ニュース

SAPジャパン、調達・購買ソリューションが日本で需要拡大とアピール

コスト削減、コンプライアンス強化などを進める企業ニーズが追い風

 SAPジャパン株式会社は3日、調達・購買管理ソリューション「SAP Ariba」「SAP Fieldglass」の日本での最新動向を紹介するプレスセミナーを開催した。

 国内では、Aribaは2016年に、Fieldglassは2017年にリリースしているが、Aribaをプレス向けにアピールするのは初めてとなる。両製品ともにコスト削減、コンプライアンス強化などを進める企業ニーズを追い風に需要が拡大しており、「具体的な数は明らかにできないが、両製品ともに導入企業数を大幅に増やしている」(SAPジャパン バイスプレジデント 調達・購買ネットワーク 事業本部長の佐藤恭平氏)という。

SAPジャパン バイスプレジデント 調達・購買ネットワーク 事業本部長の佐藤恭平氏
SAPが支える、調達・購買領域のデジタル革命

 今回、導入企業としてコニカミノルタ、PFUの担当者が登壇し、導入のきっかけ、導入によってどんな課題を解消しようとしているのかなど、日本企業の調達・購買に関する課題などを紹介した。

日本企業にもさまざまなメリットを提供できる調達ソリューション

 SAPジャパンは、Aribaを介していた調達金額がグローバルで2.9兆ドル、Fieldglassが53.5億ドルだと説明した。「国内のB2B市場が300兆円規模とされているので、Aribaはそれと同等の金額をやり取りする調達ソリューション」(佐藤氏)という。

 同じ調達・購買というジャンルのソリューションだが、Aribaはコンプライアンス強化、業務効率化、コスト削減など調達・購買マネジメント、Fieldglassは外部人財調達、配置最適化など外部人財活用マネジメントと、それぞれ得意分野が異なる。

 労働人口減少による労働力不足が話題になるとともに、多様な働き方の推進が行われている日本市場に対しては、Ariba、Fieldglassを活用することで、発注から請求にいたる購買プロセス効率化を実現するという。

 また、ペーパーレス化による工数削減と時間短縮、自動三点照合によるミス軽減、データ電子化による情報蓄積とノウハウ共有などが実現できるとアピールした。「一般的な日本企業の購買プロセスは、デジタルデータ化されているものであっても一度印刷し、その紙を確認、はんこで承認といったプロセスが行われている。こうしたプロセスを大幅に効率化し、統制のとれた購買プロセスを実現する」(佐藤氏)。

働き方改革が必要な今こそ、自動化を推し進めるタイミングだという
購買プロセス(発注~請求)の効率化

 外部人財活用についても、派遣社員採用をはじめ、部署をまたがって行われる外部人財の調達、サービス購買業務を集約し、業務の効率化を図れるとのこと。さらに、人財シェアリングとして、グループ各社の外部リソースの調達、役務購買の基盤として拡張することも可能。36協定や同一賃金同一労働など、グループ企業をまたがったコンプライアンスに対応することもできる。

 SAPでは、「海外でビジネスすることになれば、海外での調達も増えていくことになる。グローバル化した調達は、コーポレートガバナンスに注力する必要がある。不正が起こりやすい購買を、システム統制によって不正抑止につなげる。完全に不正リスクをなくすことはできないが、プロセスの可視化、承認履歴を残すといった取り組みが抑止力として機能する」(佐藤氏)としており、可視化、履歴の保存が不正リスクをなくすことにつながると指摘する。

外部人材とサービス役務の調達管理

 また、コンプライアンスを考慮したサプライチェーンが必要になっているとのことで、「企業の社会的責任として、SDGsを生産活動に入れ込むことが必要となっている。日本だけでなく、海外でも反社会的勢力とのつながり、児童労働を行う企業との取引がないのかといった、体制整備を行うことも必要」(佐藤氏)とした。

 内部情報管理、契約リスク、インシデントリスクなどをサプライヤーリスクのスコアリングモデルとして、外部の評価データなどを取り込んで査定、判定、改善を行い、ビジネス継続性、ビジネス信用性を保つことも必要な時代となっている。

 このため日本では、ローカルエコシステムの拡大として東京商工リサーチと協業し、国内企業840万件の評価情報を、サプライヤーリスク管理アプリケーションに統合して活用する体制を整えた。

SAPが提供するサプライヤーマネジメント
ローカルエコシステムの拡大

 また、コンサルタントの人材不足解消につながるよう、認定フリーランスを人財シェアリングプラットフォームとしてSAPジャパンパートナー向けに提供し、2022年までに認定コンサルタント5000人確保を目指しているとのことだ。

コニカミノルタとPFUが導入経緯などを紹介

 今回の発表会には、導入企業としてコニカミノルタとPFUが参加した。

 コニカミノルタでは、米、欧、日本、中国を中心としたアジアのそれぞれで、売上比率がほぼ4分の1ずつとなっているが、間接材調達は日本の割合が多いという。これは米、欧が販売会社で間接材コストの必要性が低く、中国とマレーシアでは生産拠点、日本は本社機能と開発機能を持つことが起因している。

 こうした間接材調達の状況に対しては、スポット的に改善活動を行ってきたが、2016年からは間接材の横断的な調達を開始し、継続したコスト削減効果が出ているとのこと。

 そして、さらなる改善のために導入したのがAribaだ。コニカとミノルタが合併して誕生したコニカミノルタだけに、事業単位の意識が強く、間接材の調達もバラバラに行われてきた。

 「これまでの習慣を変えることは容易ではない。変化を可視化し、見える状況で習慣を変える。見える化を定常化する仕組みが必要ということでツールを選択し、Ariba導入を決めた。極力カスタマイズせず、標準システムを利用する方針としている」(コニカミノルタ株式会社 生産本部 調達センター センター長の新善行氏)。

 Ariba導入前の間接材コスト可視化によるコスト削減では、2けたの億円単位のコスト削減を実現しているが、「システム活用によって、もう一段効果を上げることを狙う」(新氏)としている。

コニカミノルタ株式会社 生産本部 調達センター センター長の新善行氏
目指す姿に引き上げるためのステップ

 一方のPFUは、現状の課題解決のためにFieldglass導入を決定した。同社の購買部門は20人体制だが、半数以上が50代以上で、若返りの必要性など、適切な人財を確保しなければならない状況となっている。

 さらに、属人性が高い状況となっている複雑な業務オペレーションの改善や、手作業による誤処理の発生、認識不足による法令違反への対応といったコンプライアンス強化も課題となっている。

 特に、メール誤送信によるトラブルがあったことから、「やり方を変えないと誤送信を全くなくすことはできない。システム的にメールではない方法による発注ができる体制を作ることや、システムに従ってオペレーションすることで派遣法を順守できるなど、現場が意識せずに課題解決するシステムの必要性を感じていた」(株式会社PFU 業務統括部 ソリューション購買部 部長 浜崎哲也氏)ことから、システムによる課題解決を決定した。

 こうした課題を解消するソリューションとして紹介されたのがFieldglassだ。従来の複雑なオペレーションに比べシンプルなオペレーションで、属人性は低く、法令順守を実現する。

 現在は、「2020年4月の稼働に向け、現在はセッションを繰り返している最中。稼働すれば会社を強くする購買を実現することになる」(浜崎氏)とのことで、本稼働に向けて準備を進めている。

株式会社PFU 業務統括部 ソリューション購買部 部長 浜崎哲也氏
Fieldglassを活用した調達プロセスの将来像