ニュース

日立、Lumadaソリューションの導入を迅速・容易に行える「Lumada Solution Hub」

コンテナ技術などを利用してパッケージ化、IaaSへ高速デプロイ可能

 株式会社日立製作所(以下、日立)は18日、デジタルソリューション「Lumada」の導入を迅速・容易にする「Lumada Solution Hub」の販売を、4月1日から順次開始すると発表した。

 Lumadaは、日立が持つ各種デジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーであり、2016年の発表以来、日立の成長戦略の柱に位置づけられている。顧客が持つデータをもとに価値を創出することを目指しており、工場の合理化や省力化、品質向上などで成果が上がっているほか、Fintechでの活用、鉄道分野での予兆診断などでも実績がある。

Lumada Solution Hub

Lumadaソリューションやアプリ開発環境を導入しやすい形で提供

 今回、新たに販売を開始するLumada Solution Hubは、顧客との協創によって培った技術、ノウハウを結集したLumadaソリューションや、アプリケーション開発を導入しやすい仕組みをパッケージ化。カタログに登録し、クラウド基盤上で提供するものだ。

 日立 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部の熊崎裕之事業本部長は、「Lumadaソリューションの早期検証から、本番環境への移行、海外を含めた複数拠点への効率的な展開が可能になり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援することができる」と、Lumada Solution Hubの特徴を説明する。

 これがなぜ必要だったのかというと、Lumadaの導入にあたっていくつかの問題があったからだという。熊崎事業本部長は、「Lumadaは、産業、流通、電力、ヘルスケアなど、幅広い分野で600件以上のユースケースがあるが、これらを細かく見た結果、DXの実現にはいくつかの壁があることを学んだ。方法を変えて何度も試行するなど、時間がかかるためにPoCで終わってしまうという課題のほか、社内データを外に持ち出せなかったり、パブリッククラウドのデータを外に持ち出すのにコストがかかるといった課題があった」と、これについて言及した。

 その上で、「Lumada Solution Hubによって実績のあるソリューションを使うことで、試行錯誤が減り、成功率が高まる。また、データのあるところにソリューションをデプロイすることにより、データの移動コストを削減することができる。これらにより、PoCにとどまっていたDXへの取り組みを、実効性が高いものにできる」とした。

日立 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部の熊崎裕之事業本部長
Lumadaのユースケース
ユースケースから学んだDXの壁
Lumada Solution Hubがもたらす価値

 また、日立 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 シニアテクノロジーエバンジェリストの中村輝雄氏も、「アプリケーションのインストールでは、各種パラメータ設定が事前に行われていため、Lumadaソリューションをすぐに利用できるようになる。これまではデプロイなどに時間がかかってしまうために、PoCだけで終わることが多かったという課題を解決できる。また、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなど、指定された場所ごとに異なる運用方法であっても、それを包含する形でデプロイし、一元化した運用監視サービスも提供できる」と、そのメリットや特徴を説明した。

 具体的には、DockerやKubernetesといったコンテナ技術の適用により、Lumadaソリューションを再利用が可能な形でパッケージ化。これらをカタログとして蓄積するとともに、さまざまなIaaSに対して、高速にデプロイし、一括して管理・実行することができる。

日立 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 シニアテクノロジーエバンジェリストの中村輝雄氏
Lumada Solution Hubでできること

 なおカタログについては、「2019年度中に30種類のソリューションを用意する。2019年度からスタートする『2021 中期経営計画』の期間中には、3けたのラインアップに増やすことを予定している」(中村シニアテクノロジーエバンジェリスト)とのこと。

 モビリティ、ヒューマンライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5つの領域から業務ソリューションを提供し、導入したいソリューションを選択するだけで、用途にあわせてIaaS上で環境を構築して、Lumadaソリューションの迅速な検証を開始できる。

 熊崎事業本部長は、「実績のあるソリューションを再利用可能な形にパッケージ化し、カタログに蓄積・利用する仕組みはApp Storeと同じである。それをコンテナ技術を適用することで、インフラに依存せずにソリューションを配置できる」と述べた。

カタログから実績のあるソリューションを選択
Lumada Solution Hubを用いたDXの実現

 今後、Lumada Solution Hubのカタログへのソリューション登録を推進。まずは、AIやIoTを活用した実効性の高い配送計画を立案するサービスや、ブロックチェーン導入支援サービスなどの業務ソリューションを、2019年度上期から順次提供する。

 まずは、プライベートクラウド環境を提供する「出前クラウド」版の販売を開始。2019年度第2四半期からは、AWSやMicrosoft Azure、日立のエンタープライズクラウドサービスのIaaSを順次サポートして、マルチクラウド環境に対応する。

 さらに、アプリケーション開発環境を効率するために、「IoT向けDevOps環境提供サービス」を4月1日から提供を開始。アジャイル開発に最適化したプロジェクト管理ツール「Redmine」などにより、開発チームと運用チームが一体となったDevOpsスキームの立ち上げを支援するとした。

 ここでは、GUIプログラミングツール「Ned-RED」などの活用により、ITに精通していない担当者によるアプリケーション開発を支援する。また、開発したアプリケーションをパッケージ化して、クラウド基盤に蓄積しておくことで、複数のアプリケーションの組み合わせやカスタマイズが容易になり、顧客ニーズにあわせた開発が可能になるという。

 「開発環境の効率化を進めることで、パートナーのソリューションも扱っていく体制が強化できる。パートナーと日立によるエコシステムが強化できる」(熊崎事業本部長)。

 そのほか日立では、本番環境におけるアプリケーションの負荷に応じて自動でシステムの処理能力を高めるオートスケーリング機能や、セキュリティのアップデートを自動的に適用する機能など、保守・運用の省力化を支援する機能を、2019年度下期から順次サポートする計画だ。

DXを加速する3つの要素

 なお、2018年度におけるLumada事業見通しは、売上収益が前年比7%増の1兆800億円。そのうち、Lumadaコア事業の売上収益は同39%増の3200億円、Lumada SI事業の売上収益は同2%減の7600億円となっている。