業が多かったが、やっと全体を見直さないといけないという流れが出ている。まずは、オンプレミス側のデータ管理の統合を図り、次にマルチクラウド環境やハイブリッドクラウド環境での統合化を進める提案をしている。こうしたステップのなかで、サブシステムから当社を導入しようという動きが出ている。最終的には、トータルコストを下げ可用性を上げていくことができる」(ヴィームの古舘社長)。
また、Veeam SoftwareのマクレガンSVPは、「日本の企業の93%の企業が、2019年までにクラウドデータマネジメントへの取り組みを整える予定であり、4100万ドルをかけてトランスフォーメーション技術に投資すると考えている。日本は大きなチャンスがある市場である。その市場において、クラウドデータマネジメントを提供する最も信頼できるバックアップソリューションベンダーになる」との意気込みを示した。
未来志向の組織に求められるもの
一方、データを取り巻く環境については、Veeam SoftwareのラッセルVPが説明した。
「2018年には33ZB(ゼタバイト)であったデータは、2025年には175ZBに増大するとの予測があり、これはiPadに換算すると1億7500万台にあたる」と、データ量の増大に触れた後で、「一般的な企業にかかるダウンタイムコストは2000万ドルに達しているほか、アプリケーションとデータへの継続的なアクセスが満たされてない企業が73%、ダウンタイムのせいで自社のブランド品位が損なわれたという企業が38%あり、結果として顧客からの信用を失墜した企業が54%に達している」と述べ、データ保護の重要性をあらためて強調。
「柔軟性と信頼性の高いバックアップを実現する『クラウドデータマネジメント』、自分のデータに常にアクセスできる『コンフィデンス』、新たなテクノロジーを利用して、データ分析から得られる知見を活用する『ケイパビリティ』、新たな技術を積極的に受け入れる『カルチャー』が、未来志向の組織に求められている」などと述べた。