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IIJ、最新の省エネ技術を採用した「白井データセンターキャンパス」が完成、AIや最新警備ロボットも活用

IIJ「白井データセンターキャンパス」の外観

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は10日、千葉県白井市に建設していた新しいデータセンター「白井データセンターキャンパス(以下白井DCC)」が完成し、5月1日より稼働を開始すると発表した。

 白井DCCの敷地面積は約4万㎡、設備収容は6000ラック、最大受電容量は50MW(メガワット)。需要に応じて柔軟かつ安価に設備を構築することを可能とするシステムモジュール型工法を取り入れており、第一期棟(1000ラック規模)から提供を開始し、順次規模を拡大していく。

 システムモジュール型工法は、IIJが2011年に開設した「松江データセンターパーク」で培ったコンテナ型データセンターのノウハウを、大規模データセンターに適用。フロア規模でモジュール化が可能で、着工から8カ月間という短工期構築を実現した。

 顧客が使用する面積・電気容量の規模に応じて、分割ラック、ラック単位、サービスプロバイダー向け専用設計まで対応可能。データセンターと外部を接続する回線の敷地外からの入線ルートは、異経路3ルートを配備し、利用可能な通信キャリアに制限のないキャリアフリーに対応する。また、2.7mまでのトールラックの設置に対応する、天井高4.8mのサーバールームも備える。

サーバールーム

 エネルギー効率の面では、データセンターの消費電力の大きな割合を占める空調設備の消費電力を削減するため、壁からサーバー室へ冷気を吹き出すことにより、従来の床吹き出し空調より搬送動力を低減する「壁吹き出し空調システム」、加湿・排気・混合を工夫することにより外気を直接利用する「外気冷却空調システム」、冷却水循環装置の出口温度を通常より高くすることにより効率を上げる「中温冷水送水システム」などを採用。電力利用効率の最適化を最大限に図った。

サーバー棟の外観。庇の下に外気の取り込み口があり、中央の高くなっている部分が排気口
屋外の空調設備架台

 また、最高効率98%を実現する高効率なUPSを採用するとともに、給電にはトランスレス、電圧降下低減を実現する三相4線式バスダクトを採用。これらの取り組みにより、白井DCCは「環境省平成30年度業務用施設等におけるネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化・省CO2促進事業(次世代省CO2型データセンター確立・普及促進事業)」に採択されている。

給電にはバスダクトを採用

 運用の効率化の面では、ロボットによるデータセンター運用の無人化・自動化にも取り組む。物理ロボットとしては、綜合警備保障株式会社(ALSOK)の新型警備ロボット「REBORG-Z」をデータセンターに初めて導入。来訪者の案内や、屋内外の巡回業務などの無人化に向けた実証を行う。

 また、ソフトロボット(RBA/RPA自動化基盤)による、入館申請業務や障害発生時の復旧対応などのITオペレーション業務の自動化を、株式会社IIJエンジニアリングと共同実証する。

ALSOKの新型警備ロボット「REBORG-Z」を導入

社内設備の集約、大規模顧客への対応、新サービスの開発拠点に

 10日には、白井DCCの現地で内覧会が行われた。IIJ代表取締役社長の勝栄二郎氏は、白井DCCは「複数のデータセンターに分散している社内設備の集約」「大規模な顧客への対応」「新しいサービスの開発に必要な実験の場」という3つの役割があると説明。白井DCCの構築を期に、成長のための拠点として、データセンターのさらなる拡張に向けて取り組んでいくとした。

IIJ代表取締役社長の勝栄二郎氏

 白井DCCの利用方法については、IIJが点在する自社サービスの集約拠点として活用するほか、エンタープライズ、データセンター事業者向けにハウジングサービスやコロケーションサービスなどを提供していくとしている。また、IIJの既存データセンターからの設備の集約については、老朽化した機材の置き換えなどから順次進めていくという。

 ハウジングサービスについては、通常のラック単位でのサービス提供から、サービスプロバイダー向けの専用ルームの提供、DC in DCとしての利用やクラウド基盤設置など、さまざまな規模や用途に対応可能としている。

 また、ファシリティの提供に加え、顧客への付加価値を高めるため、各種クラウドサービス、近郊データセンター、IX(インターネット相互接続点)などと接続する「ネットワークHUB」構想のもと、ネットワークを拡充していくと説明。白井DCCのある印西地域には他にも多数のデータセンターがあり、こうした近郊の他社データセンターにも、白井DCCをハブとして、さまざまな付加価値を提供していきたいとしている。

白井DCCの模型。増築用のスペースも確保している